詳細なモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/06 16:34 UTC 版)
「バラッサ・サミュエルソン効果」の記事における「詳細なモデル」の解説
Funda, Lukinić and Ljubaj(2007)で述べられている詳細なバラッサ・サミュエルソンの2国家2部門モデルを以下に示す。このモデルには次のような仮定がある。 絶対的購買力平価は貿易財にのみ成り立つ。 貿易財部門における賃金は貿易財部門の労働生産性によって決定される。 労働は国内において完全に移動自由であるが、国際的な移動は制限される。すなわち、国内部門間の賃金は均等化される。(あるいは、少なくとも賃金比率は一定に保たれる。) 資本は、国内・国家間双方において完全に自由に移動可能である。 まず、以下のように一国の一般物価水準は貿易財と非貿易財の価格水準の重みつき平均で示される。 P = P T α P N T 1 − α {\displaystyle P=P_{T}^{\alpha }P_{NT}^{1-\alpha }} (1) P ∗ = P T ∗ α ∗ P N T 1 − α ∗ {\displaystyle P^{*}=P_{T}^{*\alpha ^{*}}P_{NT}^{1-\alpha ^{*}}} (1a) ここで P T {\displaystyle P_{T}} は貿易財の価格水準、 P N T {\displaystyle P_{NT}} は非貿易財の価格水準。 α {\displaystyle \alpha } は国内と他国の consumer basket の貿易財の占めるシェア。アスタリスクマーク(*)は他国であることを示す。 この2国間の実質為替レートは海外の財の価格を国内の財の価格で割ることで他国通貨の相対価格として求められる。 Q = E P ∗ P {\displaystyle Q={\frac {EP^{*}}{P}}} (2) ここで E {\displaystyle E} は名目為替レート。 Q {\displaystyle Q} の上昇は自国通貨の実質為替レートの減価を意味する。等式(1)と等式(1a)を対数表示し、対数表示の等式(2)に代入することで、次の式を得る。なお、次の式において小文字の英数は対数表示された変数を意味する。 q = e + α ∗ p ∗ T + ( 1 − α ∗ ) − α p T − ( 1 − α ) p N T {\displaystyle q=e+\alpha ^{*}p^{*T}+(1-\alpha ^{*})-\alpha p^{T}-(1-\alpha )p^{NT}} (3) 等式(3)を微分することで、次の式を得る。 Δ q = ( Δ e + Δ p ∗ T − Δ p T ) + ( 1 − α ∗ ) [ Δ p ∗ N T − Δ ∗ T ] − ( 1 − α ) [ Δ p N T − Δ p T ] {\displaystyle \Delta q=(\Delta e+\Delta p^{*T}-\Delta p^{T})+(1-\alpha ^{*})[\Delta p^{*NT}-\Delta ^{*T}]-(1-\alpha )[\Delta p^{NT}-\Delta p^{T}]} (3a) ここで購買力平価が成り立つと考えると Δ p T = Δ e + Δ p ∗ T {\displaystyle \Delta p^{T}=\Delta e+\Delta p^{*T}} (4) 等式(3a)の右辺の最初の部分が0(ゼロ)に等しいことから、次のように書きかえることができる。 Δ q = ( 1 − α ∗ ) [ Δ p ∗ N T − Δ p ∗ T ] − ( 1 − α ) [ Δ p N T − Δ p T ] {\displaystyle \Delta q=(1-\alpha ^{*})[\Delta p^{*NT}-\Delta p^{*T}]-(1-\alpha )[\Delta p^{NT}-\Delta p^{T}]} (5) このモデルが小国開放モデルであり、貿易財・非貿易財部門双方の生産関数がコブ・ダグラス関数で表示可能であるとすると、次のような等式を得る。 Y T = A T L T x K T 1 − x {\displaystyle Y^{T}=A^{T}L_{T}^{x}K_{T}^{1-x}} (6) Y N T = A N T L N T δ K N T 1 − δ {\displaystyle Y^{NT}=A^{NT}L_{NT}^{\delta }K_{NT}^{1-\delta }} (7) ここで Y {\displaystyle Y} は生産を表し、 A {\displaystyle A} は技術、 L {\displaystyle L} は労働、 K {\displaystyle K} は資本を表す。パラメータ x {\displaystyle x} と δ {\displaystyle \delta } は正で1より小さい。生産要素移動の完全性と完全競争を仮定すると、利益は次のように最大化される。 W = A T x ( K T L T ) 1 − x {\displaystyle W=A^{T}x\left({\frac {K^{T}}{L^{T}}}\right)^{1-x}} (8) W = ( P N T P T ) A N T δ ( K N T L N T ) 1 − δ {\displaystyle W=\left({\frac {P^{NT}}{P^{T}}}\right)A^{NT}\delta \left({\frac {K^{NT}}{L^{NT}}}\right)^{1-\delta }} (9) R = A T ( 1 − x ) ( K T L T ) − x {\displaystyle R=A^{T}(1-x)\left({\frac {K^{T}}{L^{T}}}\right)^{-x}} (10) R = ( P N T P T ) A N T ( 1 − δ ) ( K N T L N T ) − δ {\displaystyle R=\left({\frac {P^{NT}}{P^{T}}}\right)A^{NT}(1-\delta )\left({\frac {K^{NT}}{L^{NT}}}\right)^{-\delta }} (11) ここで W {\displaystyle W} は賃金率(貿易財によるもの)を表し、 R {\displaystyle R} は世界市場によって決定される資本賃貸率。 P N T P T {\displaystyle {\frac {P^{NT}}{P^{T}}}} は貿易財に対する非貿易財の相対価格。対数微分と等式(8)から(11)を整理することによって、次のように動的な自国内のバラッサ・サミュエルソン効果を得る。 Δ p N T − Δ p T = ( δ x ) δ a T − Δ a N T {\displaystyle \Delta p^{NT}-\Delta p^{T}=\left({\frac {\delta }{x}}\right)\delta a^{T}-\Delta a^{NT}} (12) これは、仮に貿易財部門の生産性成長率が非貿易財部門の生産性成長率よりも早く上昇するのであれば、非貿易財の価格が貿易財の価格よりも早く上昇することから従う。この結論は自国と他国の貿易財と非貿易財のequal factor intensityの仮定(自国と他国、 δ = γ {\displaystyle \delta =\gamma } )の上に成り立っている。 等式(12)を等式(5)に代入し、等式(2)を利用することで、国際的なバラッサ・サミュエルソン効果を得る。 Δ p − Δ p ∗ = Δ e + ( 1 − α ) [ ( δ x ) Δ a T − Δ a N T ] − ( 1 − α ∗ ) [ ( δ ∗ x ∗ ) Δ a ∗ T − Δ a ∗ N T ] {\displaystyle \Delta p-\Delta p^{*}=\Delta e+(1-\alpha )\left[\left({\frac {\delta }{x}}\right)\Delta a^{T}-\Delta a^{NT}\right]-(1-\alpha ^{*})\left[\left({\frac {\delta ^{*}}{x^{*}}}\right)\Delta a^{*T}-\Delta a^{*NT}\right]} (13)
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