農畜産と食料システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 09:30 UTC 版)
「地球温暖化の原因」の記事における「農畜産と食料システム」の解説
農業林業その他土地利用(AFOLU)由来の温室効果ガス(GHG)の正味排出量及び除去量(CO2換算)。農業由来の温室効果ガス(GHG)の排出源別排出量(CO2換算) 農林業・土地利用全体から排出されるGHGは直接排出量は総排出量(CO2換算)の約24%とされ、エネルギー利用で間接に排出量されるGHGは全体の0.87%に相当する。農畜産業および土地利用、貯蔵、輸送、包装、加工、小売および消費など食料に関わる全て合わせた食料システム活動からのGHG排出量は最大37%になるとされる。この推定値は、農場内での農作物や家畜の活動からの排出量が9~14%、森林破壊や泥炭地の劣化を含む土地利用や土地利用の変化からの排出用が5~14%、サプライチェーン活動による排出量が5~10%となっている。供給側からの主な排出源は農畜産であり、農畜産業の中で反芻家畜の消化管内発酵が40%(CO2等価)、家畜糞尿が16%と農畜産業全体の56%と畜産が多くを占めている 。農場内の作物及び畜産活動から年142+-42Tgのメタン(CH4)と年8.0+-2.5Tgの亜酸化窒素(N2O)を排出し、CO2排出量は森林減少および泥炭地劣化などの土地利用変化からは年4.9±2.5 GtCO2/年を排出している。2016年の農畜産部門に関連しているのはGHG全体の21%にすぎないが、電力などエネルギー部門からの排出は、エネルギー利用効率の向上と再生可能エネルギー源への移行によって、ゼロにまで削減することが可能である。また人口増加や経済発展により食料生産量は増加すると予想され、また、農畜産は複雑で多様な生物的物理的プロセスのため削減することは困難である。そのため、必然的に農業部門のGHGの排出量割合が大きくなっていく。IPCCによると農畜産と食料システムの排出量削減のために対処をしない場合、2050年までに約30-40%増加する可能性が高いとされる。また、IATPの試算によると2050年には世界全体のGHGが51Gt(2016)から13Gtに減少する一方、畜産の排出量は7.14Gt(2016)から10.53Gtに増加し、全体の81%を占めるようになると予測している。農畜産からの排出と吸収源は、地球規模の炭素と窒素の循環の一部である。したがって、農畜産部門の緩和可能性を最適化するためには、これらの循環と農業活動がこれらとどのように相互作用するかを理解することが必要である。農畜産と食料システムは、地球規模の気候変動への対応の一つの鍵である。効率的な生産、輸送、加工などの供給サイドの行動と、食料選択の修正、食料ロスと廃棄物の削減などの需要サイドの介入を組み合わせることで、GHG排出量を削減し、食料システムの強じん性を高めることが可能だとされる。 2021年には、食糧農業機関(FAO)の、持続可能な食料システムを維持するために、価格を歪め環境に配慮しない金融支援の問題に関する報告書の中で、農畜産への金融支援について、パリ協定の目標を達成するためには、特に高所得国において、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占める巨大な食肉・酪農産業への支援を転換する必要があり、低所得国では、有毒な農薬や化学肥料や、単一栽培への支援の転換が必要であるとしている。
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