現行法の公訴時効期間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 01:17 UTC 版)
2010年(平成22年)4月27日に公布・施行された改正刑事訴訟法により、「人を死亡させた罪であって(法定刑の最高が)死刑に当たる罪」については公訴時効が廃止されたため、時効が成立することはない。その他の罪の公訴時効期間については、いずれも刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第250条に定められている。まず、「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)」(同条1項)と「“人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの”以外の罪」(同条2項)に分け、その上で、法定刑の重さにより時効期間の長さが定められる。 刑事訴訟法第251条は、時効期間の標準となる刑について、複数の主刑から一を選択し、または複数の主刑を併科すべき罪については、重い刑によることを定める。例として、盗品等有償譲受け罪(刑法256条2項)は懲役刑と罰金刑の必要的併科であるが懲役刑によること、法人税法159条1項違反は懲役刑、罰金刑および懲役刑と罰金刑との併科の中から刑を選択するが懲役刑によることを定める。よって、盗品等有償譲受け罪の公訴時効は7年、法人税法159条1項違反は5年である。なお、刑の軽重は刑法第10条によって定まる。 刑事訴訟法第252条は、刑の加重・減軽が行われる場合、時効期間を定める基準は、処断刑(法定刑に法律上・裁判上の加重減軽を加えたもの)ではなく、法定刑によることを定める。 条項罪の種類時効期間具体的な罪の例- 人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪 公訴時効なし 殺人、強盗致死、強盗・強制性交等致死、(往来危険)汽車転覆等致死、水道毒物等混入致死、航空機強取等致死など。 250条1項 人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く) 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 30年 強制わいせつ致死、強制性交等致死など。 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪 20年 傷害致死、結果的加重犯のうち傷害の罪と比較して重い刑となる致死罪、危険運転致死 など。 上に掲げる罪以外の罪 10年 業務上過失・重過失・過失運転致死など。 250条2項 「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの」以外の罪 死刑に当たる罪 25年 殺人未遂、外患誘致・外患援助、内乱(首謀)、現住建造物等放火・浸害、爆発物取締罰則違反(公共危険)など。 無期の懲役又は禁錮に当たる罪 15年 内乱(謀議・指揮)、汽車転覆等、通貨偽造等、詔書偽造等、身の代金目的略取等、強盗致傷、強制性交等致傷、強盗・強制性交等、航空機強取等など。 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪 10年 外国通貨偽造等、強盗、傷害、往来危険、結果的加重犯のうち傷害の罪と比較して重い刑となる致傷罪、強制性交等、所在国外移送等、危険運転致傷 など。 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 7年 内乱(従事)、内乱・外患予備陰謀、騒乱(首謀)、強制わいせつ、有印公文書偽造、有価証券偽造等、偽証、窃盗、不動産侵奪、営利目的略取等、詐欺、恐喝、業務上横領、発覚免脱、ひき逃げ など。 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪 5年 内乱等幇助、私戦予備陰謀、騒乱(指揮・率先)、あへん煙輸入、水道汚染、特別公務員暴行陵虐、公正証書原本不実記載等、有印公文書偽造等、受託収賄、未成年者略取等、横領、業務上過失・重過失・過失運転致傷 など。 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪 3年 内乱・騒乱(付和随行)、多衆不解散、偽造通貨等収得・知情行使、公然わいせつ、わいせつ物頒布等、殺人予備、強盗予備、放火予備、公務執行妨害、名誉毀損、暴行、住居侵入、過失傷害、過失致死、遺失物等横領、脅迫、強要、信用毀損・業務妨害、器物損壊など。 拘留又は科料に当たる罪 1年 侮辱、軽犯罪法違反など。 2010年(平成22年)4月27日に公布・施行された新法(刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号))には、経過措置が定められている(同法附則3条)。この経過措置によれば、改正後の刑事訴訟法250条の規定は「この法律の施行の際既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない。」とし(附則3条1項)、改正後の刑事訴訟法250条1項の規定は「刑法等の一部を改正する法律(平成16年法律第156号)附則第3条第2項の規定にかかわらず、同法の施行前に犯した人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもので、この法律の施行の際その公訴の時効が完成していないものについても、適用する。」とされ(附則3条2項)、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもので2010年(平成22年)4月27日までに公訴時効が完成していない罪については、すべて新法が適用されることとなる。
※この「現行法の公訴時効期間」の解説は、「公訴時効」の解説の一部です。
「現行法の公訴時効期間」を含む「公訴時効」の記事については、「公訴時効」の概要を参照ください。
- 現行法の公訴時効期間のページへのリンク