宗教、伝承と文化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 15:36 UTC 版)
鳥類は、伝承、宗教、そして大衆文化において突出した、多様な役割を演じている。宗教において、鳥類は神の使いあるいは司祭や指導者として見られることもある。たとえばマケマケ信仰では、イースター島の鳥人(タンガタ・マヌ)が首長としての役目、また2羽のワタリガラスであるフギンとムニンの場合には、かれらは北欧の神オーディンの耳に情報をささやく。古代イタリアのいくつかの文明、特にエトルリアやローマの宗教において、司祭は占い(鳥卜、augury)に従事し、あるいは「吉兆」"auspicious" という単語の由来となった「鳥を観察する人、予言者」 "auspex" (アウグル、augur、鳥卜官)が、事象を予言するために鳥の活動を観察しながら、鳥たちの言葉を通訳した。鳥類はまた、ヨナ(ヘブライ語: יוֹנָה、鳩〈はと〉)が、伝統的にハト類を連想させる恐怖、服従、哀悼、そして美を形象化するように、宗教的象徴(英語版)として見られることもある。鳥類は、インドのドラヴィダ人によって母なる大地のように考えられているインドクジャクの場合のように、かれら自身が神格化扱いされることもある。一部にはまた、伝説の鳥ロックや、マオリの伝説的な鳥ポウアカイ (Pouākai) など、人をさらうことができるほど巨大な鳥として、怪物と考えられてきた鳥もある。 鳥類は、先史時代より文化や芸術の主題に取り上げられており、それらは早期の洞窟壁画にも描かれている。のちに鳥類は、ムガル帝国やペルシアの皇帝の孔雀の玉座に見られるように、宗教且つ象徴的デザインのなかで使われるようになった。鳥類に対する科学的関心の到来によって、たくさんの鳥類の絵画が書籍のために委託された。これらの鳥類画家のなかで最も有名なのがジョン・ジェームズ・オーデュボンであった。北アメリカの鳥類を描いた『アメリカの鳥類』 The Birds of America (1827–1839) はヨーロッパで商業的大成功を収め、のちに彼の名は、全米オーデュボン協会 (National Audubon Society) に引継がれている。鳥類はまた、詩文においても重要な象徴である。たとえばホメーロスはその作品『オデュッセイア』にサヨナキドリ(ナイチンゲール)を取り入れており、カトゥルスは作品『Catullus 2』のなかで、スズメをエロティックな象徴として扱っている。サミュエル・テイラー・コールリッジの『老水夫行』 The Rime of the Ancient Mariner では、アホウドリと水夫との関係が中心的テーマであり、ここからアホウドリが「重荷」を意味する隠喩表現 'Albatross' へと繋がった。そのほか鳥類に由来する英語の隠喩には、たとえばハゲタカファンド (vulture fund) やハゲタカ投資家 (vulture investor) などがあり、ハゲワシ類の屍肉食から来た表現である。 さまざまな種の鳥類に対する認識は、文化によってしばしば異なる。フクロウ類は、アフリカの一部では不運、ウイッチクラフト(魔女術)、そして死と結びつけられているが、ヨーロッパでは広く賢者とも見なされている。ヤツガシラは、古代エジプトでは神聖視されており、ペルシアでは美徳の象徴とされたが、一方ヨーロッパでは広く泥棒であるとされ、スカンディナヴィアでは戦争の先駆けと考えられた。
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