旧駅舎の移転・復原問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:23 UTC 版)
旧南口駅舎(旧国立駅舎)は現存当時、原宿駅に次いで東京都内で2番目に古い木造建築駅舎であり、その美しさは、当駅が「関東の駅百選」に選出された理由ともなった。解体後も選出は取り消されていない。 だがその駅舎は三鷹駅 - 立川駅間の高架化工事で移転か撤去をする必要が発生した。国立市はJR東日本による鉄道遺産としての保存を希望したが、老朽化していることもあり、同社が拒否したことで、国立市による保存か撤去の選択を求め、同事業の一環としてその費用で保存する要望も事業主体である東京都に拒否された。 これに対して国立市は、独自費用で駅舎を曳き家により工事範囲から移転して仮保存を行い、立体化工事終了後に再度曳き家により元の場所で保存する計画を立てたが、費用負担の問題で議会と対立し、予算案が正式に否決されるに至った。 2006年10月8日に旧駅舎の使用を終了。国立市はなおも保存方法を探っていたが、工事のタイムリミットに近付いたため、妥協案として解体・保存し、立体化工事終了後に復原となった。防火などの法的問題で一度解体すると現地での復原ができなくなるため、同年10月10日から12月にかけて解体作業が行われ、主要部材や駅名の表札は立体化事業完了時に再建可能なように国立市の倉庫内に保管され、10月26日に文化財の指定を行い、法がかからないようにした(それ以降の10年間程度は前記の倉庫内の一般公開が年に一回程度実施されていた)。 高架化工事終了後、国立市では元の場所か、その付近に復原を計画したが、南北通過道路と駅前広場の関係で通過道路整備の状況によっては南北通過車両を現状通り駅前広場に流さざるを得ず、市が保存用地を取得か借用をする必要があり、詳細はまとまっていなかったが、2014年2月3日から国立市のふるさと納税制度の寄付金の使いみちに「旧駅舎再築のために」が加わり、再築費用の寄付を募った。 2016年11月14日、国立市は国立駅の再築に向けてJR東日本と土地売買契約における覚書を締結し、2020年度末の完成を目指し、開業当時の形態で再築する予定で、建物は駅舎ではなく、情報発信機能(観光案内所・展示スペース)や情報交流機能(多目的スペース)として整備した(ただしスペースの関係上東側数メートルの部分は復原されなかった)。 旧三角屋根駅舎の高さが12 mで、その両隣にJR東日本が地上4階建てビル(高さ20 m)各1棟の建設を計画していることが2017年8月に明らかとなった。JR東日本は大学通りからの景観に配慮して高層ビルでなく低いビルとしたが、現状の計画に対しても地元の市民や商業者からは「復原駅舎が埋没してしまう」との再考を求める意見が出ていた。そこで、2018年11月から、国立市とJR東日本でお互いの所有地を交換する検討を開始し、2020年3月にJR東日本の所有する旧駅舎両側の土地と国立市が所有する南口の西側にある駐車場及び駐輪場の土地を交換する方針を確認した。2021年3月に、JR東日本と国立市との間で用地交換の合意が成立し、JR東日本が計画していた旧駅舎の両隣のビルは建設されず、広場として活用されることになっている。 復原された南口旧駅舎(2021年4月10日) 南口旧駅舎(2006年10月10日) 南口遠景(2006年10月8日) 夜の旧南口駅舎(2002年12月24日) 南口ロータリーの東側から見た再建中の旧駅舎(2019年9月28日) 南口ロータリーの西側から見た再建中の旧駅舎(2019年9月28日) 高架駅舎ホームから見た再建中の旧駅舎(2019年9月28日)
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