性的暴行被害の告白と失踪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 18:58 UTC 版)
2021年11月2日、彭帥は中国の元副首相・政治局常務委員の張高麗から性的関係を強要されたと微博で告白した。しかし、中国のネット環境は厳しい統制下にあるため、中国共産党の上層部に初めて波及した#MeToo運動は検閲対象となり、ネット上から関連情報を含めて全て削除された。 その後、彭帥は消息不明となった。中国政府は、政府を批判する個人や人権活動家を拘束・拷問しており、強要した自白を公開することもある。一例として、ジャーナリストでMeToo活動家であった黄雪琴(英語版)を拘束したことが挙げられる。そのため、クリス・エバートがSNS上で#WhereIsPengShuai(彭帥はどこだ)というハッシュタグを使い情報提供を呼びかけたほか、11月14日には女子テニス協会(WTA)も沈黙を破り、スティーブ・サイモンCEOが深い懸念を示し、徹底的かつ公正、透明な調査を求めた。 2021年11月21日、国際オリンピック委員会は、「トーマス・バッハ会長が彭帥と30分間にわたりテレビ電話で通話し、無事を確認した」と発表し、同日には環球時報の編集長によって11月21日および20日のものとされる彭帥の動画がツイッターに投稿された(動画の中では、性的暴行については触れられなかった)。バッハは12月にも彼女と2度目のテレビ電話を行ったとした。しかし、バッハは彼女と面識がなく、また一連の通話がどのように行われたのかも説明がなかったため、別人と通話したのではないかと疑われた(バッハは別人説を否定)。12月9日、バッハは「彼女は非常に不安定な状況にある」と態度を一転させた。 2021年12月1日、サイモンは「彭選手の居場所は分かったが、彼女が自由で安全で、検閲や強制、脅迫を受けていないのかどうか重大な疑問を抱いている」と表明し、公正な調査を改めて求めるとともに、「2022年に中国で大会を開催した場合、選手やスタッフ全員が直面しうるリスクを大いに懸念している」として中国でのWTAの大会を中止すると発表した。 2021年12月19日、中国共産党の機関紙人民日報傘下の環球時報記者は、彭帥がスポーツ選手らと談笑する動画をツイッターに公開した。この動画は国際スキー連盟(FIS)クロスカントリースキー上海大会会場で撮影されたという。新華社によると、この大会は12月18日に開催された。また、12月19日、彭帥はシンガポール紙聯合早報の取材に対し「誰かが私に性的暴行を加えたと言ったり書いたりしたことはない」と強調し、自身は自由だと訴えた。微博での投稿については「プライバシーの問題」だとして、詳しくは語らなかった。消息不明になって以降に外国メディアの取材に応じるのは初とみられる。 こうした報道に対し、懐疑的な姿勢を表明しているマスメディアも多い。例えば朝日新聞社は「どのような状況で取材に応じたのかは不明」、日経新聞社やFNNは「発言は中国政府の主張に沿った内容で、本人の意思かどうかは不明」などとしている。その上で、日経新聞社や時事通信社は、中国政府が2022年2月の北京冬季五輪への影響を抑えるために、「無事」を演出することで問題の早期幕引きを図っている可能性を指摘している。 2022年2月、フランスのメディアによるインタビューで性的暴行を改めて否定した上、現役引退を表明した。
※この「性的暴行被害の告白と失踪」の解説は、「彭帥」の解説の一部です。
「性的暴行被害の告白と失踪」を含む「彭帥」の記事については、「彭帥」の概要を参照ください。
- 性的暴行被害の告白と失踪のページへのリンク