環境保護と地域開発の両立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 14:35 UTC 版)
「やんばる国立公園」の記事における「環境保護と地域開発の両立」の解説
やんばるの国立公園化により、当地域の自然保護が強化される。しかし、やんばるに生息する動植物が密猟・過剰採取の被害に遭う実態が報告され、地元住民は定期的に林道を巡回している。理学博士の屋富祖昌子は「国立公園化で、観光客がやんばるの動植物を研究や教育目的以外でむやみに乱獲されるのではないか」とし、環境省のやんばる野生生物保護センターは国立公園化に伴い、外部から人が増えることを予想し、「警察や周辺住民らと連携して密猟の抑止に努める」と述べた。また、2001年には、ペットとして飼われたネコが遺棄されて、その後野生化したノネコによるヤンバルクイナの捕食が発覚すると、その被害を抑えるために、2003年に環境省と周辺自治体でネコの適正な飼育を推進した。しかし、その後の2013年頃にノイヌが増加し、既にやんばるの生態系に影響を及ぼしていると思われ、新たな対策が求められている。 当公園のテーマ「亜熱帯の森やんばる - 多様な生命(いのち)を育む山と人々の営み」とあるように、やんばるの森は地元住民の生活と関わりがある。やんばるは、沖縄県内で林業が盛んな地域で、かつて首里・那覇や本島中南部に薪材や材木・竹、砂糖樽の板などを供給していた。特に国頭村は沖縄県最大の木材産出地で、2016年現在でも県内唯一の木材拠点産地に指定されるなど、雇用面でも林業は重要な産業となっている。当公園の指定区域内のうち、特別保護地区と特別地域での木材の伐採などが制限され、沖縄県は林業への悪影響を及ぼすことは明らかであると述べた。また、世界遺産に登録されれば、豊かな生物多様性のみを取り上げられ、人々にやんばるの森が手付かずの原生林だと誤認され、規制条件を満たした合法的な収穫伐採でも批判される可能性があると懸念している。やんばるで農林業を営む人々の中には、当公園の区域内で従事し、国頭村で林業を営む住民の一人は、この公園化で林業への恩恵は感じられず、伐採規制の強化のみで行う環境保全に疑問を呈している。沖縄県農林水産部森林管理課は、2015年からやんばる3村で「やんばる型森林ツーリズム推進体制構築事業」を展開している。やんばるの主産業である林業と自然体験活動の組み合わせによる、森林の活用と環境保全を目指している。それを実現するためには、やんばる3村主導で事業を取り組み、自らが意見の合意形成を図り、さらに林業と関連する団体と連携する必要があるとしている。 やんばる3村の各村長らは、やんばる国立公園の指定を受け、観光産業の発展に期待しているが、宿泊施設の増設、交通の整備、ごみの処理などの観光客を受け入れる体制が万全に整っていない。また地元住民の中には、観光客の増加による環境負荷を懸念し、それを防ぐために人数制限を設ける必要があるとし、観光客やそれらを受け入れる自治体にも、生物多様性の豊かさを評価されて国立公園化された意味を理解するべきだと述べた。やんばる自然保護官事務所は、自然保護に対する意識向上や、観光と地域振興の活性化に期待し、地元と共にやんばるの将来について考えたいと述べた。
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