批准までの日本の動向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/02 20:15 UTC 版)
「日本における国際的な子の連れ去り」の記事における「批准までの日本の動向」の解説
一橋大学で国際民事法を専門とする横山潤氏は、2006年に東京のカナダ大使館で開催された児どもの拉致に関する共同シンポジウムにおいて「1980年に条約が発効した際には日本は低所得国であり、ハーグ条約に加わる必要はなかったが、現時点では国際結婚の数も増加し、状況は同じではない。外務省広報担当によれば、大臣は条約に反対しておらず、「現在、日本国民への支援は十分ではない」と述べている。 2008年、英字紙Japan Todayは、2010年までに日本が条約締約国になると報告した が、報告は後に不正確であることが判明した。2009年の政権交代後、民主党の鳩山由紀夫首相はハーグ条約の批准と執行を支持し、 条約の批准が離婚後の父親の面会交流に関する根本的な制度変更につながり、外国人の父親だけでなく、日本人の父親にも影響が及ぶ と述べていたが、鳩山氏は、条約変更とそれに伴う民法改正変更が実施される前に辞任した。 2009年5月、米国大使館で開催された共同シンポジウムにおいて、カナダ、フランス、英国、米国の大使館関係者が、日本のハーグ条約署名を求める共同声明を発表した。クリストファー・サボイアくん事件以降、2009年10月にはオーストラリア、イタリア、ニュージーランド、スペインからも追加の支持声明があり 、岡田外務大臣(当時)が、日本の署名について検討中と述べると同時に、未解決の問題には取り組むが、世論を考慮する必要もあると、国内世論反発の可能性について言及した。 日本人の親による子の拉致事件に取り組んできたジェレミー・モーリー弁護士によると、日本の家族法はハーグ条約の各条項と整合性がなく、日本が署名するためには法律の抜本的な改正や新法導入が必要である。ハン・バン・ルーン国際民事条約事務局長は、日本の民法は、両親間の合意によって決定されない場合、子の最善の利益に基づいて問題を解決することが強調されているが、家庭裁判所の判決に強い強制力はなく、遵守するかどうかは本質的に両親の自主性に任されていて、両親の合意がなければ判決を下すことも極めて困難であると述べている。ハーグ国際私法会議・判決プロジェクト研究会委員及び特別委員会において政府代表をつとめた東北大学の西谷裕子准教授は「日本がハーグ条約に署名しない真の理由は、同国に強制的な仕組みが存在しないためであり、条約への署名は、これらの欠陥を露呈させることになるだろうと述べている。同時期、外務省関係者は、「民事には干渉しない」と述べている。 日本の家事関連法を変更し条約署名の前提条件を揃えるには、少なくとも1年はかかるだろうと言われていた。2011年には法案が早期導入される可能性があり、条約が要求する効果的な執行措置を実施するための障壁となる現行法の課題点について、行政機関と司法当局からの提示を受け、日本政府は最終的に、条約批准を検討する副大臣級の作業部会を設立し、2014年に、正式に日本はハーグ条約の締約国となった。以降、条約は150以上の事件の解決に大きな影響を与えている。
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