赤色巨星と銀河系の化学進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 06:35 UTC 版)
「COROT」の記事における「赤色巨星と銀河系の化学進化」の解説
核での水素を核融合で使い果たした後、恒星の全体の構造は劇的に変化する。水素の核融合はヘリウムの核を取り囲む薄い殻状の領域で発生するようになる (水素殻燃焼)。ヘリウムコアは急速に収縮して温度が上昇する一方で、水素燃焼殻よりも外側は膨張し温度は低下する。こうして恒星は半径と光度が時間とともに増加する赤色巨星になる。これらの恒星はヘルツシュプルング・ラッセル図 (HR 図) 上では赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) と呼ばれる場所に位置し、一般に RGB 星と呼ばれる。中心部の温度が 108 K を超えると、核のヘリウムが核融合を開始する。太陽の2倍よりも軽い質量を持つ恒星の場合、この燃焼は縮退した物質の中で発生し、ヘリウムフラッシュという形で進行する。ヘリウムフラッシュ後の構造の再構成によって、赤色巨星は HR 図上でレッドクランプと呼ばれる位置に移動する。 RGB もレッドクランプも、太陽のような振動を励起することができる広がった対流エンベロープを持つ。COROT の主要な成果は、exo field において数千もの赤色巨星の動径方向の振動と長寿命の非動径振動を発見したことである。それぞれについて、周波数スペクトルにおける最大のエネルギーを持つ周波数 ν m a x {\displaystyle \nu _{\rm {max}}} と連続モードの間の大きな周波数の間隔 Δ ν {\displaystyle \Delta \nu } が測定された。 銀河系内の赤色巨星ポピュレーション: 星震学の特徴を有効温度の推定と共に導入することで、これらの特徴を恒星の全球的な特徴と結びつけるスケーリング則によって、重力、質量と半径を推定することができ、これらの数千個の赤色巨星の光度と距離をすぐに導出することができる。得られたデータからヒストグラムを描くことができ、COROT の観測から作成されたヒストグラムを我々の銀河系での赤色巨星の理論的な種族合成から得られたヒストグラムと比較することで、全く予想外だった結果が得られた。理論的な種族合成は、銀河系の時間進化に伴って恒星が生成するのを記述するための様々な仮説を採用した上で、恒星進化モデルから計算されたものである。Andrea Miglio とその共同研究者らは、図のヒストグラムで見られるように、お互いに同じ形状のグラフを示していることに気付いた。さらに、これらの数千個の恒星の距離に関する情報を銀河座標に加えることで、我々の銀河系の三次元マップを描いた。三次元マップでは COROT の異なる観測時期に観測された天体を異なる色で示してある。またケプラーを用いた観測での同様の情報は図中に緑で描かれている。 銀河系内の年齢-金属量の関係性: 赤色巨星の年齢は直前の主系列段階の寿命と密接に関連しており、恒星の質量と金属量によって決まる。赤色巨星の質量を知ることは、その年齢を知ることと同じである。金属量が分かっている場合、15% を超えない不確かさで年齢を推定することができる。銀河系内の 100,000 個の赤色巨星の金属量を測定することを目標とする APOGEE (Apache Point Observatory Galactic Evolution Environment) などの観測ミッションは、星震学で得られたデータを活用することができる。星震学の研究から、銀河系の構造と化学進化についての知見を得ることができる。 核での水素およびヘリウム燃焼の時期の振動の特徴と混合領域の広がり: COROT やケプラーによる赤色巨星の周波数スペクトルのさらなる詳細な解析を行うことで、新しい発見がもたらされた。恒星の振動に見られるわずかで微妙な違いから、似たような光度を持っているレッドクランプと赤色巨星分枝を区別することが可能となる。これは赤色巨星の詳細なモデル化によって現在では理論的に確認されている。重力が支配的な振動モードの周期間隔は特に意味があると考えられている。多数の赤色巨星での振動の検出によって、核で水素核融合が起きている段階での対流核の外側領域における混合領域の広がりだけではなく、核でヘリウム核融合が起きている段階での混合領域の広がりについての情報も得られた。どちらの混合過程も、先験的には無関係である。
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