製作者の告白
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/24 03:56 UTC 版)
「ミステリー・サークル」の記事における「製作者の告白」の解説
1991年、イギリスのダグ・バウワー(Doug Bower)とデイブ・チョーリー(Dave Chorley)という老人2人組がミステリー・サークルの最初の製作者として名乗りを上げ、簡単な道具と人力によって一定規模のミステリー・サークルが比較的短時間で作れることを実演、この実証により一時騒がれた超常現象説は急速に廃れて人為的な創作物とされた。 この2人の男性によれば、彼らは1978年頃からミステリー・サークル作りを行うようになった。最初は年に1つか2つ程度で、1982年頃から話題になり始めると作る個数を増やした。最終的には250以上も作ったと見られる。しかし深夜での作業の上に高齢による体力の低下とダグの度重なる深夜の外出に疑念を抱いたダグの妻アイリーンが難詰したため、ダグは「作業」を告白。途中からアイリーンも加えた3人での作品作りになり、ミステリーサークル信者に混じりアイリーンも“作品”の出来を喜んでいた。 なお、彼らが告白した理由は「クロップ・サークルを宇宙人や超常現象と結びつける人があまりに増えすぎたせいで国家を始め様々な公共機関でこの現象が議論され始め、自分達の責で税金が無駄にされるのは忍びないと考えたから」である。 気象の専門家が「竜巻が原因ではないか」というと、彼らはそれを受けて故意に小さな右巻きの円の外に左巻きの円を持つサークルを作って発見させるなど、自然現象での説明を困難にしてもいた。彼らの初期の「作品」は土曜の朝に発見されていた。これはダグが妻から外出を許されていたのが金曜の夜だったからである。後に妻にばれると、妻はそのイタズラを喜びいつでも外出する許可を与えたので、後年の作品は不定期に「発見」されている。ダグ・バウワーとデイブ・チョーリーは、ミステリー・サークル製作の「功績」を称えられ、1992年にイグノーベル賞の物理学賞を受賞している。 宇宙人説やプラズマ説などを主張する者は、あまりに幾何学的な形状が現れること、あるいは、作物が編み込むように倒れていることが、人間の仕業ではないことを裏付けていると彼らに「反論」した。しかし、前者はCADを用いて本格的な設計を事前に行っていたためであり、後者は人為的に作成したものも同じ状態になることが示されている。 ダグ・バウワーとデイブ・チョーリーには、農場の持ち主が宣伝を目的にサークルの作成を依頼していたケースも多かった。逆に、農場主からの損害賠償訴訟が発生したケースもあった。ダグとデイブの作成した後期の「作品」には、二人の頭文字「D」が組み込まれていた。 バウワーとチョーリーだけでは全てのミステリー・サークルの説明はつかないことも指摘された。しかし、世間で騒ぎになったサークルを真似て製作した人々が多数いたことが分かっている。ミステリー・サークルを作るグループが複数あることも知られている。イギリスのケンブリッジ大学の近辺に現れたマンデルブロ集合型のミステリー・サークルは、研究仲間が作成したものだと数学者のブノワ・マンデルブロが証言している。イギリスだけでも20以上あったことが知られており、そのうちいくつかは現在でも活動している。規定時間内に独創的なミステリー・サークルを作るコンテストも行なわれている。 ミステリー・サークル周辺を浮遊する光の球が目撃され、それに関するビデオも多数撮影されている。しかし、いずれもイタズラか捏造であることが判明している。これらは老人2人とは別のグループによるもので、懐中電灯に風船をくくりつけて飛ばしていただけだった。 イギリスのテレビ局が制作した「(前述の製作者と組んで)密かに作成したミステリー・サークルを専門家に鑑定させる」番組では、科学者側・超常現象側双方全ての専門家が人間によるイタズラと見抜くことができず、人間以外の手によって作成されたと誤って判断した。サークルの発見がほとんど月曜日であることも、それらが時間のとれる休日である土曜と日曜に作成されやすい、つまり人間による作成であることを示唆している。 イタズラであると世間が認識するにしたがって正体不明なミステリー・サークルの発生は減少、後にほぼ終息したことも、愉快犯による仕業であることを裏付けている。告白以前にミステリー・サークルについて自然現象説や宇宙人説などを語った学者らには、人工物だと見抜けなかったことから、告白以後ウソつき呼ばわりされた者もいたという。一方で、人の手によるものであることを明らかにした上で、ミステリー・サークルを一種の芸術作品や広告ビジネスとして作成し競い合う複数のグループが公然と活動するようになっている。 上記の動向により、現在では人間のイタズラ以外に原因を求める説はほぼ一掃されている。一方、それらを踏まえた上で、なお現在でも「イタズラでは説明がつかないケースもある」と主張する層も存在する。
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