水移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 21:33 UTC 版)
水は重力と毛管力と浸透圧によって移動する。圃場容水量のサクション 33 kPa までは、水は重力と水圧によって生じる圧力勾配によって移動し、これを飽和流と言う。サクションがそれよりも大きくなると、水移動は土壌の毛管力によって湿潤土壌から乾燥土壌へと移動する。これは水の土粒子表面への吸着によって生じ、不飽和流と言う。 土壌中の水の浸透は以下の6つの要因に制御される。 土性。 土壌構造。細粒土の団粒構造は浸透に好ましい。 有機物量。粗大な有機物が良く、土壌表面にあれば土壌構造の破壊とクラストの形成を防ぐ。 硬盤や基岩のような難透水層までの深さ。 土壌中の水分量。 土壌の温度。高温な土壌の方が浸透速度が大きく、凍土は凍結の種類によっては水を吸収できない。 水の浸透速度は重粘土の1時間に 0.25 cm から、砂や団粒構造の発達した土の 2.5 cm まで幅がある。水は地中を不均一に流れ、水分子の表面張力によっていわゆる「重力フィンガー」 (gravity finger) を形成する。 木の根は、生きているものも死んでいるものも、降雨浸透が選択的に流れる通り道を作り、浸透速度を 27 倍にまで拡大する。 洪水によって川底の透水性は一時的に上がり、帯水層の涵養を助ける。 土壌に供給された水は圧力勾配によって、部分的に飽和している場所(水が供給された場所)から、不飽和帯のようなより水分量が少ない場所へと移動する。土壌が完全に水で満たされて飽和すると、水は下へ移動し、植物の根がある範囲外へと浸透し、粘土、腐食、栄養、主な陽イオンとともに、重金属、有機溶剤、油、農薬、ウイルス、細菌のような様々な汚染物質を運び、地下水汚染の原因となる可能性がある。溶出する栄養素は、溶解度が高いものから低いものへと並べると カルシウム マグネシウム、リン、カリウム(土壌の組成による) 窒素(窒素肥料が施されていなければ通常は少ない) リン(土壌中では溶解性が低い形態なのでとても少ない) アメリカ合衆国では、1日あたりに降雨が浸透する速度はロッキー山脈の東のほぼ 0 cm から、アパラチア山脈とメキシコ湾の北海岸の 50 cm 以上までの幅がある。 水は土粒子の表面からの吸着力による表面張力すなわち毛管力に引き寄せられているため、湿ったところから乾いたところに向かって、そしてマクロポアからミクロポアに向かって サクションの勾配が生じる。リチャーズ式によって不飽和帯における水移動を記述できる。不飽和水分溶質移動の解析は、Hydrus のようなソフトウェアに不飽和水分移動関数(水分保持関数と不飽和透水係数関数)のパラメータと初期条件と境界条件を与えることで計算が可能である。マクロポア、亀裂、植物根と虫の通り道に沿って選択流が発生し、水が重力によって排水する。今では多くの土壌物理モデル(二重連続、二重間隙、二重浸透モデル)によって選択流が表現されるが、いずれも厳密な物理的裏付けなしにリチャーズ式の解に追加されたものである。
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