農用(輓系)馬の生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:16 UTC 版)
「ばんえい競走」の記事における「農用(輓系)馬の生産」の解説
農用(輓系)馬の生産は1955年以後、トラックや耕耘機などの普及に伴い飼育頭数が激減。その後、馬肉(いわゆる桜肉)の需要が堅調に推移したことにより、生産頭数は1983年(7399頭)・1994年(8097頭)に改めてピークを迎えるものの、その後再び生産頭数が大幅に減少し、2004年は3163頭まで落ち込んでいる。 地域別の分布をみると、2005年度の生産頭数2655頭のうち、十勝管内で761頭(28%)、釧路管内で652頭(25%)、根室管内で300頭(11%)と、酪農の盛んな道東の太平洋側で6割半ばが生産されている。次いで網走管内184頭、上川管内139頭、檜山管内111頭などの順になっている。北海道以外では岩手県の81頭、熊本県の70頭などが多く、桜肉の飼養・生産が盛んな九州での生産頭数は、すべてを合わせても104頭にとどまる。 生産農家の形態は、おおまかに分類すると以下の3通りに分けられる。 1頭飼養農家 酪農専業農家が1頭だけ農用馬を飼養する形態である。機械化以前はどの農家でも運搬と農耕の手段として馬を飼養していたため、その名残から1頭飼養する農家は非常に多い。これは、乳牛に比べて農用馬に掛かる手間が非常に少なく、かつ乳牛に与えるに耐えない品質となって収穫できない繊維質の多い2番草を与えても問題ないことから牧草地を有効に活用でき、さらに乳牛に比べて取引価格が非常に高く現金化の道が早い、などの利点があるためである。これらの馬はばんえい競馬の競走馬を目指して生産されることはなく、1歳市場での売却を目的に生産されており、馬産農家からよほどの評価を受けない限り、当歳秋市場または1歳市場に出される。 第2種兼業的飼養農家 酪農を中心としながら数頭の繁殖牝馬を飼養し、ばんえい競馬の競走馬生産を目論みながら生産しているが、競走馬生産のための大きなリスクを取ることはほとんどない。 専業または第1種兼業的飼養農家 ばんえい競馬の競走馬生産を主目的に農用馬を生産しており、手間の掛かる酪農を兼業する農家はほとんどない。 公益社団法人日本馬事協会の資料によると、2004年の生産馬3163頭のうち、戦前の日本三大市場(釧路大楽毛・根室厚床・十勝帯広)の流れをくむ十勝・釧路・根室管内で、当歳市場662頭、1歳市場990頭の取引が成立した。2006年に馬名登録された2歳馬は430頭である。なお、この統計上に現れない馬の多くは、十勝・釧路・根室管内以外の生産馬か、あるいは自家生産した牝馬をそのまま繁殖牝馬として飼養しているケースのいずれかと考えられる。 農用(輓系)馬生産農家のお祭りとして行われる「草ばんば」には、繁殖に入った自家飼養馬のほか、現役の競走馬や、競走馬を目指す1歳馬も多数集まる。1歳馬が草ばんばに大挙出走するのは競走能力を見極めるシステムが少ないためで、軽種馬ではみられない特徴でもある。 草ばんばでの負担重量はおおむね330-350キロ。各地の草ばんばで優秀な成績を収めた1歳馬は、毎年10月中旬にばんえい競馬の競馬場(現在は帯広競馬場のみ)で行われる「祭典ばんば1歳馬決勝大会」に出走し、ここでの成績が大きな参考資料となることから、競走馬としてデビューする前に大がかりに能力を判定できるシステムとして機能している。
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