日本からの批判と抗議
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/18 21:43 UTC 版)
「カナール・アンシェネ」の記事における「日本からの批判と抗議」の解説
本紙の特徴である風刺に対しては、批判と抗議も存在する。 2013年に本紙が、数日前に決定した2020年の東京五輪と福島第一原子力発電所事故をからめ、脚や腕が3本ある力士の横で「すばらしい!フクシマのおかげで相撲が五輪に採用されました」とレポートする人物の風刺漫画を掲載したことに対し、日本の菅義偉官房長官は遺憾の意を述べ、大使館を通じて抗議する意向を示した。これに対して編集長のルイ=マリー・オローは、「責任をもってこの風刺画を掲載した。いささかも良心に反するところはない」、「ユーモアを使うのは犠牲者の感情を害するためではない。フランスでは悲惨な出来事をユーモアで表現するが、どうも日本ではそうではないらしい・・・在仏日本大使館が抗議したのは、福島ではすべて上手く行っていると言いたいからだ」、「日本は東京五輪を前にして福島について「良いイメージ」を与えたがっているのだ。腹を立てるなら、日本政府の危機管理の仕方に腹を立てるべきだ」、「われわれにではなく東京電力に怒りを向けるべきであり、謝罪するつもりはない」と抗議した。 ただし、翻訳家の野田謙介によればこの漫画は力士の横にいるネルソン・モンフォール (Nelson Monfort) をモデルにした人物を笑いものにすることで、原発事故が起きておきながらオリンピックの開催に浮かれている人々を風刺しているという。抗議などの事態に発展したのは、容姿と発言の出だしが英語(Marvellous)であることから、本来の読者(フランス人)には風刺の対象(ネルソン・モンフォール)が分かるが、日本では知られていない人物のため、理解できる力士のみがクローズアップされたためであるという。また野田はこの作品は風刺としては表現が安易であり、本紙も「あまり真面目な新聞ではない」と評している。 また、『フィガロ』紙東京特派員のレジス・アルノーは、「仏紙の風刺画は被災者を傷つけたか」と題する記事で、「風刺は不可侵の権利である。事実、カナール・アンシェネはフランスで最も信頼され、最も販売部数の多い週刊紙だ。同紙の歴史は第一次大戦中、前線からの悪いニュースを検閲する政府への抗議から始まった。以来、調査報道と過激な漫画で無数の腐敗を暴いてきた」と説明し、「福島原発の事故は漫画が引き起こしたものではない。自然災害と、今日まで続く政府の対応の悪さだ。安倍晋三首相が福島の状況は「コントロールされている」と発言してから間もなく、東京電力は「コントロールされていない」とコメントした。このような軽々しい言動をもとに、私たちジャーナリストはどんな記事を書けばいいというのか?」と抗議した。さらに、『カナール・アンシェネ』次号に掲載された次の文章を引用している。 本誌の読者50万人のうち日本人読者は51人だ。われわれが誰の感情を害したというのか? あの風刺画の標的は誰だったか? 原発事故の犠牲者か、それとも放射能汚染を引き起こした企業と政府か。赤十字が、飢餓で死にかけた黒人の子供の写真を発表するとき、それは子供をさらしものにするためか。それとも子供の悲惨な状況に対する世間の無関心を訴えるためか。 この風刺画の作者カビュは『シャルリー・エブド』にも風刺画を掲載していたが、2015年1月7日のシャルリー・エブド襲撃事件でイスラム過激派に殺害された。
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