分類・種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 20:33 UTC 版)
詳細は「w:Lavandula#Taxonomic table」を参照 ヨーロッパ各地で盛んに品種改良が行われたことや、交雑種を生じやすい性質のために、呼び名や学名はかなり混乱しており、分類に関しては現在も研究が進められている。また植物学上の分類では同一種であっても、産地により抽出される精油の成分組成や香り、生物活性(効能)が異なる事から、生産地名を加えて区分しているものもある。歴史的にひとつの通称が、複数の種に用いられる例も見られる。同じ種のラベンダーでも、多数の通称を持つものも少なくない。 古代ローマでは、L. stoechas(イタリアン・ラベンダー)、L. pedunculata(スパニッシュ・ラベンダー)、L. dentata(キレハ・ラベンダー) はローマ時代にすでに知られていた。地中海地方に自生するいくつかの種が活用されたが、それらはほとんど区別されることはなかった。L. angustifolia(コモン・ラベンダー)を初めて他と区別したのは、中世の修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(ユリウス暦1098年 - 1179年)である。中世ヨーロッパでは、ヨーロッパのラベンダーはストエカス(L. stoechas、L. pedunculata、L. dentata) とラヴェンドラ (L. spica、L. latifolia)の2つのグループにわけられていた。リンネは『植物の種』Species Plantarum (1753年)で、当時知られていたラベンダーを一つの属にまとめた。5種のラベンダーが挙げられ、L. multifida、L. dentata (スペイン)、L. stoechas、L. spica。L. pedunculataはL. stoechas に含まれていた。L. angustifoliaとL. latifolia は区別されず、L. spica とされた。 最初の近代的な分類で重要なものは、1937年にキューのDorothy Chaytorが行ったもので、28種をストエカス節、スパイカ節、スブヌダ節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、デンタータ節の6つの節に分けたが、容易に割り当てることのできない種が残された。栽培種や園芸種はスパイカ、ストエカス、プテロストエカスの3節から出ており、カエトスタシス節はインドやイラン、スブヌダ節はアラビアやソマリアに分布する。現在日本で見られるものは、園芸書ではイングリッシュ系(スパイカ節)、フレンチ系(ストエカス節、デンタータ節)、ラバンジン系(L.a.ssp angustifoliaとL. latifoliaの交雑種)、その他に大別される。フレンチ系はイングリッシュ系より開花期が早い。スパイカ節(イングリッシュ系)の種は分類・学名に変遷があるため、現在でもL. angustifoliにL. officinalisやL. veraなどの古い学名の使用するなど、学名の誤用が見られる。 現代では、クライストチャーチ植物園などでBotanical Officerをしていたヴァージニア・マクノートン(Virginia McNaughton)は、スパイカ節、ストエカス節、プテロストエカス節、カエトスタシス節、スブヌダ節の5つの節に分かれるとしている。 最新の分類はTim UpsonとSusyn Andrewsによる2004年のもので、ラヴァンドラ亜種(ラヴァンドラ節、デンタータ節、ストエカス節)、ファブリカ亜種(プテロストエカス節、スブヌダ節、カエトスタシス節、Hasikenses 節)、サバウディア亜種(サバウディア節)の3亜種があるとされた。以下、Tim UpsonとSusyn Andrewsによるによる分類。主な種を挙げる。 Ⅰ ラヴァンドラ(Lavandula)亜種 i. ラヴァンドラ(Lavandula)節 (3種):スパイカ節、園芸書などでイングリッシュ系として知られる。Lavandula angustifolia Mill.:地中海沿岸原産のL.a.ssp angustifoliaとピレネー山脈・北部スペイン原産のL.a.ssp pyrenaicaの2亜種を持つが、L.a.ssp pyrenaicaはほとんど見られず、L. angustifoliaといえばL.a.ssp angustifoliaを指す。通称コモン・ラベンダー、イングリッシュ・ラベンダー、オールドイングリッシュ・ラベンダー、トゥルーラベンダー、真正ラベンダー。元々はフランスで栽培され始めた。