抄紙工程用薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/25 19:11 UTC 版)
歩留向上剤 歩留剤(ぶどまりざい。retention aid)ともいい、抄紙過程において、ワイヤー(抄き網)の上に残るパルプ繊維や鉱物系填料の割合(歩留まり)を向上させるために添加される薬品。主に硫酸アルミニウム、ポリアクリルアミドなどのポリマー類、デンプン類が用いられるが、カルボキシメチルセルロース(CMC)や無機のコロイダルシリカを加える方法もある。硫酸アルミニウムは安価で効果が高いが、紙中に残存する硫酸イオンによって紙の酸性度が高まり、長期保存時にはぼろぼろに劣化するなどの問題が生じることがあるため、用途によっては使用が避けられる。 濾水向上剤 濾水剤(ろすいざい。drainage aid)ともいい、抄紙工程において水切れを良くし、乾燥性を上げるために添加される薬品。ポリエチレンイミンやポリアクリルアミド(PAM)、カチオン化デンプンなどが用いられる。 紙力増強剤 紙力増強剤(strengthening agent)は、製品の紙に強度をもたせるために添加される。内添方式(内添法。internal)と表面方式(表面法。surface)とがあり、内添のものは湿潤紙力増強剤(wet strengthening agent)と乾燥紙力増強剤(dry strengthening agent)とに分けられる。湿潤紙力増強剤は、紙ナプキン、ティッシュペーパー、耐水段ボールなどが、濡れて水分を帯びた状態での強度を持たせるもので、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)、ポリビニルアミン(PVAm)などが用いられる。乾燥紙力増強剤は、通常の乾いた状態での紙の強度を上げるもので、カチオン化デンプンやカチオン性や両性のポリアクリルアミド系コポリマーの使用が一般的で、主に板紙、段ボール原紙(ライナー原紙、中芯原紙)などに用いる。表面方式は、印刷を施す白板紙などに用いることが多く、紙の表面に変性でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)などを塗布またはスプレーで付着させる。多層を抄き合わせて厚みをもたせる板紙では、層と層の間にスプレーする場合もある。 粘剤 機械抄き和紙にはパルプ繊維を水中に分散させた状態を保ち、重ね合わせた紙の接着を防ぐ効果のあるトロロアオイなどの天然「ねり」(mucilage)に代わる合成粘剤(合成ねり)としてポリアクリルアミドなどが用いられる。 サイズ剤 サイズ(sizing agent、size)ともいい、紙に対してインクなど液体の浸透性を抑え、裏移りや滲みを防ぎ、ある程度の耐水性を与える目的で加えられる。疎水性基と親水性基を持ち、疎水性基を外側に向けて紙に疎水性をもたせる。内添方式と表面方式とがあり、いずれにも天然物と合成物とがあり、酸性紙用、中性紙用など使用条件が異なるものが製造されている。主なものとして、ロジン石鹸、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ポリビニルアルコール(PVA)などが用いられる。表面サイズ剤には酸化でんぷん、スチレン・アクリル共重合体(コポリマー)、スチレン・メタクリル共重合体などを用い、ゲートロールコーターや液膜転写によって紙に塗布する。礬水はこれの一種である。 かさ高剤 嵩高剤(かさだかざい。bulking agent)は印刷用紙の密度を減らし、容積を増やす目的で加えられる薬剤。パルプの減量、軽量化に対応しながら、不透明性や印刷性能を保つために、脂肪酸エステルエマルジョンなどの界面活性剤で、繊維表面を一部疏水化させることで効果を与え、濾水性も上げるが、一般的にサイズ剤の効果を落とす副作用がある。 填料 フィラー(filler)ともいい、紙に不透明性をもたせて裏抜けを防いだり、白色度、平滑性などをもたせるために配合または塗布される鉱物性の粉末。フィラーとも呼ばれる。主にタルク、カオリン(白土)、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどが使われるが、近年では非晶性シリカ(ホワイトカーボン)の使用も増えている。また、有機系填料として尿素樹脂も使用されている。無機填料を主体にした「石の紙」(stone paper)を作る方法も実用化されている。
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