棋士編入試験制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 10:03 UTC 版)
制度導入の経緯については「#アマチュア選手プロ編入問題」を参照 瀬川晶司のプロ編入をきっかけに、アマチュア選手が棋士になる道筋が模索された。2014年4月に「プロ編入試験」が制度化された。同試験は、2019年10月に「棋士編入試験」と名称が変更された。この制度を利用すれば、アマチュア選手や女流棋士が、奨励会を経ることなく棋士となることが可能である。ただし、奨励会未経験者の中から受験資格を得た者は未だ現れていない(後述)。下記は、2021年2月5日現在の規定による。受験料は50万円(消費税を含まず)である。 受験資格 アマチュアまたは女流棋士であって、棋士の公式戦にアマチュア枠や女流枠から出場し、以下のいずれかの基準を1つ満たすこと。加えて「四段以上の連盟正会員(=棋士)」の推薦を要する。 最も良いところから見て10勝以上、かつその間の勝率が6割5分以上の成績を収めること 以下の各棋戦のいずれか1つにおいて所定の成績を収めること(2021年2月より追加) (下表を参照) 対象となる公式棋戦0出場枠の有無0棋士編入試験 受験資格取得の要件 (必要な勝ち数の目安)タイトル棋戦竜王戦アマチュア枠 0女流枠0 ランキング戦 優勝 (6組の場合 6-7勝) 各公式棋戦を通じ、最も良いところから見て10勝以上、かつ、その間の勝率が6割5分以上の成績を収めること(例:10-5、12-6、13-7、15-8、17-9、など) 王位戦- 女流枠 挑戦者決定リーグ 入り (予選4-5勝) 王座戦- 女流枠 挑戦者決定トーナメント ベスト8 (予選7-8勝+本戦1勝) 棋王戦アマチュア枠 女流枠 挑戦者決定トーナメント ベスト8 (予選4-5勝+本戦2勝) 000叡王戦 (アマチュア枠) (女流枠) - 棋聖戦- 女流枠 決勝トーナメント ベスト8 (予選7勝+本戦1勝) 一般棋戦朝日杯アマチュア枠 女流枠 本戦トーナメント ベスト4 (予選5-6勝+本戦2勝) 銀河戦アマチュア枠 女流枠 決勝トーナメント ベスト4 (ブロック戦3勝以上+本戦2勝) NHK杯- 女流枠 本戦トーナメント ベスト4 (本戦4勝) 新人王戦アマチュア枠 女流枠 優勝 (5-6勝) YAMADA杯アマチュア枠 - - 加古川青流戦アマチュア枠 女流枠 - アマチュア選手の出場枠があるプロ公式棋戦は以下の8棋戦。 竜王戦・棋王戦・叡王戦 朝日杯将棋オープン戦・銀河戦・新人王戦・YAMADAチャレンジ杯・加古川青流戦 女流棋士の出場枠があるプロ公式棋戦は、YAMADAチャレンジ杯を除く上記7棋戦に以下の4棋戦を加えた11棋戦。 王位戦・王座戦・棋聖戦 および NHK杯 試験方法 受験希望者は、受験資格を満たした日から1か月以内に受験を申請しなければならない。試験の内容はプロ棋士との対局5局で、3勝すれば合格となる。試験官となるプロ棋士は、棋士番号の大きい順、すなわち申請受理時点より直近に棋士になった順で選ばれる。申請が受理された月の2か月後から1か月に1局ずつ指され、受験者が3勝または3敗した時点で終了し、以降の対局は行われない。 受験者が5対局の中で3勝すれば合格し、4月1日付もしくは10月1日付(いずれか近い日付)で棋士(フリークラスの四段)となる。 持時間は3時間。第1局は振り駒で先手番・後手番を決定し、第2局以降は1局ごとに受験者が手番を交代する。 棋士編入試験の受験資格を得た者受験資格者編入試験 結果(5番勝負)今泉健司 10勝4敗 3勝1敗 / 合格 稲葉聡 10勝4敗 (申請せず) 加來博洋 10勝4敗 (申請せず) 折田翔吾 10勝2敗 3勝1敗 / 合格 里見香奈 10勝4敗 制度化以前(ともに6番勝負)花村元司 - 4勝2敗 / 合格 瀬川晶司 17勝6敗 3勝2敗 / 合格 実施状況 これまでに棋士編入試験受験資格を得たのは今泉健司、稲葉聡、加來博洋、折田翔吾、里見香奈の5名である。全員が奨励会退会者であり、稲葉以外の4名(今泉、加來、折田、里見)、また特例扱いの瀬川についてはいずれも奨励会三段退会者である。 2014年9月、元奨励会三段の今泉健司が7月に竜王戦・朝日杯将棋オープン戦・銀河戦で良い所からみて10勝4敗の勝率7割1分4厘で条件を満たし、第一号として受験。12月8日に編入試験3勝を挙げ、通算3勝1敗で合格を果たした。翌2015年4月1日より、棋士となった。 2016年6月に稲葉聡と加來博洋が受験資格を満たしたが、権利を行使しなかった。 2019年8月に折田翔吾が銀河戦で良い所からみて10勝2敗の勝率8割3分3厘で受験資格を満たし、受験を表明した。2020年2月25日に編入試験3勝を挙げ、通算3勝1敗で合格を果たした。同年4月1日より、棋士となった。 2022年5月に女流棋士の里見香奈が第48期棋王戦で良い所からみて10勝4敗の勝率7割1分4厘で受験資格を満たした。女流棋士・女性が受験資格を得るのは史上初。 棋士編入する女流棋士の棋戦参加 上記の棋士編入試験に女流棋士が合格した場合、日本将棋連盟は次のように規定し、合格者は女流棋戦とプロ棋士公式棋戦の両方への出場が認められる。 女流棋士、女性奨励会員の棋戦参加について 女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、また女性奨励会員が四段の資格を得た場合の規定を下記の通り決定いたしました。 1.女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、女流棋戦、及びプロ棋士公式棋戦の両方に出場することが出来る。 2.奨励会に所属している女性が四段に昇段をした場合、女流棋士申請を行うことが出来る。ただし、申請期間は昇段日から2週間以内とする
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