飛行経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 15:28 UTC 版)
「英国海外航空機空中分解事故」の記事における「飛行経路」の解説
機長がなぜ通常よりも数千メートルも低い高度で、しかも有視界方式により富士山近傍を飛行しようとしたのかは未だに判然としていない。なお、ホノルルから羽田へのフライトは濃霧(前日のカナダ太平洋航空機事故の一因となった)によるダイバートにより福岡空港へ着陸後、当日朝に羽田に再度向かったため、出発が20時間以上遅れていたことが判明している。 そうした点から下記の要因が推定されている。 当初の羽田の到着予定より大幅に遅れていた為、飛行距離を短縮させて早く次の目的地の香港に到着したかった。 アメリカ人の団体観光客が多く搭乗していた為、観光サービスも兼ねて乗客に日本の象徴である富士山を近くで見学してもらいたいと思った。 また運航航空会社は911便の直前に離陸した伊豆大島経由で鹿児島に向かう全日空機の存在が判断に影響したと指摘したが、この機はターボプロップ機のフォッカー F27で、巡航高度も巡航速度も911便よりも低かったため、無関係とされた。 事故原因調査の過程では、本事故以前に同じ911便(別の機長)が何度か富士山上空を経由して飛行したことが確認されている。このことは柳田邦男の「マッハの恐怖」に触れられており、2月5日の911便の飛行は乗客が撮影した富士山頂の写真もあったが、この時の飛行は富士山の北側からであった。事故調査報告書によれば、「富士経由の有視界飛行は、もし、それが航空機の進行を促進するために行われたものであるならば、機長の裁量に属することである。ただ、この場合における有視界上昇を要求した理由については、旅客に富士山をよりよく見せようとすることと関連があったかも知れないが、これを明らかにすることはできなかった」のだという。 事故調査委員会はこの事にも注目し検証を行うも、事故機機長が富士山周辺経由、しかも高度を低くして飛行を決断した理由を明確化できておらず、さらにはイギリス側調査団より東京航空地方気象台の乱気流警報発令が事故後2時間半後であるのに、事故機機長が予知可能かとの反論等もあり、結局航空会社は事故に対して不可抗力であったと表明している。 なお現在も富士山上空を飛行する民間航空ルートは存在するが、必ず計器飛行方式で飛行し、なおかつ富士山より数千メートル高い充分な高度をとっているため山岳波の影響を受けにくく、それにより墜落する危険性は低い。それでも、富士山周辺での乱気流の発生が報告される際には富士山が見えないくらい大きく迂回するコースを取る。特に航路が異なる羽田空港進入時に富士山の南側を飛行する際には八丈島付近まで南下することがある。
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