ある瞬間におけるガウシアンビームの強度分布。
出力 5 mW の緑色レーザーポインタの強度分布。TEM00 モードの分布を示している。
光学 において、 ガウシアンビーム (英 : Gaussian beam )とは、横モード(英語版 ) の電場 および強度(放射照度 )分布が近似的にガウス分布 とみなせる電磁波 をいう。多くのレーザー はその光軸 への垂直面内の強度分布がガウス分布に近いビームを発しており、このようなレーザーでは共振器 が基本横モード、または「TEM00 モード」で発振しているという。回折限界 のレンズ で屈折 させたとき、ガウシアンビームは別の(パラメータの違う)ガウシアンビームへと変換されるため数学的に取り扱いやすく、レーザー光学における数理モデル として広く採用されている。
ガウシアンビームがヘルムホルツ方程式 の近軸近似 の下での解であることは数学的に示すことができる。この解はガウス関数 の形をとっており、ビームの電場の複素 振幅を表わす。この形のビームの大きな特質として、電場と磁場 が電磁波 として一体となり伝播するため、電場と磁場のどちらか片方のみによってビームの特徴を記述できることが挙げられる。
ガウシアンビームが伝播するときの特徴は、スポットサイズと曲率半径、グイ位相というわずかなパラメータで記述できる。
近軸近似の下でのヘルムホルツ方程式には別の解も存在する。デカルト座標 を用いて方程式を解くと、エルミート・ガウシアンモード と呼ばれる一連の解が得られ、円筒座標系 を用いて解くとラゲール・ガウシアンモード と呼ばれる一連の解が得られる。どちらの解に対しても、最低次の解はガウシアンビームを表わし、高次の解は共振器の高次の横モードに対応する。
上図は紙面に垂直に伝播するガウシアンビームの二次元的照度分布を表わす。下図青線はビーム中心からの距離の関数としての電場強度を表わす。また、黒線は対応する照度関数を表わす。
数学的形式
ガウシアンビームはTEMモード(英語版 ) の一つである。このモードの複素電場強度の数学的表式は近軸ヘルムホルツ方程式 を解くことで得られ、以下のような表式を得る。
E
(
r
,
z
)
=
E
0
w
0
w
(
z
)
exp
(
−
r
2
w
(
z
)
2
−
i
k
z
−
i
k
r
2
2
R
(
z
)
+
i
ζ
(
z
)
)
{\displaystyle E(r,z)=E_{0}{\frac {w_{0}}{w(z)}}\exp \left({\frac {-r^{2}}{w(z)^{2}}}-ikz-ik{\frac {r^{2}}{2R(z)}}+i\zeta (z)\right)}
エルミート・ガウシアンモードの例
エルミート・ガウシアンモードは共振器が回転対称でなく、水平方向と鉛直方向が同等でない場合の出力レーザーの記述に便利である。上に定義した複素パラメータ q を用いると、 x -面内の振幅分布は以下の関数に比例する。
u
n
(
x
,
z
)
=
(
2
π
)
1
/
4
(
1
2
n
n
!
w
0
)
1
/
2
(
q
0
q
(
z
)
)
1
/
2
[
q
0
q
0
∗
q
∗
(
z
)
q
(
z
)
]
n
/
2
H
n
(
2
x
w
(
z
)
)
exp
[
−
i
k
x
2
2
q
(
z
)
]
{\displaystyle {u}_{n}(x,z)=\left({\frac {2}{\pi }}\right)^{1/4}\left({\frac {1}{2^{n}n!w_{0}}}\right)^{1/2}\left({\frac {{q}_{0}}{{q}(z)}}\right)^{1/2}\left[{\frac {{q}_{0}}{{q}_{0}^{\ast }}}{\frac {{q}^{\ast }(z)}{{q}(z)}}\right]^{n/2}H_{n}\left({\frac {{\sqrt {2}}x}{w(z)}}\right)\exp \left[-i{\frac {kx^{2}}{2{q}(z)}}\right]}
ラゲール・ガウシアンモードの強度分布の例。
円筒対称性のある場合、近軸波動方程式の自然な解はラゲール・ガウシアンモードを与える。このモードは、円筒座標系とラゲール多項式 を用いて以下のように書ける。
u
(
r
,
ϕ
,
z
)
=
C
l
p
L
G
w
(
z
)
(
r
2
w
(
z
)
)
|
l
|
exp
(
−
r
2
w
2
(
z
)
)
L
p
|
l
|
(
2
r
2
w
2
(
z
)
)
exp
(
−
i
k
r
2
2
R
(
z
)
)
exp
(
i
l
ϕ
)
exp
[
i
(
2
p
+
|
l
|
+
1
)
ζ
(
z
)
]
{\displaystyle {u}(r,\phi ,z)={\frac {C_{lp}^{\mathrm {LG} }}{w(z)}}\left({\frac {r{\sqrt {2}}}{w(z)}}\right)^{|l|}\exp \left(-{\frac {r^{2}}{w^{2}(z)}}\right)L_{p}^{|l|}\left({\frac {2r^{2}}{w^{2}(z)}}\right)\exp \left(-ik{\frac {r^{2}}{2R(z)}}\right)\exp(il\phi )\exp \left[i(2p+|l|+1)\zeta (z)\right]}
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