地域対立に基づく投票行動の再燃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 15:08 UTC 版)
「第18代総選挙 (大韓民国)」の記事における「地域対立に基づく投票行動の再燃」の解説
4年前の総選挙では、盧武鉉大統領の弾劾訴追の是非が大きな争点となったこともあって地域によって政党支持が極端に偏る現象はあまり目立たなかった。しかし、今回は、争点や盛り上がりに欠けた選挙戦となったことも影響してか、慶尚道が支持基盤のハンナラ党・親朴連帯、全羅道が支持基盤の民主党、忠清道が支持基盤の先進党、各地域における政党支持が全国平均より大きく偏る結果となり、韓国政治に大きな影響を与えている地域感情に基づいた投票行動が再燃した結果となった。なお、全羅道におけるハンナラ党の比例代表での得票数及び得票率は前回の総選挙時よりは若干だが増えた。反対に民主党は、前回のウリ党と新千年民主党それぞれの得票率を合計した分より、得票率をやや減らしている。 首都圏(ソウル・仁川・京畿道) 前回の総選挙でウリ党が過半数を制したソウル特別市(48選挙区)では、ハンナラ党が40選挙区で勝利、全体の8割以上を占め圧勝した。これに対して、民主党は党勢が強いとされた漢江北部の江北地域でも軒並みハンナラ党に議席を奪われ、選挙区を鞍替えして立候補した党代表の孫鶴圭や前大統領候補の鄭東泳も落選するなど7選挙区での勝利にとどまり壊滅的な敗北を喫した。ハンナラ党は仁川や京畿道でも民主党を制し、首都圏(111議席)全体の7割以上を占める81名が当選、地域区で当選した131名の6割以上がソウルとその首都圏から選出された当選者で占められることになり、慶尚道選出が多数を占めた前回の選挙結果とは全く反対の状態となった。この他に、創造韓国党がソウルで1名、親朴連帯が京畿道で1名、無所属が仁川と京畿道で1名ずつ当選した。 個別の選挙区では、ソウル市中心部の鍾路選挙区から立候補したハンナラ党の朴辰候補が、民主党代表の孫鶴圭を僅差で破って当選を果たした。江南地域の銅雀乙選挙区では蔚山市から鞍替えしたハンナラ党の鄭夢準と、全羅北道全州市から鞍替えした民主新党の前大統領候補で民主党の鄭東泳が激しく争ったが、鄭夢準が激戦を制した。ソウル市北西部の恩平乙選挙区では、創造韓国党代表の文国現が、ハンナラ党の有力者で李明博大統領側近の李在五を破って初当選を果たした。前回総選挙で、盧武鉉大統領への弾劾訴追に対する逆風で苦杯をなめた広津乙選挙区の秋美愛(民主党)は、ハンナラ党候補を破って返り咲きを果たした。 大田・忠清道 大田と忠清道が地盤である李会昌総裁率いる先進党と民主党が激しい接戦を展開したが、先進党が大田と忠清南道で強さを発揮、李会昌が洪城・礼山選挙区で当選したのを始め、14選挙区で勝利、第一党になった。民主党は内陸部の忠清北道の8選挙区中6選挙区、大田と忠南の各1選挙区で勝利し、忠清道における第2党の座を確保した。このように、忠清道では先進党と民主党が忠南と忠北で第一党を分け合う形となったのに対し、ハンナラ党は大田と南道で全敗、忠北でも1議席に留まり、前回選挙と同様に振るわなかった。旧・民主党前大統領候補で民主党の公薦を得られなかった李仁済は無所属で当選した。 嶺南(釜山・大邱・慶尚道) 嶺南地方(釜山・大邱、慶尚北道・慶尚南道)はハンナラ党の前身である民主自由党・新韓国党から続く保守系政党の伝統的な支持基盤で、2000年は65議席中64議席、2004年は68議席中60議席と圧倒的な強さを誇り、ハンナラ党の地域区選出議員の半分を超えていた。しかし今回は、党公認を得ることが出来なかった朴槿恵元代表支持グループが新党の親朴連帯や無所属で出馬、大邱や慶北で多数が当選したため、前回よりも20名近くも減らす46名に留まった。一方、全羅道を強固な地盤とする民主党は、前回ウリ党で当選した現職2名が釜山市沙下区(乙選挙区)と慶尚南道金海市(乙選挙区)で再選を果たし、嶺南地域における民主党の足場を確保したが、これ以外の候補は軒並み劣勢を強いられた。民労党は、前回慶尚南道昌原市で当選した前大統領候補の権永吉が議席を守った他に、前回比例区で当選し、泗川市の選挙区に鞍替えした農民運動出身の議員である姜基甲が、ハンナラ党の実力者李方鎬事務総長を、接戦の末に破って二度目の当選を果たした。 親朴連帯は朴槿恵の地元で選挙区がある大邱で3議席、慶北と釜山で1議席ずつを確保した他、ハンナラ党の公認を得られなかった候補が中心の無所属候補が慶北と釜山で5議席ずつ、蔚山と大邱及び慶南で1議席ずつ、あわせて13議席を確保し、ハンナラ党に次ぐ第2勢力となった。ただ親朴連帯と無所属候補はハンナラ党への復党の意思を明確に示しているため、これらも含めたハンナラ党系の議席数は64議席と、嶺南地方で圧倒的多数を占めている事実は変わりがないとも言える。 湖南(光州・全羅道) 平和民主党の潮流を引き継ぐ民主党系政党の絶対的な支持地盤である光州と全羅道では、民主党が31選挙区中、25選挙区で勝利したが、民主党の公認から漏れた候補者が相次いで無所属で出馬し、金大中元大統領の出身地である木浦市で朴智元が民主党候補を破って当選するなど、光州市で1議席、全羅北道で2議席、全羅南道で3名、合わせて6名が当選した。嶺南地域を支持基盤とするハンナラ党は今回、全羅道の31選挙区全てに候補者を擁立したが、軒並み劣勢で、当選者を出すことはできなかった。 江原道・済州特別自治道 北朝鮮に接している江原道では保守勢力が優勢で、2000年と2004年の総選挙でもハンナラ党が第一党になったが、今回、ハンナラ党の公認から漏れた無所属候補が健闘し3名が当選、同じ3名が当選したハンナラ党と並んだ(民主党は2名が当選)。済州特別自治道では、前回選挙においてウリ党で当選した現職3名が、ウリ党が主体となって結成された民主党から出馬して再選を果たした。
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