CRMのルーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 04:22 UTC 版)
「クルー・リソース・マネジメント」の記事における「CRMのルーツ」の解説
第二次世界大戦の終結後、ジェット旅客機が実用化し、運航技術や整備技術などの発展も進んだ。航空を取り巻くテクノロジーが進歩し、運航の信頼性が向上したことで、1960年代から1970年代にかけて事故率は大幅に減少した。しかし、1970年代後半になると事故率は横ばいとなり、このまま事故率が変わらなければ、航空機の発着数の増大とともに事故の絶対数が増加することが危惧された。 この頃、1972年のイースタン航空401便墜落事故やユナイテッド航空553便墜落事故(英語版)、1977年のテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故、1978年のユナイテッド航空173便墜落事故といった乗員の人的要因が関係する事故が発生していた。人的要因の観点から事故の防止対策をいかにとるかが、航空会社や研究機関の関心事となっていった。 このような状況のなかで、1979年にアメリカ航空宇宙局 (NASA) が「フライトデッキにおけるリソースマネージメント」と題したワークショップを主催し、航空会社や行政関係者、研究者らの参加の下、航空機事故における人的要因に関する様々な研究発表が行われた。そして、人的要因に起因した航空機事故では、主要因として乗員間のコミュニケーション、乗員の協力関係、チームとしての意思決定プロセス、そして、機長のリーダーシップのあり方などが関係していることが認識された。このワークショップにおいて、ヒューマンエラーを乗員のチームワークで防止する訓練のために「コックピット・リソース・マネジメント」 (Cockpit Resource Management) 、略して「CRM」という言葉が提唱された。初期のCRMは、コックピットで使用可能なすべてのリソース(資源)を使って 運航安全を実現することを目的とし、上意下達を維持しながらも運航乗務員らの協力関係を促進して、より非権威主義的な文化をコクピット内に醸成することを意図した概念である。CRMのもとでは、機長は副操縦士や航空機関士らを重要な資源と考えて彼らの意見を十分聞くようにし、一方で副操縦士や航空機関士らは安全に関する意見や質問をためらわず行えるようになることが求められた。
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