発明と製作
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アイザック・ニュートンは色収差の補正が不可能であると考えて、屈折望遠鏡に未来はないと判断し、反射望遠鏡の開発に取り組み、凹面主鏡と、傾いた斜鏡の組み合わせによる望遠鏡を発明した。 発明 「鏡を組み合わせて望遠鏡を作る」というアイディアならばすでにスコットランドのグレゴリーによって提案されていたが(グレゴリー式望遠鏡)、グレゴリーのアイディアというのは(当時は)現実味がなかった。鏡にあけた穴から人が覗き込む、というものだったので製作は困難だったのである。ニュートンはグレゴリーの案の問題点を解決すべくスケッチ(素描)を描き、鏡を斜めに配置し(鏡に穴をあけるのではなく)筒の側面に穴をあけアイピースを配置する、という案にたどりついた。ここがニュートンの発明なのである。 製作開始、困難、完成。仕上がりの状態。 ニュートンはこのアイディアを実際に試すことを決意した。この段階では、ニュートンが少年時代に親しんだ模型づくりの技術が役に立つことになった。とは言え、眼の前には困難な課題が山積みの状態だった。凹面鏡やレンズといったものまで、すべて自作しなければならなかったのである。当時は現代と違って、科学用器具のカタログ販売や店舗販売などというものは無かったのである。 凹面主鏡はピッチ盤に酸化錫をつけて研磨することで実現した。1668年に第一号機を完成。実際に製作され完成した反射望遠鏡としてはこれが世界初である。それまで誰ひとりとして実現できていなかった「反射望遠鏡」というものを、実際に製作してみせた(現実化してみせた)というところもニュートンの大きな成果である。 ニュートン自身の著作『光学』によれば、鏡は銅と錫の合金に銀を少し混ぜた金属鏡であり、主鏡直径は2インチ(以降in)=約50.8ミリメートル(以降mm)、厚さ約1/3in(約8.5mm)、焦点距離は6.25in(約158.8mm)。A.ケーニヒ『望遠鏡と測距儀』では口径34mm、焦点距離159mm、倍率38倍となっているが、この食い違いについて吉田正太郎は「鏡径2インチ、焦点距離6.25インチではF3.125ですから、当時の技術では放物面の研磨は不可能にちかい」「よく磨けた部分だけを、直径38mmに絞ったのかもしれません」と推測している。 一般にニュートン式の斜鏡は45度であることが多いがこの時には斜鏡の傾きは正確な45度ではなく、またピント調整は蝶ネジで主鏡を動かす点が特徴的である。 なお王立協会が所有している、大きな球関節に取り付けた望遠鏡の写真をよく見かけるが、これは1766年にヒース・アンド・ウィングが製作した模造品であることが1980年頃に判明している。1978年にイギリス1ポンド紙幣の図柄になったのもこの模造品である。 なお、この最初の製品で何を見たという記録は残っていない、とも。ニュートンは惑星の観測を行った、とも。 性能の良さと反響 出来上がった反射望遠鏡は大成功の出来栄えであった。とてもコンパクトで、わずか8インチのサイズだったのに、旧来のレンズを組み合わせた方式の長くて大きな望遠鏡よりも、むしろ鮮明で大きな像が見えたのである。ニュートンはその性能の良さをバロー(Dr.Barrow)にデモンストレーションしてみせた。バローは1671年にこの反射望遠鏡をロンドンに持ってゆき、何人かの要人に見せた。その中には、イングランド国王のチャールズ2世もいた。チャールズ2世は科学の進歩についてゆくことを切望していたのである。 1671年には改良した第二号機を製作し1672年王立協会の例会に提出し説明をし、1672年3月25日号の会報に掲載され、非常な好成績を収めたためニュートンが会員に推薦される理由となった。
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