構造・飛行等の概略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 02:40 UTC 版)
「スペースシャトル」の記事における「構造・飛行等の概略」の解説
まずシャトルの構造および打ち上げ〜着陸の概略を説明する。 通常は5名から7名の飛行士が搭乗した。なお、最も初期の頃に行われた、STS-1からSTS-4の4回の試験飛行のように、機長と操縦士の2名だけでも飛行できた。 発射時のシャトルの構成は、おおまかに オレンジ色の外部燃料タンク (External Tank, ET) 2本の白色で細長い固体燃料補助ロケット (Solid Rocket Boosters, SRB) 宇宙飛行士と貨物を搭載する軌道船 (Orbiter Vehicle,OV) の三つの部分から構成されていた。なお、上記に加えて、STSのために開発された、PAMとIUSと呼ばれる人工衛星打上げ用の2種類の固体ロケットを用いれば、搭載物をさらに高い軌道に運ぶこともできた。なお、シャトルには全体でおよそ250万個もの部品が使われており、人間がこれまでに製造した中で最も複雑な機械であると言われている。(→#構造・メカニズム・諸元) シャトルは通常のロケットと同じように、発射台からは垂直に離陸する。その際の推力を生むのは2本のSRBおよび、(軌道船の後部に装着している)3基のメイン・エンジン (Space Shuttle Main Engine, SSME) であり、SSMEの推進剤(液体水素と液体酸素)は外部燃料タンクから供給される。上昇の手順はおおまかに、 SRBも含めてすべてのロケットが噴射される第一段階 SRBが役目を終えSSMEだけで推進する第二段階 のふたつに分かれていて、打上げからおよそ2分後に第二段階に移り、SRBは切り離され落下、パラシュートで海に着水し再使用のため船で回収される。機体(軌道船およびET)はその後も上昇を続け、軌道に到達するとSSMEが燃焼を停止し、ETも役目を終えて切り離される。切り離され自由落下を始めたET(巨大なオレンジ色のタンク)は通常は大気圏に再突入して空気抵抗と熱によって消滅する。ただし、様々な用途に使用することは、構想としてはあった。 軌道船はその後さらに軌道操縦システム (Orbital Maneuvering System, OMS) を噴射することでミッションの目標としている軌道へと向かう。軌道上での姿勢は、姿勢制御システム (Reaction Control System, RCS) を噴射することで制御する。 シャトルが従来の宇宙船とは際だって異なった特徴の一つに、軌道船の胴体部分のほとんどを占めるほどの大きさの貨物搭載室を備えていることと、そこに大きな観音開きのドアがついていることである。これによって、飛行士や宇宙ステーションの建設資材などを、地球周回低軌道や大気圏上層部、さらには熱圏などに運ぶことができた。例えば、ハッブル宇宙望遠鏡のような大きなものを搭載し軌道に投入することや故障した衛星などがあれば、その軌道へ向かい、貨物室に回収して地球に持ち帰ったりすることもできた。 任務が終了すると、軌道船はOMSを逆噴射して速度を落とし大気圏に再突入した。降下している間、シャトルは大気の様々な層を通過し、主に空気抵抗を用いて機体の速度を極超音速状態から減速させる。大気圏下層部に到達し着陸態勢に入るとグライダーのように滑空飛行し、フライ・バイ・ワイヤ方式の操縦系統で油圧によって動翼を制御した。着陸の際には、長い滑走路が必要とされた。シャトルの形態は、帰還時に極超音速飛行および旅客機のような低速飛行の双方をしなければならない、という二律背反する要求を満たすために作られた妥協の産物であり、その結果として軌道船は着陸寸前には、普通の航空機には見られないような急激な降下(高い降下率)を経験することになる。 (→#飛行手順の詳細)
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