離脱症状の管理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 01:27 UTC 版)
ベンゾジアゼピン系薬からの離脱による最も多い症状は、不眠、消化器問題、震え、恐怖、激越、筋痙攣である。それほど多くはないが易刺激性、発汗、離人症、現実感喪失、刺激への過感受性、抑うつ、自殺行動、精神病、発作、振戦せん妄が生じることもある。重篤な症状は、たいてい突然あるいは急速すぎる離脱によって生じる。突然の断薬は危険であるため、徐々に減量する処方計画が推奨される。WHOのガイドラインでは、離脱は長期作用型のベンゾジアゼピンに置換し8-12週間かけて行うとしている。 症状は徐々に減量している期間中にも生じる可能性があるが、一般的にあまり重症にはならない。また一部では断薬後も何カ月も遷延化した離脱症状が続く。離脱症状を経験した患者の約15%は顕著な遷延性離脱症候群(protracted withdrawal syndrome)を経験し、それは何ヶ月も、場合によっては1年以上にわたり持続する。長期化する症状は、離脱の最初の数ヶ月に見られるものと似ているが、たいていは重篤な急性離脱症状の下位の水準である。このような症状は時間と共に徐々に弱まり、最終的に完全に消失する。 ベンゾジアゼピンの離脱は重篤でトラウマになるような離脱の原因になると患者も医師も噂するが、しかしその大部分は離脱の経過が不適切に管理された場合である。急速すぎる離脱は、離脱症状の重症さを増すことにつながり失敗率も上げる。個々に合わせゆっくりかつ徐々に離脱すること、また必要であれば心理的な支援が提供されれば、離脱を管理する方法として最も効果的である。離脱の完了に必要な期間については、4週間から数年間までの幅広い意見がある。6ヶ月未満の目標が提案されているが、しかしベンゾジアゼピンの種類と服用量、処方の理由、生活習慣、性格、環境的なストレス、得られる支援の量といった要因によって、離脱には1年かそれ以上を要することもある。 身体的依存を、等価換算した用量のジアゼパム(セルシン)に移行することが、離脱の管理として最良である。なぜならジアゼパムは全てのベンゾジアゼピンの中で最も長い半減期であり、長時間作用の活性代謝産物となって代謝され、効果の弱い錠剤の種類もあり、これをより細かな用量へと4分割することもできる。さらに液剤もあり、さらに細かく減量できる。クロルジアゼポキシド(コントール)も長い半減期をもち長時間作用の活性代謝産物にもなるため、替わりに用いることができる。 非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン離脱期間中には禁忌である。ベンゾジアゼピンと交差耐性があり依存を引き起こすためである。アルコールにもベンゾジアゼピンとの交叉耐性があり、毒性もより大きいため、依存が置き換わってしまうことを避けることへの注意が必要である。離脱期間中は、できればフルオロキノロン系の抗生物質を避けるのが最善である。それはベンゾジアゼピンを結合部位から外してGABA機能を減少させ離脱症状を悪化させることがある。抗精神病薬は、ベンゾジアゼピン離脱時(その他の中枢神経抑制剤の離脱状態においても)には推奨できない。特に注意が必要なのはクロザピン、オランザピン、あるいは低力価のクロルプロマジンといったフェノチアジン系である。それらは発作閾値を下げ、離脱の影響を悪化させるため、用いる場合は細心の注意が必要である。 長期間のベンゾジアゼピン使用者の離脱は、多くの場合有益である。ベンゾジアゼピン長期服用者の離脱は一般的に身体・精神の健康の改善につながる。これは高齢者において顕著である。いくつかの長期利用の報告がベンゾジアゼピンの継続的な利益を報告しているが、これは離脱の影響が抑えられているためである可能性がある。
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