葉は線形で対生し、若い茎では輪生する。葉の色は最初白っぽく、育つにつれ緑色になる。6~7月に、芳香のある青紫色の花を穂状にたくさんつける。日本の夏の高温多湿に弱い。最高級の精油がとれ、高地で育てると高い品質になるが、花穂が短く採取量が少ないため、商業用に育てられるものは、L. latifolia(スパイク・ラベンダー)が多少とも交雑した雑種であると考えられている。 Lavandula latifolia Medik:通称スパイク・ラベンダー、ヒロハ(広葉)ラベンダー。ポルトガル原産。広がりのあるへら型の葉を持ち、グレイがかった紫の花穂をつける。葉はラベンダーの中でも特にカンファー臭がする。L. angustifoliaの3倍の精油を収穫できるが、香料としての品質は劣る。 Lavandula lanata Boiss:通称ウーリー・ラベンダー。スペイン南部の山地が原産。全草フランネルのような白綿毛で覆われており、花穂は好ましいカンファー臭がする。 交雑種Lavandula x intermedia:L.a.ssp angustifoliaとL. latifoliaの交雑種。通称ラバンジン、ラヴァンディン。耐寒性が強く高温多湿にもやや耐え、日本でも育てやすく、関東地方以西の気候に合う。丈夫で花がたくさん咲き、精油も多く取れることから、商業用に広く栽培されている。香料としての精油の質は、L. latifoliaよりさらに劣るが、低地でも栽培できる。不稔性で種ができにくく、挿し木で増やす。 ii. デンタータ (Dentatae)節 (1種):フレンチ系として知られる。Lavandula dentata L.:通称キレハ(切葉)ラベンダー、デンタータ・ラベンダー、フリンジド・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。世界中に広く分布するが、海外ではおもにフレンチ・ラベンダーと呼ばれる。葉が歯状になっており、苞葉のある薄紫の花穂を1年の大半つける。変異種ができやすい。 iii. ストエカス(Stoechas Ging.)節 (3種):フレンチ系として知られる。Lavandula stoechas L.:通称イタリアン・ラベンダー、スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー、トップド・ラベンダー。歴史的にフレンチ・ラベンダーと呼ばれ、日本でもそう呼ばれることが多い。原産は地中海沿岸・北アフリカ。1 - 3mmの小さな花を無数につけ、花穂の先端に紫紅色の苞葉がある。全草にカンファー様の清涼感ある香りがあり、短毛で覆われている。霜や寒さに弱い種が多いが、暑さには比較的強い。昔から薬用に使われてきた。 Lavandula pedunculata Mill.(Cav.):通称スパニッシュ・ラベンダー、フレンチ・ラベンダー。主にスペインで見られるが、原産はポルトガル、北アメリカ、南バルカン半島、小アジア。花穂は丸くふくらみがあり華やかだが、あまり丈夫ではない。 Ⅱファブリカ(Fabricia)亜種 iv. プテロストエカス(Pterostoechas Ging.)節 (16種)Lavandula multifida:通称ファーンリーフ・ラベンダー、レース・ラベンダー、ムルチフィダ・ラベンダー、エジプシャン・ラベンダー。愛らしい青紫の花穂をつけるが、ラベンダーの芳香はない。半耐寒性の多年草として園芸用に栽培される。 Lavandula canariensis Mill.:通称カナリー・ラベンダー。条件が良ければ1.5mにもなる。カナリア諸島原産。耐寒性がない。 Lavandula pinnata L.:通称ピナータ・ラベンダー、ピンナタラベンダー、レースラベンダー。シダのような特徴的な葉で、開花期には幻想的な美しさを持ち、園芸種として人気が高い。 v. スブヌダ(Subnudae)節 (10種)Lavandula nimmoi Benth. vi. カエトスタシス(Chaetostachys)節 (2種)Lavandula bipinnata (Roth) Kuntze Lavandula gibsonii J. Graham vii. Hasikenses 節 (2種)Lavandula hasikensis A.G. Mill. Lavandula sublepidota Rech. f. III. サバウディア(Sabaudia)亜種 viii.サバウディア(Sabaudia)節 (2種)Lavandula atriplicifolia Benth. Lavandula erythraeae (Chiov.) Cufod.
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