機材の進歩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 18:11 UTC 版)
音色は枚挙に暇がないが、有名なものはビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」で知られる"Flute"、ローリング・ストーンズ「2000光年のかなたに」やキング・クリムゾン「クリムゾン・キングの宮殿」などでフィーチャーされた"3 Violins"(Fluteと並び、代表的な音色。メロトロンMkII、M400、チェンバリンで共用している唯一の音源だが、再生される楽器によりニュアンスは大きく異なる)、リック・ウェイクマンやジェネシスのトニー・バンクスが愛用した"8 Choir"(男女4人ずつの混声合唱。男女の声を分けた形でも提供された)や"Brass"などが挙げられる。メロトロンの為に録音された音は、それ自体も大きなノイズが含まれたり音程が正確でなかったりと不安定であったが、それが却って個性として評価されることになった。 隣り合う2つの音色はM300以外の機種ではミックスして使うことも可能。MkI/ IIでは5ポジションの音色ボタン(A・A+B・B・B+C・Cの5つ。リズムトラック用の左手側鍵盤のボタンは3つで、ミックスポジション無し)があり、M400などでは音色切り替えレヴァーを中間位置で止めることで行う。なお、ミックスされた音色は音量が多少下がる。 最も普及したM400に標準でセットされたテープはFlute/ 3 Violins/ 'Cello。このセットのまま使用する奏者も多かったが、好みの3音色を並べたテープセットも受注していた。例えばトニー・バンクスはM400導入後、コンサートではBrass/ 3Violins/ 8 Choirというセットを使用していた。なお、テープは全ての音程が一本のテープに収録され、音程ごとにパンチ穴で目安が付けられている。購入した後は自分か販売店でカットし、別途購入したテープフレームに取り付ける。また、楽音部分以外のメロトロンでは再生出来ない部分には弦楽器の弓を置いたり咳払いや談笑をしたりする音まで収録されている。 1970年に発表されたM-1以降のチェンバリン(Chamberlin)各機種はテープの巻き戻しにもモーターを使用しており、テープは常にリール(tape return roller)に巻き取られている。そのため、テープ巻き戻しの確実化と筐体の小型化が実現された。このM-1はステレオヘッドを装備し、8音色を使用可能。その他、少数生産ではあったもののデュアルマニュアルのM-2、デュアル×2段鍵盤のM-4、音源部分と鍵盤部分が分離されたRemoteというバリエーションも展開された。チェンバリン全モデルの生産は1981年に終了した。生産台数は、M-1が300台程度で、メロトロンMk Iの原型になったM600/660 Musicmasterが200台と多くないが、レコーディングで使用された例は多い。 テープ以外のメディアを用いたサンプル・プレイバック・キーボードには、光学式ディスクを用いる「オプティガン(OPTIGAN)」という楽器が挙げられる。これはマテル社が児童向けに開発したものだが、チャイルトン社による発展型の「タレントメーカー」を経てプロ用の「オーケストロン(Vako Orchestron)」が生産されるに至った。音色は光学式ディスク1枚につき1つずつ、トラックごとに各音程がループの形で記録されている。現在でも光学式ディスクは少数生産されている。 メロトロンの欠点を改良するために、デヴィッド・バイロという人物が8トラックテープを用いた「バイロトロン(Birotron)」を1974年に設計。リック・ウェイクマンが出資したほか、数々の著名ミュージシャンが予約したことで話題になった。しかし開発は遅れ、結局1977年に17台が試作されたのみ。一般市場には出回らなかった。37の鍵盤に対して19本の8トラックカセットをセット(カセット1本あたり鍵盤2つ分の音源を持つ)し、4つのループされた音色を選択可能。シンセサイザー同様のエンベロープ・ジェネレーターで音の立ち上がりや減衰を調節できる。現存しているのは5台ほど、演奏可能なものは2台のみと言われている。
※この「機材の進歩」の解説は、「メロトロン」の解説の一部です。
「機材の進歩」を含む「メロトロン」の記事については、「メロトロン」の概要を参照ください。
- 機材の進歩のページへのリンク