連続波
連続波(CW)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 05:05 UTC 版)
1920年まで使用されていた火花送信機は、減衰波と呼ばれる変調方式で送信された。電鍵が押されている間、送信機は、通常50から数千ヘルツの周波数で繰り返される一連の電波の一時的なパルスを生成する。受信機では、これは楽音、ヤスリをかけるような音もしくはブンブン唸る音として聞こえた。そのため、モールス符号の短点と長点はビープ音のように聞こえた。減衰波は広い周波数帯域を持っており、無線信号は単一の周波数ではなく広範囲の周波数にまたがっていた。そのため、隣接する周波数の他の送信機の送信を妨害した。 1905年以降、連続波という新しい変調方式を使用する無線電信送信機が発明された。電鍵が押されている間、送信機は一定振幅の連続正弦波を生成した。電波のエネルギーは単一の周波数に集中しているため、特定の周波数でより強力に送信することができ、隣接する周波数の送信にほとんど干渉しない。初の連続波を生成する送信機は、1903年にデンマークのエンジニアヴォルデマール・ポールセンが発明したアークコンバータ(英語版)(ポールセン・アーク送信機)、およびレジナルド・フェッセンデンとアーンスト・アレキサンダーソンが1906-1912年に発明したアレクサンダーソン・オルタネータ(英語版)である。これらは、高出力の無線電信所の火花送信機をゆっくりと置き換えていった。 しかし、減衰波用の受信機では連続波を受信することはできない。連続波は変調されていない搬送波なので、そのまま減衰波用の受信機に通しても音は出なかった。連続波を受信するには、モールス符号の搬送波パルスを受信機で聞こえるようにするための何らかの方法が必要だった。 この問題は1901年にレジナルド・フェッセンデンによって解決された。彼が発明したヘテロダイン受信機では、受信機の検波器(水晶または真空管)で、BFO(うなり発振器)と呼ばれる発振回路によって生成された一定の正弦波と混合される。発振器の周波数 f BFO {\displaystyle f_{\text{BFO}}} は、無線送信機の周波数からのオフセット f IN {\displaystyle f_{\text{IN}}} である。検波器では、2つの周波数が減算され、2つの周波数の差にあるうなり周波数(ヘテロダイン) f BEAT = | f IN − f BFO | {\displaystyle f_{\text{BEAT}}=|f_{\text{IN}}-f_{\text{BFO}}|} が生成される。BFO周波数が送信局の周波数と充分に近い場合、うなり周波数は可聴周波数範囲内となり、受信機でオペレータが聞くことができる。信号の短点と長点においては音が鳴るが、それらの間には搬送波がないため音が鳴らない。 当初は、BFOはあまり使われなかった。1913年にエドウィン・アームストロングが発明した、初の実用的な電子発振器である真空管フィードバック発振器により、BFOは無線電信受信機において標準的なものとなった。 受信周波数を変更するたびに、BFO周波数も合わせて変更する必要があった。1930年代以降のスーパーヘテロダイン受信機では、BFO信号はスーパーヘテロダイン検波器によって生成された中間周波数(IF)と混合されるため、BFO周波数を変更する必要がなくなった。 第一次世界大戦後はパワー管の価格が下がって容易に使えるようになり、連続波真空管送信機は、他の方式の送信機を置き換えていった。1920年代には連続波が無線電信の標準的な方法となり、減衰波火花送信機は1930年までに禁止された。以降、今日でも連続波が使用され続けている。
※この「連続波(CW)」の解説は、「無線電信」の解説の一部です。
「連続波(CW)」を含む「無線電信」の記事については、「無線電信」の概要を参照ください。
- 連続波のページへのリンク