歴史・黄金期と衰退
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:47 UTC 版)
「マカロニ・ウェスタン」の記事における「歴史・黄金期と衰退」の解説
『荒野の用心棒』が世界中で爆発的な人気を博すると、イタリアでは1965年頃から500本以上にのぼる作品が量産されるようになる。 イタリアからは、ジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロがスターとなり、バッド・スペンサー、テレンス・ヒルらも登場した。年に1、2本は大型予算を投じた作品も撮られるようになり、その代表的なものに、レオーネ監督の『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』。そしてハリウッドからヘンリー・フォンダ、チャールズ・ブロンソンらの有名スターを招いた『ウエスタン』などがある。 アメリカ(クリント・イーストウッド(荒野の用心棒)、ヘンリー・フォンダ、ロッド・スタイガーなど)やイギリス(リンゴ・スター)などから俳優を持ってくることも少なくなかったが、大半は脇役も主役もイタリア本国を始め、スペイン(アントニオ・カサス、ニエヴェス・ナヴァロなど)、フランス(ロベール・オッセン、ジャン=ルイ・トランティニャン)、オーストリア(ジークフリート・ルップ、ヨゼフ・エッガー、ヴィルヘルム・ベルガー)、西ドイツ(クラウス・キンスキー、マリアンネ・コッホ)など、ヨーロッパ大陸部全体から集められた。「ユーロ・ウェスタン」という呼称の所以である。南米ウルグアイ出身のスター、ジョージ・ヒルトンが参加しており、日本からも仲代達矢が招かれている。ソリーマの映画でスターとなったトーマス・ミリアンはキューバ出身(後アメリカに移住)、『続・荒野の用心棒』の作曲家ルイス・エンリケス・バカロフはアルゼンチン人である。 面白いところでは、ホラー映画で有名なルチオ・フルチが、ジュリアーノ・ジェンマでマカロニ・ウェスタンを1作撮っている。さらに、ピエル・パオロ・パゾリーニが監督でなく俳優として出演している『殺して祈れ(英語版)』などの作品もある。 製作はほとんどイタリアのものだったが、最盛期にはロベール・オッセン監督・主役の『傷だらけの用心棒』など、ほとんどフランス人の手だけによる西部劇も作られた(脚本はイタリア人のダリオ・アルジェント)。これも「ユーロ・ウェスタン」の名の由来である。 マカロニ・ウェスタンは日本でも人気を集め、ブームの頃にはその影響を強く受けた時代劇や現代劇が制作された。テレビドラマでは『木枯し紋次郎』、『必殺シリーズ』、『子連れ狼』、『唖侍鬼一法眼』、『斬り抜ける』など、マカロニ・ウェスタンの要素を取り入れた作品が多く作られ、若者を中心に支持を集めた。また現代劇『太陽にほえろ!』の萩原健一が、マカロニ・ウェスタンの主人公のような格好をしていることからマカロニの愛称で呼ばれた。映画では『股旅』、映画版『木枯し紋次郎』、『御用金』や映画版『子連れ狼』、『御用牙』などがあった。 しかし1970年代に入ると、徐々にそのブームは失速していった。マカロニ・ウェスタンは「既成のヒーロー像の反対を行く」というのが基本コンセプトであったため、『続・荒野の用心棒』のような強烈なインパクトのあるアンチヒーロー像を必要としたわけだが、その要求を満たすため様々な主人公が考え出された。棺桶を引きずったヒーロー、盲目のガンマン、聖職者のガンマンなどありとあらゆるヒーローが作り出されたが、あまりにも量産されてアイデアが枯渇してしまったということが原因の一つとしてあげられる。 1973年製作のトニーノ・ヴァレリ監督による『ミスター・ノーボディ』はこれ以降見るべき作品が生まれなかったという意味で「最後のマカロニ・ウェスタン」と一部では呼ばれている。 2005年には、全盛期に映画の撮影が行われたスペインの村がロケセットを西部村として観光化するも、それすら寂れていくという、マカロニ・ウェスタンの楽屋落ちのようなストーリーを描いた『マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾(英語版)』というスペイン映画が製作されている。
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