同性の親子の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 13:56 UTC 版)
同性の親子の近親姦の場合は、インセスト・タブーに加え同性愛のタブーも加わるため非常に見えにくくなっている。父親と息子の場合の家族モデルは父親と娘の場合とよく似ている場合が多いが、こういった場合は父性的なものすなわち権力的なものに対する反抗が起こることが多い。 Katharine N. Dixon et al. (1978) は、病院に運ばれた外来患者として6人の父親(実父4人・義父2人)から性的虐待を受けた10人の息子の事例を報告しているが、自己破壊的で他人を殺害したい衝動を持っていた被害者が多かったという。Robert K. Ressler, Ann W. Burgess and John E. Douglas (1988) は、『快楽殺人の心理 FBI心理分析官のノートより』で、自分たちが研究した男性殺人者の中には父親によって性行為を強要されたと語る者もいたという。 Pamela D. Schultz (2005) は、異母弟と性的行為をし、LSDやマリファナを使用、医師からは統合失調症と言われ、継息子と性的関係を持った男性の、継息子に対する性欲を抑えられないため、緊急治療室に行って性欲の治療を求めたのだが、送られた精神療養所では何も治療してもらえなかったという証言を引いた上で、彼は刑務所に入ることで自分を救う機会を得たといえるのではないかと論じている。 宮地尚子 (2013) は、かつてアメリカ合衆国で父親から息子に加えられる性的被害の話を聞いた際は衝撃を受けたが、やがてこういった話を日本でも聞くようになったと自らの経験を語っている。鈴木大介 (2014) は、暴力団から融資を受けている闇金融業の男性の中には、義父に性的虐待を受けた人もいると述べた。 母親と娘の近親姦に関しては、社会における女性が加害者とならないという通念や母性の考えが、この性的虐待の形式を非常に見えにくいものとしている。母親から娘に対する性的虐待を扱った書物としては、1997年に出版されたBobbie Rosencransによる著作『The Last Secret: Daughters Sexually Abused by Mothers(訳:最後の秘密—母親に性的に虐待された娘)』という書物がある。Rosencrans (1997) による93人の被害者への調査は、虐待について誰にも告げられないまま平均28年を過ごしていたことを示す。 日本における話としては、母子家庭で被害を受けてしまったという女性の話が『トラウマとジェンダー 臨床からの声』(2004年)に載せられているが、それによれば母親から「侵襲」されたというような感覚を持つのだが、一方で母親から強烈な女性らしさを要求されるにもかかわらずそれを達成できずに苦闘するといい、性的虐待を受けていなかったらレズビアンになったのではないかという疑惑を持ったとも述べている。
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