脳死と心停止による死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 06:50 UTC 版)
脳死は結果的に法的な死をもたらすことになるが、心臓の拍動や機械補助の呼吸があり、一定期間は他のあらゆる重要な臓器が生きていて機能を保持する。それなりに長い間、生物学的意味での完全な死には至らないものの、脳死を宣告された患者は一般的に毒素や老廃物を体内に蓄積し始めていく。このまま行くと、凝固障害(体液や電解質、栄養の不均衡)が原因で、最終的に多臓器が機能不全になるか、いきなり機能不全に陥ることもある。そのため、通常だと臓器は使用に耐えうる一定期間までに限って維持可能であり(臓器提供を)実行可能である。 このことは、患者の維持状況、併存疾患、医療チームの技術、設備の質といった要因に左右される場合もある[信頼性の低い医学の情報源?]。主な争点は、患者が(脳死でも)まだ完全に生物学的に死んでいない場合に移植を許可すべきか否か、脳死が許容されるとして当人の脳全体が死んでいる必要があるか、脳の特定部の死で法的、倫理的、道徳的な目的のために十分なのかという点である。 臓器移植を目的とした臓器提供の大半は、脳死の状況で実施される。ただし、日本ではここが争点で、ドナー希望者は脳死あるいは心臓死のいずれかを指定することになる(移植 (医療)#日本での移植医療を参照)。ベルギー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、フランスといった一部の国では全員が自動的に臓器提供者になるが、シンガポール、ポルトガル、ポーランド、ニュージーランド、オランダなどの一部自治体ではこのシステムの事後不承諾が認められている。それ以外の場所では、家族または近親者の同意が臓器提供に必要とされる。脳死とはいえ生物学的に死んでいないドナーは、臓器が外科的に切除されるまで人工呼吸器のサポートが維持される。 (上述の国において)脳死した個人が臓器ドナーではない場合、人工呼吸器と薬物のサポートは中止されて心臓死が起こることになる。 日本では、1979年に心臓死移植に関する法律が整備され、家族の承諾があれば死後の腎臓および角膜の提供が認められるようになった(角膜及び腎臓の移植に関する法律)。脳死移植については1997年に臓器の移植に関する法律が施行され、当人の希望意志が書面に残されていて遺族の反対が無ければ、脳死時点での臓器提供が可能となった。この条件で行われた脳死の臓器提供は年間5件程度であったが、2009年に法改正がなされ、「親族への優先提供」や「本人の意思が不明な時には家族の書面による承諾で脳死臓器提供」が可能となり、脳死提供の数は飛躍的に増加。 2011年以降は脳死での臓器提供が年間40件を超えて年々増加傾向にある。とはいえ、他の先進国と比べて日本の臓器提供率はだいぶ非常に低い水準であり、移植コーディネーターの質や人員の向上、臓器提供を行うための院内体制の整備、国民の意識を積極的にさせる啓発活動など、取り組むべき課題も多い。 臓器ドナーの男女差に関して、日本では小児の臓器提供データを見る限り、男児36人に対し女児13人(1995年4月-2017年12月までの累計)と性別では男が多数を占めている。ただし、内閣府の「臓器移植に関する世論調査」で臓器提供意思カードの所持を尋ねたところ、提供意思カードを所持しているのは男性7.7%に対し女性10.8%と女性の方が若干多かった。このことから、将来的には女性の臓器提供件数が増加していくものと思われる。[独自研究?]
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