列車脱線事故とは? わかりやすく解説

列車脱線事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/23 09:12 UTC 版)

地震による脱線。1906年サンフランシスコ地震による。
台車の溶接部の欠陥[1]による脱線(2016年5月18日 東武東上本線

列車脱線事故(れっしゃだっせんじこ、Train derailment accident)とは、列車車輪フランジ部分がレールの上を乗り越えて反対側に落ちることによって生じる事故[2]である。

概説

脱線の要因

脱線は軌道車両、運転上の取り扱い、積荷などに何らかの欠陥・問題があることで生ずるのが一般的である[2]

Nadal の式が与えられている。

脱線の分類

  • 乗り上がり脱線 - 車輪とレールとの間の横圧に対する摩擦係数が大きく、垂直力=輪重に比べて車輪を横に押し出す力が過大であるときに、フランジがレール上に登り上がる
  • すべり上がり脱線 - 車輪とレール踏面やフランジとの間の摩擦係数が小さく、横圧によりフランジがレール上にすべり上がる
  • とび上がり脱線 - 衝撃的な垂直力の減少や横方向の力の増加により、車輪がレール上にとび上がり、またはレールをとびこえる
  • 競合脱線 - 車両や軌道に決定的な欠陥は見られないが、様々な要因が重なり(競合して)脱線に至るケース。競合脱線の名が広まる以前はせり上がり脱線とも呼ばれていた[3]1963年昭和38年)に発生した鶴見事故の原因とされ、狩勝実験線では実際に列車を脱線させる試験を行い、原因解明に繋がった。こうした動きから脱線事故は原因までもが注目されるようになり、1969年(昭和44年)5月、6月の東海道本線だけでも3件が競合脱線として報道されている[4]2000年平成12年)3月8日に発生した営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故に対しても、競合脱線と説明されることがある。なお、川島令三著の「全国鉄道事情大研究 東京都心部篇」の「日比谷線脱線事故について」の頁によると「競合脱線とするのは原因不明と言っているに等しいと解説する技術者もいた」とあり、競合脱線については鉄道を知らない者は言うに及ばず、鉄道を知る技術者や有識者でも理解されていなかったり知らない者も多数存在している。

その他、夜間保線車両が入出区の際に使用する横取り装置(乗越分岐器で、分岐区間へ進入する際に使用される機材)の収納を失念し、始発列車が横取り装置に乗り上げ脱線事故に至ったなどのケースも存在する。

意図的な脱線

なお、暴走などを起した列車による二次被害を抑制するために、意図的に脱線させることがある。主に安全側線脱線転轍器が使用されるが、車庫などに留置中の保線車両や貨車の転動を防止する場合、より簡素な脱線器が用いられることもある。

日本における列車脱線事故

定義

日本では鉄道事故等報告規則昭和62年2月20日運輸省令第8号)で定める列車が脱線した事故のことをいう。二次的に転覆、周辺建築物やプラットホームなどの構造物との衝突火災が発生した場合でも、事故の主要因が軌道を逸脱したものであれば、列車脱線事故となる。

したがって、2005年平成17年)に土佐くろしお鉄道で発生した事故のように、ホームの構造物に激突・衝突していたとしても、車止めを超えた時点で本来の軌道を逸脱したものと判断され、列車衝突事故とはならない。なお、踏切において、列車又は車両(鉄道車両)が道路を通行する人または車両(自動車・軽車両など)等と衝突、または接触した事故としては踏切障害事故があるが、脱線を伴う踏切障害事故は主要因が踏切障害事故であっても列車脱線事故として扱われている。わかりにくいため、航空・鉄道事故調査委員会では列車脱線事故(踏切障害に伴うもの)との付記をつけるようにしている[注釈 1]。 ただ単に脱線しただけの場合は被害が小さいが、横転または転覆したり、2000年(平成12年)に営団地下鉄日比谷線で発生した事故のように対向列車に衝突したり、2005年(平成17年)にJR西日本福知山線で発生した事故のように線路外の建築物に衝突した場合には被害が大きくなる。線路や車両の状態に特に異常がなくとも力学的要素が絡み合って偶発的に脱線する場合(競合脱線)もあり、車両の挙動の解析とそれを踏まえた車両構造の改良や、線路の様々な改良(例:脱線防止ガードの設置など)により、未然に防ぐ努力が進められている。

