冠詞の語法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 09:16 UTC 版)
英語文法では、ほとんどの場合において、限定詞が名詞句(または限定詞句(英語版))を”完成”させ、名詞の指示対象を明確にする(指示対象と結びつける)役目がある。統語論的観点からは「限定作用によって名詞的な範疇の投射を完全に閉じる機能がある」という言い方もされる。最も一般的な限定詞は「the」「a(n)」という冠詞で、名詞(句)の定性の有無を示す。限定詞には他に、「this」「my」「each」「many」などがある(英語の限定詞(英語版)を参照)。なお、限定詞が不要な場合もある。例えば、John likes fast cars.(「ジョンは速い車が好きだ」)という文では、John が人名であり、fast cars が一般的な「速い車(というもの)」を指しているため、それぞれ冠詞が不要で、特に人名に冠詞を付けることは基本的に不可である。 定冠詞「the」が使用されるのは、指示対象が唯一無二の存在であるか、または文脈・状況・既存知識などから聞き手・読み手が特定できる場合である。例えば、The boy with glasses was looking at the moon.(「眼鏡をかけた(特定の)少年が月を見ていた」)と言うためには、その場において指示対象と成り得る「眼鏡をかけた少年」は1人しかおらず、「月」も1つしかないという前提が必要である。 以下のような場合は、定冠詞を使用しない。 普通名詞(複数形または不可算名詞)の指示対象が一般的な「...というもの」である場合。 Cars have accelerators. - 自動車(というもの)にはアクセル(というもの)がある。 Happiness is contagious. - 幸福(というもの)は伝染する(人から人へ広がる)。 これらの文における「cars」「happiness」は、ともに指示対象が不特定である。一方、the happiness I felt yesterday(私が昨日感じた幸せ、昨日の幸福感)と言う場合の「happiness」の指示対象は特定されている。 人名などの固有名詞。 John(ジョン) / France(フランス) / London(ロンドン)など。 不定冠詞「a」(子音の前)または「an」(母音の前)は、基本的に単数形の可算名詞の前でのみ使用される。これは、名詞句の指示対象が不特定の1人(1つ)だということを意味する。例えば、An ugly man was smoking a pipe.(「(ある)醜い男がパイプを吸っていた」)という文における「醜い男」は不特定の人物であり、また「パイプ」も不特定の1本だと看做される。 複数形の名詞または不可算名詞において、指示対象が不特定である場合、冠詞が全く使用されないことがある。そういう場合、限定詞「some」が挿入されることもある(否定文や疑問文では「any」になることもある)。 例: There are apples in the kitchen. / There are some apples in the kitchen. 「台所に(いくつかの)リンゴがあります」 We do not have information. / We do not have any information. 「情報が(全く)ありません」 Would you like tea? / Would you like some tea? / Would you like any tea? 「お茶を(いくらか)いかがですか?」 例えば、I hate a cockroaches.(私はゴキブリが大嫌いです)のように、指定対象が不特定である場合に不定冠詞「'a'」を使用すると、以下のようなニュアンスとして誤って伝わってしまう。 I hate a cockroach. 「他のゴキブリは平気ですが、1匹だけ大嫌いなゴキブリがいます」 以下のような場合、冠詞はあまり使用されない: 名詞句の中に他の限定詞が存在する場合。例えば、my house(私の家)、this cat(この猫)、America's history(アメリカの歴史)を the my house、a this cat、America's the history とは言わない。しかし、the many issues(特定の多くの問題)、such a child(そのような子供)など、限定詞によっては冠詞と組み合わせることが可能である。 代名詞において。例えば、he、nobody を the he、a nobody とは言わない(a nobody(複:nobodies)は「無名の人」「取るに足らない者」を意味する場合には代名詞ではなく普通名詞扱いになる)。しかし、the one、the many、the fewなど、代名詞によっては冠詞との組み合わせが可能である。 例(『スタートレックII カーンの逆襲』より) スポック: "The needs of the many outweigh..." カーク: "... the needs of the few." スポック: "... or the one." 節または不定詞句が名詞句として機能している場合。例えば、What you've done is very good.(「あなたがしたことは非常に良い」)、To surrender is to die.(「降伏することは死ぬことである」)を The what you've done is very good、The to surrender is the to die などとは言わない。 さらに、見出し、標識、ラベル、メモなど、簡潔さが重宝される場面では、冠詞を含む機能語が省略されることがしばしばある。例えば、新聞の見出しでは The mayor was attacked.(「市長が襲われた」)は Mayor attacked と略される。 その他の語法については、下記#定冠詞の語法および#不定冠詞の語法を参照。冠詞が使用されない場合については、#無冠詞を参照。
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