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野上彰 (文学者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/23 14:32 UTC 版)

野上 彰
(のがみ あきら)
誕生 藤本 登(ふじもと のぼる)
1909年2月15日
徳島県徳島市新内町
死没 (1967-11-04) 1967年11月4日(58歳没)
墓地 あきる野市西多磨霊園
職業 詩人、雑誌編集者囲碁の著述家
言語 日本語
国籍 日本
最終学歴 京都大学法学部中退
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野上 彰(のがみ あきら、本名:藤本 登1909年明治42年〉2月15日 - 1967年昭和42年〉11月4日)は日本文学者、編集者。

経歴

1909年(明治42年)2月15日徳島県徳島市新内町に、浪曲師天中軒雲右衛門の座付作者である父・若山儀三郎、母・藤本サトの次男として生まれる。1917年(大正6年)、徳島市寺島尋常小学校(現・徳島市内町小学校)入学。1922年(大正11年)、徳島市立徳島中学校(現・徳島県立城南高等学校)入学。1927年(昭和2年)、鹿児島の旧制第七高等学校(現・鹿児島大学)入学。1929年(昭和4年)に東京大学文学部に入学し、翌年の1930年(昭和5年)に京都大学法学部に転入。この頃京都の吉田操子の下で囲碁を学ぶ。1933年(昭和8年)に滝川事件を契機として中退する。

1934年(昭和9年)に仙台市半袋上丁に学生碁会所を開いたり、1935年(昭和10年)からの『河北新報』の囲碁欄の解説を掲載するなど、囲碁により生活を始める。1936年(昭和11年)には上京し、1937年安永一田岡敬一らと雑誌『囲碁春秋』を発刊し編集長となる。また「文人碁会」を企画し、囲碁愛好家の作家や学者の交流を図る。ここで知り合った川端康成豊島与志雄に師事し、筆名を「野上彰」とする。

1940年(昭和15年)に日本棋院の『囲碁クラブ』の編集部に入り、発行部数を五千部から一万部に売れ行きを上昇させ、『囲碁クラブ』の編集長となり、『棋道』の編集も兼任する。1943年(昭和18年)に日本棋院を退職し、創作活動の道に進み、編集長・内山基の『少女の友』『新女苑』などに詩や童謡を書く。また、1940年(昭和15年)に鈴木千代と結婚するが、1943年(昭和18年)に別居し、1952年(昭和27年)に離籍する。

1945年(昭和20年)に福士正人と『暁鐘』を創刊するが、三号で廃刊となる。また、芸術前衛運動を企画し、1946年(昭和21年)に「火の会」を発会[1]して作家や編集者など会員60人余りが集まる。同年に出版社・大地書房を創立。福士正人や速水律子などと出版編集を始める。文芸雑誌『プロメテ』、少女雑誌『白鳥』などを刊行。また、NHKラジオ『婦人の時間』に放送詩を書き始める。同年に速水律子と結婚する(入籍は1952年(昭和27年))。なお、大地書房は1947年(昭和22年)にストライキにより解散となる。

1949年(昭和24年)に前田久雄などと「日本語訳詩委員会」を企画。また前田久雄を社長として音楽教科書出版を目的とする「白百合書苑」を創立。

1955年(昭和30年)に日本将棋連盟より将棋二段の免状を受ける。

1956年(昭和31年)に日本棋院より囲碁五段の免状を受ける。文壇本因坊だった榊山潤は、野上の囲碁の強さはアマチュアばなれしていたと書いた[2]

1967年(昭和42年)に脳腫瘍と診断され、東京医大病院脳外科に入院する。1967年(昭和42年)11月4日に死去。翌日の11月5日に日本棋院より囲碁六段の免状を受ける。11月8日青山葬儀所で音楽葬を行う。

人物

川端康成に師事し、戦後、大地書房で編集局長を経て、詩、小説、童話、戯曲、訳詞などの創作活動に入り、戦後、芸術前衛運動を推進。放送劇の主題歌作詞や台本、オペレッタの演出など、多彩なジャンルで力量を発揮した。