調査機関

日本では2008年10月に航空・鉄道事故調査委員会(事故調)と海難審判庁の調査部門を統合して発足した、国土交通省の外局である運輸安全委員会が民間航空機事故、鉄道事故、船舶事故の調査を行っている[5]

主な列車脱線事故

アメリカ合衆国における列車脱線事故

調査機関

アメリカ合衆国では独立機関である国家運輸安全委員会(NTSB)が民間航空機事故、鉄道事故、船舶事故、高速道路事故、パイプライン事故の重大事故の調査を一元的に行っている[5]。国家運輸安全委員会の委員は7名である[5]

主な列車脱線事故

オーストラリアにおける列車脱線事故

調査機関

オーストラリア運輸安全局(ATSB)が民間航空機事故、指定州際鉄道における鉄道事故、船舶事故の調査を行っている[5]

主な列車脱線事故

脚注

注釈

  1. ^ なお、名鉄名古屋本線衝突脱線事故(2002年)のような踏切から侵入した乗用車と列車が衝突した場所が踏切外の場合(踏切障害に伴うもの)の付記が付かない事もある。

出典

  1. ^ 発車直後に脱線、溶接部の欠陥で台車に破断寸前の亀裂”. 日経クロステック (2018年10月1日). 2021年4月8日閲覧。
  2. ^ a b 『機械工学辞典』朝倉書店、1988年、581頁。 
  3. ^ せり上がり脱線『朝日新聞』昭和42年8月28日夕刊、3版、9面
  4. ^ 「競合脱線すでに三件 東海道線」『朝日新聞』昭和44年8月28日朝刊、12版、15面
  5. ^ a b c d 運輸分野の事故調査制度”. 国立国会図書館. 2018年1月27日閲覧。

関連項目


列車脱線事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/23 08:58 UTC 版)

サンバーナーディーノ列車脱線事故」の記事における「列車脱線事故」の解説

1989年5月12日午前7時36分、カホン峠を下ってきたサザン・パシフィック鉄道貨物列車機関車6両+貨車69両、SP 7551 East 列車)が高速脱線転覆し、さらに「ダフィー・ストリート」と呼ばれる住宅地突っ込んだ事故現場カホン低地帯とフットヒル・フリーウェイ(ルート210)の交差のちょう北東部にあたる。 この事故により、列車先頭本務機関車4ユニット第1ユニット乗務車掌第3ユニット乗務制動手、および沿線住民2名が死亡したまた、列車全ての車両損壊し沿線の7棟が倒壊した。この事故は、モハベ駅の係員列車重量の計算ミスしたことに加え機関士および乗務員らが誰も複数の[要検証ノート]後部補機発電ブレーキ故障していることに気づかずに、制動力不足したままの状態で下り勾配さしかかったため、加速止められずに列車暴走したことが原因である。 下り勾配速度落ちないことから、機関士ブレーキ効いていないことに気づいて非常ブレーキかけたが、実はこの非常ブレーキ操作によって自動的に発電ブレーキ解除されたため、かえって列車速度をより上げ結果となった。そして、列車はダフィー・ストリート手前カーブ時速177キロメートル時速約110マイル)まで加速し先頭部機関車本務機)および何両もの貨車沿線住宅脱線衝突したサンバーナーディーノ通過する列車速度制限時速56キロメートル時速35マイル)である。 機関車から回収されブラックボックスの解析により、先頭部第3機関車ユニットについては、実際に発電ブレーキ動作音がしていたにも関わらず発電ブレーキ故障しており全く効かない状態であったことが明らかとなったまた、複数機関車からなる補機運転していた機関士自身運転するそれら機関車ブレーキに異常があったにもかかわらず本務機に対してその報告怠っていたことが事故後明らかとなった。この事故の背景は、重量計算ミスおよび乗務員同士コミュニケーション不足、ブレーキ装置不良という複数の要因介在しているが、結果として機関車制動能力超えた過積載貨物列車は、下り勾配で重い貨車機関車押し下げて急激に加速し大幅に速度超過に陥り、この速度に対してダフィー・ストリート手前カーブ線形あまりに急カーブであったため、列車線路沿ってカーブ曲がりきれずにそのまま脱線暴走した

※この「列車脱線事故」の解説は、「サンバーナーディーノ列車脱線事故」の解説の一部です。
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