密室
★1.近代の推理小説では、人間の侵入不可能な密室の中で、殺人が行なわれる。
『まだらの紐』(ドイル) 結婚を間近にひかえた娘ジュリアは、ある夜、鍵のかかった密室で変死した。それは義父ロイロット博士が、隣室の換気穴から毒蛇をジュリアの部屋に送り込み、彼女を噛ませたのだった。ジュリアが結婚すればロイロットは財産を手放さねばならず、それを防ぐための犯行だった→〔蛇退治〕3。
『モルグ街の殺人』(ポオ) パリ、モルグ街の、4階の錠のおりた部屋で、母と娘が惨殺された。それは、オラン・ウータンが避雷針を伝って入りこみ、2人を殺したのだった。
★2.被害者が一人で部屋にこもって鍵をかけ、その後に倒れる。「出入り不可能な密室に、被害者だけがいて犯人の姿がない」、という状況ができ上がる。
『黄色い部屋の謎』(ルルー) 深夜、密室から「人殺し」という悲鳴が聞こえ、血の海の中に女性が倒れていた。犯人の姿はない。実は、彼女は夕刻に凶漢に襲われかけ、その後、施錠し就寝してから悪夢にうなされて悲鳴をあげ、大理石のテーブルに強く頭をぶつけ、失神したのだった。
『三つの棺』(カー) グリモー教授は敵からの銃弾を受けたが、傷は浅いように見えた。グリモーは自宅まで歩き、部屋に中から鍵をかけて、室内にいろいろな細工をした。「自室にいる時に銃撃されて負傷した」と皆に思わせる必要が、彼にはあったのである。しかし動き回ったために内臓の傷が裂け、グリモーはそのまま絶命した。
★3.次の物語は、密室から死体が消えるという展開で、近代の推理小説のような印象を受ける。
『今昔物語集』巻15-20 常に『阿弥陀経』を読誦していた薬蓮は、「明日、往生する」と2人の子に告げて堂に入り、「午の刻になるまで戸を開けるな」と禁じた。子供たちは泣きながらも、一晩中、堂のそばを離れなかった。暁頃に堂内から美しい音楽が聞こえた。午の刻になって戸を開けると、薬蓮の死体は、なくなっていた。彼が所持していた『阿弥陀経』もなかった。
『三宝絵詞』中-1 聖徳太子が夢殿に7日7夜こもった。8日目に出て来ると、机の上に1巻の経があった。これは、彼が前生で唐の衡山にいた時、持っていた経である。聖徳太子は「魂を衡山へ送り、経を取って来た」と語った。衡山の僧たちは、聖徳太子が青龍の車に乗り、5百人を従えて空を飛んで来て、経を取って行くのを見た〔*『今昔物語集』巻11-1の類話では、大隋の衡山〕。
*横たわるオーディンの肉体から魂が抜け出て、瞬時に遠方の国へ行く→〔魂〕9bの『ユングリンガ・サガ』。
『私は霊界を見て来た』(スウェーデンボルグ)第1章の2 「私(スウェーデンボルグ)」は、他人の立ち入りを禁じて部屋にこもり、2~3日あるいは10日間ほども食事をとらずにいることがあった。その間に「私」は霊界を訪れ、多くの霊たちと交流した→〔体外離脱〕1。
★4c.スウェーデンボルグを読む人。
『こころ』(夏目漱石)下「先生と遺書」27 「先生」は、下宿の奥さんやお嬢さんのことを、Kがどう見ているか知りたかった。しかしKは、2人の女に関してよりも、専攻の学科の方に多くの注意を払っているようだった。彼は、シュエデンボルグ(=スウェーデンボルグ)がどうだとかこうだとか云って、「先生」を驚かせた。
消えた代議士の娘(日本の現代伝説『ピアスの白い糸』) ある有名代議士の娘さんが、パリのブティックに行った。試着室に入ると鏡が回転して、娘さんはどこかへ消えてしまった。秘密裡に調査したところ、娘さんは香港の売春宿で、手足を切られて売春婦になっていた〔*手足を切られて見世物小屋に出され、『日本だるま』という看板がかかっていた、という話もある〕。
*小さな部屋での怪事→〔部屋〕6の『遠野物語』(柳田国男)14。
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