車両での利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 05:00 UTC 版)
内接式ドラムブレーキは自動車やオートバイなど陸上を走行する輸送機械の車輪を制動するブレーキに広く用いられる方式の1つで、一部の鉄道車両や路面電車にも採用例がある。自動車用としては他にディスクブレーキが普及しているが、ディスクブレーキよりも小型、軽量で、製造コストが低いほか、自己倍力作用を持ち、拘束力が高い利点がある。一方で、ブレーキドラムの内部に水分が入った場合に制動力が低下し、乾燥するまでの回復が遅いことや、ディスクブレーキよりも放熱性が悪く、コントロール性が低い欠点がある。ドラムブレーキの放熱性(耐フェード性)を向上するために、ドラムを軽量なアルミ製にしたり、それに加えて放熱フィンを設けたアルフィンドラム(英: alfin brake drum)などが採用される例があった。アルミ鋳造によるドラムの内側摺動面に鋼製の円筒を鋳込んで耐摩耗性(寿命)、強度、剛性を確保した構造が採られ、日本車では1960年代までのスポーツカーや高級車に採用された。 古くは乗用車や小型貨物車でも4輪(総輪)にドラムブレーキを採用した車種が一般的であったが、動力性能の向上やユーザーニーズの高度化に伴ってディスクブレーキに置き換えられ、前輪は多くの車種でディスクブレーキが採用されるようになった。日本車において大型車を除く4輪(総輪)にドラムブレーキを採用した最後の車種は普通車では1982年1月から1998年11月まで生産されたトヨタ・コロナ(T140型系タクシー仕様車)、軽自動車では1996年3月から2001年3月まで生産されたダイハツ・ミゼットIIであった。低廉な乗用車や小型貨物車では後輪ブレーキがパーキングブレーキを兼ねていることから、拘束力の高いドラムブレーキが一般的である。また、車両総重量の大きな大型のトラックやバスではドラムブレーキの利点が重視されて、2020年現在では除雪車等のごく一部の特殊車両を除くほとんどの車両に総輪(ベンチレーテッド)ディスクブレーキを標準で採用する2代目UD・クオンを除くすべての車輪で採用されている。4輪にディスクブレーキを採用する乗用車のうち、比較的車重が大きな車種では、ディスクブレーキによるパーキングブレーキでは拘束力が不足することから、後輪ディスクブレーキの内側にパーキングブレーキ専用の機械式ドラムブレーキを内蔵する、ドラム・イン・ディスク式あるいはインナードラム式と呼ばれる方式が採用される例もある。かつての中型・大型トラックやクロスカントリータイプの四輪駆動車では、プロペラシャフトにドラムブレーキを配置してパーキングブレーキとしていた。 オートバイも乗用車と同様に、1970年代までは前後輪共に機械式ドラムブレーキを採用することが一般的だったが、前輪は多くの車種で油圧式ディスクブレーキに置き換わり、高い動力性能を持つ車種では後輪にもディスクブレーキが採用されるようになった。ドラムブレーキは機械式のまま据え置かれ、低廉で小型の車種では現在でも前後輪にドラムブレーキが採用されているものが多い。 路面電車では1950年代後半から1960年代にかけて、弾性車輪を装備して製作された高性能車両に採用例がある。弾性車輪は防音や防振のために車輪の輪心部とタイヤ部との間にゴムの緩衝材を組み込んだものであったが、高い動力性能を持った車両を制動するために踏面ブレーキを連続的に使用すると、発熱して緩衝材を締結するボルトが緩む問題が生じた。高加速性能に見合った高いブレーキ性能を確保するため、踏面ブレーキに代わって車輪に熱を伝えないドラムブレーキが採用された。 動作機構にはカムでシューの一端を押し広げる場合と、油圧や空圧を利用したシリンダで押し広げる場合とがある。カムを利用した動作機構は、カムの軸を回転させるレバーの端をコントロールケーブルで引いてブレーキを動作させる。自動車のパーキングブレーキや、オートバイのブレーキで広く用いられている。シリンダを利用した動作機構ではこのシリンダをホイールシリンダと呼び、ピストンの軸力を直接シューの一端に与えて動作させる。ホイールシリンダはドラムブレーキの基部であるバックプレートに固定される場合と、一方のシューに浮動支持される場合とがある。自動車のフットブレーキで用いられる場合が多い。
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