兵士が語った例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 00:46 UTC 版)
「兵士の版」というのは、地域は指定されないが、二人の兵士の回顧録(1833年刊行)に所収された話例で、フランス民話の権威ポール・ドラリュ(フランス語版)が挙げた多くの類例の第1例であり、ドラリュやダニエル・ファーブル(フランス語版)などが、特に301B型の典型例として扱っている。 ドラリュの民話集にも所収されるが、英訳も出版されている。 出自・幼年期 熊に拉致された木こりの妻と、その熊とのあいだに生まれた主人公。4か月で歩き、1歳で口をきき、走ることができた。そのうち熊が洞窟の入り口に栓をした石をぐらつかせるほどになる。5、6歳で石をどけ、母と脱出を果たす。学校に通わされるが、全身が毛むくじゃらなため、学校の生徒から「熊のジャン」とあだ名される。あだ名で呼ばれるつどに相手に暴力をふるい、教師から苦情。ジャンは学校を去り、鍛冶師の弟子となる。 杖と仲間たち 鍛冶場を辞め、報酬がわりに鉄杖を鍛える。重さは、長柄が800リーヴル(ポンド)、石突が200リーヴルあった。旅で得た仲間は2人のみで、「樫ひねり(トール)」と「山切り(トランシュ)」という。トールは、樹齢100の樫を結繩にして、薪を束ねるのでこの名があり、トランシュは、岩石をペンチで持ち上げて砕く。 幽霊屋敷の城内 ジャンら一行は城屋敷を見つけて宿泊。人の気配がないが、食卓もベッドも整い、夕食等も所望すればたちどころに現れた。数日後、狩猟に2人が出るあいだ、1人が留守番し昼食の鐘を鳴らすことになった。最初の当番はトランシュ。しかし体が巨大化する「小さな巨人」が暖炉の煙突口から出現、散々に殴打される。昼食の合図を欠かしたトランシュは、地下倉庫の階段で転倒したと言い訳する。翌日、トールが同じ目に遭い、違う言い訳をする。ジャンは、相手が巨大化する機を先して杖で打ちのめし、敗走させた。逃げ先は、井戸の中。 下界への下降と探訪 井戸の中を探ることに。縄に結んだ籠に乗り順番に降りるが、他の2人は底に届かぬうちに引き上げ合図の鈴を鳴らす。ジャンのみ井戸底に到達し、老婆に遭遇する。老婆は、探している相手がスペインの三王女をさらった巨人であることを解き明かす。王女たちは、それぞれ別の場所に囚われている:2頭の虎が守る鋼鉄城、4頭の豹が守る白銀城、6頭の獅子が守る黄金城。老婆は傷を治す膏薬の壺をわたし、ジャンは野獣を倒して突破する。王女らは次になるほど美しい。 眠る姫たちを、その美しさに見合う優しい方法で目覚めさせるジャン 主人公は、鋼鉄、銀、金の球体を手に入れる。 主人公の地上への脱出 仲間たちは裏切って命綱を放し、ジャンは底に転落。胴体は傷つき脚も骨折するが、膏薬で全快。ジャンは老婆の知恵を授かり、大鷲に乗り地上に向かうが、鷲が鳴き声をあげるたび餌を与えよと注意される。最後は肉がなくなり、自分の大腿の肉を削ぐが、膏薬で元通りになる。 王女らとの再会 ジャンは王都マドリードに行く。仲間たちは王女らの救出者を騙り、いちばん年長の王女はどちらかとの結婚を迫られるが、王に1年と1日の猶予を許される。その間、国中のマルセイユ産の石鹸を集め、2人を消毒。ジャンは球体をころがして、自分がいることを気づかせ、長女の姫は、王に真の救出者のことを告げる。王は、別の球体を3個所持していたが、これを複製できるものに姫らを与えると布告(失敗すれば絞首刑)。ジャンは手持ちの球体を見せて合格し、長女と結婚。裏切者2人は新しく作られた高い絞首台で処刑される 。
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