反響と遺産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 17:27 UTC 版)
ELIZAへの反響の大きさはワイゼンバウムを悩まし、『コンピュータ・パワー 人工知能と人間の理性』(Computer Power and Human Reason: From Judgment to Calculation)という本を書かせる動機となった。この著書で彼はコンピュータの限界を論じ、コンピュータを万能であるかのように見ている人々に人間や生命の重要性を説いた。Plug & Pray(2010年)というドキュメンタリー映画で、ワイゼンバウムはELIZAが画期的だと言ったのは誤解している人々だけだったと述べている。 イスラエルの詩人 David Avidan は、先端技術が好きで芸術に応用しており、コンピュータを使って文学を生み出そうとしてきた。例えば、ELIZAのAPL版との対話を何度か行い、その内容を My Electronic Psychiatrist – Eight Authentic Talks with a Computer と題して出版したことがある。その序文でこれを constrained writing の一種だとしている。 先にあげたEcala以外にも ELIZA の方式に基づいた様々なプログラムが様々な言語で作成されてきた。例えば、1980年には、Randy Simon の Don't Ask Software という会社が Apple II、アタリ、コモドールなど向けにELIZA風のプログラム Abuse を開発している。これは名前の通り、ユーザーの入力にののしりで応答するものだった。スペインでは Jordi Perez が 1993年に Clipper 言語で MS-DOS 向けに書かれた ZEBAL というプログラムを開発した。また、ELIZA に基づいて宗教的なバージョンのプログラムも開発された(キリストやブッダと対話するというもの)。1980年のゲーム Prisoner にも ELIZA風の対話が用いられている。 ジョージ・ルーカスの映画『THX 1138』(1971年)では、未来の地下社会の住民がストレスを感じたときに利用する告解室が登場し、キリスト風の顔を表示したコンピュータとELIZAのような対話をするシーンがある。 イギリス人アーティストでワイゼンバウムの友人でもある Brian Reffin Smith は1988年、フランスのブールジュにて 'Salamandre' というインタラクティブアートを展示した。これはBASICで書かれた 'Critic'(評論家)と 'Artist'(芸術家)というELIZA風プログラムを2台のAmigaに搭載して動作させるもので、観客は一方が表示した文をもう一方に打ち込むことで会話を成り立たせる。実はこの2つのプログラムは全く同じものだった。 2011年に発売されたスマートフォン、iPhone 4Sの日本語版Siri(人工知能エンジン)で「イライザ」について質問すると、友人の元精神科医である旨の回答がなされる。また「面白い話をして」「長い話をして」と質問した際に出力される小話の中にも「ELIZA」が登場し、ここでもELIZA風の対話を交わしている。 IPsoftは仮想サービスデスク・アシスタントElizaを開発した。このソフトウェアは顧客の電子メールや電話に応答するもので、約3分の2の問題を人間の助けなしで解決できるという。INGグループやモルガン・スタンレーが顧客対応にElizaを使っている。
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