著書に詩集「幼き歌」、戯曲集「蛾」、随筆集「囲碁太平記」など多数。オリンピック讃歌の日本語での訳詞を担当した人としても知られる。ボブ・ディランの「風に吹かれて」の訳詞も担当した。

家族

長男の藤本草は、邦楽プロデューサーで、公益財団法人日本伝統文化振興財団理事長。

娘の藤本ひかりの夫は、オペラ演出家三谷礼二[3]

四男の藤本国彦(1961-)は、ビートルズ研究者、雑誌CDジャーナル編集長[4]

著書

詩集

小説

戯曲・脚本

囲碁に関する本(小説を除く)

音楽

児童書

翻訳

  • P.クロウフア 著、野上彰 訳『オハイオ河物語』中央公論社〈ともだち文庫 第50〉、1950年3月。 
  • フランシス・ホジソン・バーネット 著、野上彰・川端康成 訳『小公女』創元社、1953年6月。 
  • エドガー・ライス・バローズ 著、野上彰 訳『ターザンと密林の叫び』加納川郁之助絵、宝文館〈ターザン文庫 1〉、1956年。 
  • エドガー・ライス・バローズ 著、野上彰 訳『ターザンと外人部隊』加納川郁之助絵、宝文館〈ターザン文庫 2〉、1956年。 
  • エドガー・ライス・バローズ 著、野上彰 訳『ターザンと死の踊り』加納川郁之助絵、宝文館〈ターザン文庫 3〉、1956年。 
  • エドガー・ライス・バローズ 著、野上彰 訳『ターザンとジャックの冒険』加納川郁之助絵、宝文館〈ターザン文庫 4〉、1956年。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『みどりいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 1〉、1958年6月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『ばらいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 2〉、1958年7月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『そらいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 3〉、1958年8月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『きいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 4〉、1958年9月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『くさいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 5〉、1958年10月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『ちゃいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 6〉、1958年11月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『ねずみいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 7〉、1958年12月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『あかいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 8〉、1958年12月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『みずいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 9〉、1959年1月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『むらさきいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 10〉、1959年2月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『さくらいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 11〉、1959年3月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『くじゃくいろの童話集』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 12〉、1959年4月。 
  • アンドルー・ラング 著、野上彰 訳『アラビアン・ナイト』川端康成校閲、東京創元社〈ラング世界童話全集 別巻〉、1959年5月。 
  • クリスチアナ・ブランド 著、野上彰 訳『疑惑の霧』早川書房、1958年3月。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『漁師と魔神の物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 1〉、1960年。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『せむし男の物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 2〉、1961年。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『ヌール・エド・ディーンの物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 3〉、1960年。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『ドウーニヤ姫の愛の物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 4〉、1961年。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『王子と王女の愛の物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 5〉、1961年。 
  • エドワード・ウィリアム・レイン 著、川端康成・野上彰 訳『おどけものアブーの物語』太田大八絵、東京創元社〈アラビアン・ナイト 6〉、1961年。 
  • ヨハン・シュトラウス2世 著、野上彰 訳『こうもり』音楽之友社〈世界歌劇全集 14〉、1967年。 
  • ジーン・ウェブスター 著、野上彰 訳『あしながおじさん』ポプラ社〈世界の名著 21〉、1968年。 

作詞

学校歌・園歌

社歌

訳詞

その他

参考文献

  • 『詩集 幼き歌』アポロン社、1968年7月。 
  • 中野孝次 編『囲碁Ⅱ』作品社〈日本の名随筆 別巻11〉、1992年1月。 

脚注

  1. ^ 岩波書店編集部 編『近代日本総合年表 第四版』岩波書店、2001年11月26日、353頁。 ISBN 4-00-022512-X 
  2. ^ 榊山潤『囲碁談義』(東西五月社)P.159
  3. ^ 写真と日記2006年3月”. 清流出版. 2020年5月23日閲覧。
  4. ^ 藤脇邦夫『出版アナザーサイド』(本の雑誌社)P.222

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