南アルプス国立公園
「日本アルプスで一番代表的なピラミッドは、と問われたら、私は真っ先にこの駒ヶ岳をあげよう」——深田久弥は『日本百名山』にこう書いている。また、「日本アルプスで一番綺麗な頂上は、と聞かれても、やはり私は甲斐駒をあげよう」とも。
堂々たる山容と、白砂を敷きつめた山頂を持つ甲斐駒ヶ岳は、また、中部山岳地域の主要な山々を見ることのできる大展望台でもある。
重厚な山の連なり
赤石山脈の稜線部を中心とする非火山性の国立公園で、中部山岳と並んで日本を代表する山岳公園である。深い山懐と、重量感にあふれた大きな山容と、幅広い稜線を持つ重厚な峰々の連なりは、北アルプスとは異なった魅力がある。昭和39年に指定され、51年、大井川源流部原生自然環境保全地域指定により、この部分を公園から削除した。
最高峰北岳(3,193m)は、北アルプスの奥穂高岳(3,190m)をわずかに抜き、富士山に次いで日本第2位の標高を誇る。ほかにも3,000m以上の高山十数座を擁する。
最北部にある甲斐駒ヶ岳(2,967m)と鳳凰(ほうおう)三山は、野呂川と戸台川の深い谷によって以南の主稜線から離れており、JR中央本線や中央自動車道から高くそびえ立つ雄姿を望むことができる。鳳凰三山は地蔵岳、観音岳、薬師岳の総称で、高さは3,000mにわずかに足りないが、山頂部に露出した花崗岩の白く美しい岩肌を持つ。地蔵岳に立つ高さ26mの尖塔オベリスクは、この山のシンボルである。南アルプスの中では比較的登りやすく、人気が高い。
[仙丈ヶ岳]
甲斐駒ヶ岳の南には仙丈(せんじょう)ヶ岳、次いで山域の中心部に北岳、間(あい)ノ岳、農鳥(のうとり)岳と3,000mを超える高峰を連ねる白峰(しらね)三山がある。このあたり、東斜面は富士川、西斜面は天竜川の流域であり、主稜線と農鳥岳から派生して南に延びる稜線の間に、大井川源流部が食い込んでいる。
主稜線の南部は、塩見岳、荒川岳(悪沢岳)、赤石岳、聖(ひじり)岳と再び高峰が続くが、以南は次第に高度を下げ、公園南端の光(てかり)岳(2,591m)に至る。アプローチが長く、北部より登山者の少ない静かな山域である。公園区域のすぐ南側、大井川支流の寸又(すまた)川流域には、大井川源流部原生自然環境保全地域が接している。
黒々とした山深い趣
[キタダケソウ]
南アルプスは、北アルプスより南にあるため、高山帯は下限が北アルプスより高く、おおむね標高2,600mより上部になる。高所まで黒々とした厚い森林に覆われる山の姿も、この公園を特色づけるものだ。亜高山帯の森林はシラビソやコメツガが多く、大井川流域ではカラマツ、西麓の三峰川流域ではヒメコマツやウラジロモミなども多い。
稜線の風衝地や雪田には高山植生が発達し、北岳南斜面、三伏峠、荒川前岳などにお花畑が見られる。キタダケソウ、タカネマンテマなど、日本では南アルプスでしか見られない種類も少なくない。氷食地形は北アルプスに比べると少ないが、仙丈ヶ岳、荒川岳、赤石岳付近にはカールが分布している。
動物については、北アルプスと並ぶライチョウの生息地であり、カモシカなども多い。
分厚い前山に囲まれた南アルプスは、主稜線に到達するまでに長い渓谷遡行や、高度差2,000mもの登高が必要であった。しかし、近年林道が山奥まで入り、特に南アルプススーパー林道が北沢峠まで登ることになって、部分的には状況は大きく変わった。この林道は、北沢峠付近の建設とその後の利用を巡って大きな論争を起こした。昭和55年に完成したが、一般車両の通行は認めず、公営のマイクロバスのみが運行されている。
関連リンク
- 南アルプス国立公園 (環境省ホームページ)
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