改造による問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 12:04 UTC 版)
「国鉄キハ58系気動車」の記事における「改造による問題点」の解説
4VK電源装置の開発で本系列の冷房化は一定の進展をみたが問題点も残った。 全車両を冷房化するには3両に1両の割合で4VK電源装置を搭載する1エンジン車を連結する必要があるが、車両側に冷房装置が搭載されていても編成組成によっては冷房装置を稼動できない場合もある。 編成A キハ58冷房車(A) キロ282000番台 キハ58非冷房車 キハ58冷房車(B) 4VK(A)から給電 4VK(A) 編成Aでは4両中3両が冷房車なので冷房電源の容量は確保できるが、中間に挟まれた非冷房車には冷房装置制御ならびに電源供給用のジャンパ連結器が装備されていないためキハ58冷房車(B)の冷房は稼動不可となる。 編成A 編成B キハ58冷房車(A) キロ282000番台 キハ58非冷房車 キハ58冷房車(B) + キハ58冷房車(C) キロ282000番台 キハ58冷房車(D) キハ282000番台 キハ58冷房車(E) 4VK(A)から給電 4VK(B)から給電 4VK(C)から給電 4VK(A) 4VK(B) 4VK(C) 上述編成Aに4VK発電装置搭載車を2両組込んだ全車冷房編成B(5両編成)を併結した場合、1両分の冷房電源給電と制御が編成Bからできるため編成Aのキハ58冷房車(B)の冷房稼動が可能となる。つまり、編成の向きに関わらず4VK発電装置搭載車を含めた連続する冷房車3両まででひとつの電源ユニットを構成する。 編成C キハ58冷房車(A) キロ28 キハ58冷房車(B) キハ65冷房車 4VK(A)から給電 4DQ自車給電 4VK(A)から給電 4DQ 4VK(A) ただしキロ28形自車給電用4DQ搭載車は、普通車の冷房改造進展に伴い制御用ならびに冷房電源供給用ジャンパ連結器が追加されたため上述編成Cのように同車を編成中間に組成しても飛び越しての冷房制御ならびに給電が可能となる。 発電セット搭載と編成出力の確保は常にトレードオフとならざるを得ないため、冷房化後の本系列急行列車には、前身となったキハ55系準急列車に比し編成内の2エンジン車比率が下がり、速度低下を余儀なくされる例までも生じた。 本系列に搭載されていたDMH17H形ディーゼル機関は、信頼性・耐久性・静粛性の面では一応の水準に達していたが、その基本は1940年代にさかのぼる旧式設計のため、出力は180 PSと重量に対して非力であり、2基搭載しても性能は電車に及ばない。しかも冷房化後はキハ28とキハ58各1両をペアにする組み合わせが主流となり、1両あたりの出力は275 PSと勾配線区では十分とは言えないものであった。 問題の根本的解決に新開発のDML30HS系500 PS級エンジンと4VK電源装置を搭載するキハ65形が開発・製造された。 しかし、キハ65形と4VK発電装置を搭載するキロ28形の最終増備車は新製両数が少なく、中部地方以西の幹線およびローカル線への投入が優先されたこともあり、気動車急行列車の冷房化と慢性的な出力不足問題は完全に解決したとは言いがたい。 普通列車用も含めて多くの車両が冷房化された1990年代以降でも、急勾配路線での運用では以下の理由で冷房化できない事情も介在した。 一例として盛岡車両センター所属のキハ58は、ジョイフルトレイン「Kenji」と訓練車キヤ28 1とユニットを組むキハ58 75を除き非冷房車のみの配置とされた。これは運用区間に含まれる花輪線が豪雪地帯かつ松尾八幡平 - 安比高原間に最大33.3 ‰の急勾配区間が存在するためで、この条件での2両編成は1両を1エンジン車としても出力不足と駆動軸数不足で登坂時に空転をきたしかねないため、2エンジン車のみで編成せざるを得ず、冷房電源確保ができないばかりか死重にしかならない冷房装置を搭載して運用する意義も乏しい。また、山田線はやませの影響を受けやすい気候から、非冷房車が長期にわたって残存する結果となった。
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