欧州自動車メーカーアプルーバル規格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 07:29 UTC 版)
「HTHS粘度」の記事における「欧州自動車メーカーアプルーバル規格」の解説
欧州ではドイツのアウトバーンなどでの高速運転をも想定しているため、アメリカや日本の標準的なエンジンオイルの規格であるAPI規格や、ILSAC規格とは異なる処方である。相対的にディーゼル車の比率が高いため、ガソリン/ディーゼル兼用のユニバーサルオイルの比率が高くなる。但し、DPF付きディーゼルエンジン向けである、ACEA C2/C3規格の低硫酸灰分、リン分、硫黄分オイル(Low SAPSオイル)や商用ディーゼル向けであるACEA E規格の一部を除き、ACEA規格ではAPIやILSACのように触媒・排ガスに悪影響を及ぼす燐・亜鉛・硫黄系添加剤の含有量は報告のみで数値による規制はない。しかしメーカーによってメーカーアプルーバルで規制値を設けている場合もある。また0W-20のような低粘度省燃費オイルは殆ど見られない。その反面ロングドレインと高負荷に対応すべく、精製度合いの低い鉱物油の使用を認めず、高度に精製された鉱油(一般的にはVHVIやグループ3基油と呼ばれるもの)が最低限要求され、その他PAOやXHVIなどの高品質基油をベースとしたオイルの指定が一般的に普及しており、HTHS粘度も高い数値を示す。 例としてACEA及び欧州自動車メーカーのロングライフ規格の認証を得るモービル1ESP(Emission System Protection)のデーターを示す(API規格は相当規格、ILSACの仕様には準じず)。 前述したように、欧州では過酷な使用の下での走行に備えるため、日米の様な×W-20といったオイルの低粘度化は進んでいない。また、添加剤の配合規制だけでなく、従来排気ガス中のHCの規制も緩かったため、積極的にエンジンオイルを消費(燃焼)させて、摺動部の摩耗を防ごうとするエンジンデザインを採用してきた。しかし、欧州でも高まる排ガスの浄化や省燃費の気運を受け、従来10W-40や15W-50といった高粘度なオイルがスタンダードな規格であったが、0W-30や5W-30といった低粘度オイルが主流になってきている。耐久性はトレードオフとして犠牲にできないため、耐熱耐・耐せん断に優れ、低蒸発性である化学合成油の使用に限定し、5W-30でありながらBMW LL04やMB Seet No.229.51、VW504.00などの規格はHTHS粘度を3.5mPa•s以上の規定を設けている(VW・AUDIは2002年に0W-30の粘度規定である503.00、スポーツ車用として一部0W-40の503.01規格の指定を始めたが、その後ロングドレインと直噴ターボ・TSIに対応するためVW504では5W-30に統一された。なおVW503.0×は規格廃止となりVW503.0×を認証していたオイルからも表記が消える事となった。503.00および503.01はどちらも504で代替可能である。なお504はDPF装着ディーゼル車に対応する507とセットとなっておりVW504/507表記となる。これによりVW・AUDIのほとんどの車両は一種類のエンジンオイルで済ませる事が可能となった)。 Mobil 1 ESP Formula 5W-30 (アプルーバル規格) BMW Longlife 04 MB-Approval 229.31/229.51 Volkswagen (Gasoline / Diesel) 504.00 / 507.00 Porsche C30 Chrysler MS-11106 Peugeot/Citroën Automobiles B71 2290E - Level 3・D- Level 3 AvtoVAZ Group "Luxe" AAE Standard STO 003-05, Group B6 (認証規格) ACEA C2/C3, A3/B3, A3/B4 ACEA (Meets Engine Test Requirements) A5/B5 API (Meets Engine Test Requirements) SL / SM API CF JASO DL-1-08 (性状) SAE粘度 5W-30 動粘度 40°C 72.8 ・100°C 12.1cSt 粘度指数 164 灰分 0.6 % HTHS粘度 3.58 mPa•s (150°C) 注目すべき点として5W-30にも関わらずHTHS粘度は3.58mPa•sを示し、10W-40のHTHS粘度の範疇に値する(SAE・APIの規定では#30のオイルのHTHS粘度規定値は2.9mPa•s以上) 。SAE の高温側の100℃下粘度では12.1cstで規格内の9.3 <12.5cstに収まっており、通常走行での粘性抵抗は高粘度オイルのように大きくはない。 比較のために日本で販売されているモービル1 5W-30 FPと同等であるUSA製モービル1の代表性状を示す。 USモービル1 5W-30 (性状) SAE粘度 5W-30 動粘度 40°C 63.1 ・100°C 11.1cSt 粘度指数 170 灰分 1.0 % HTHS粘度 3.13mPa•s (150°C) アメリカでは最新欧州規格に準じない5W-30粘度のロングライフモービル1 エクステンドパフォーマンスが併売されている。こちらは省燃費規格であるAPI EC・ILSAC GF-4の認証を得るため、HTHS粘度は3.2mPa•sで100℃動粘度も 11.2cStに収まっている。 Extended Performance 5W-30 (認証規格) ILSAC GF-4 API SM,SL,SJ,EC,CF SM,SL,SJ,EC,CF ACEA A1/B1,A5/B5 A3/B3,A3/B4 (性状) SAE粘度 5W-30 動粘度 40°C 64.4 ・100°C 11.2cSt 粘度指数 168 灰分 1.0 % HTHS粘度 3.2mPa•s (150°C)
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