六ヶ所再処理工場から日常的に放出する放射能によって、世界全体で1万5000人が癌で死亡する
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 17:38 UTC 版)
「六ヶ所村核燃料再処理事業反対運動」の記事における「六ヶ所再処理工場から日常的に放出する放射能によって、世界全体で1万5000人が癌で死亡する」の解説
グリーンピースは、ロンドン大学のバーソロミュー・メディカル・カレッジで放射線生物学の学位を取得した環境コンサルタント、イアン・フェアリー(Ian Fairlie)に委託して作成させた報告書を2008年2月に発表した。 この報告書によると、六ヶ所再処理工場が1年間の本格稼働で地球全体の集団線量(環境に放出する放射性物質から地球上のすべての人々が受ける被曝放射線量を合計した推計値)が7400[人・Sv]になるとし、これを「直線しきい値無し仮説」を採用した上で比例計算により評価すると「毎年、世界でおよそ370人が癌で死亡すると計算される」としている。予定されている40年間、再処理工場が最大能力の運転を休み無く続けた場合では「世界全体で1万5000人が癌で死亡する」としている。 国際連合の原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、全世界で合計250[GW・年]の原子力発電を100年間続けた場合の地球全体の最大集団線量を1500[人・Sv]と推算しており、六ヶ所再処理工場の影響はその約5倍になる。 反論1 - この「直線しきい値無し仮説」は科学的に実証されたものではなく、有効性に疑問を呈する研究者も多い。詳細は「被曝#直線しきい値無し仮説」を参照 反論2 - フェアリーが同報告書中で用いている「person Sv(人・Sv)」という単位は、集団線量を表す為の単位であり、実際にこのような被曝が起こるかどうかは別問題である。例えば100万人の集団が0.000001シーベルトずつ被曝した場合の集団線量は1人・Svである。前出7400人・SVという数字を2007年の推定世界人口である66億人で割ると、1人あたりの被曝線量はおよそ0.00000112シーベルトとなり、フェアリーが発ガン率の推定に用いた1人あたり1シーベルトを遙かに下回る数値である。こうした極めて低い線量もまた有意な発ガン率の増加をもたらしうるとするのが、前出の「直線しきい値無し仮説」を真とする立場である。2007年12月に発行されたICRPによる新勧告では、集団線量は生物学的にも統計的にも不確定であり、微小な被曝を大人口に掛け合わせてがんの死亡を計算するような使い方は「is not reasonable and should be avoided」とされている。 再反論 - 極微量の放射線が確率的に発がん因子になることを認めてしまっては、放射能を扱う産業の多くが活動できなくなるので、推進派は当然この論理を認めたくないと考えている。しかし、ミクロにみて放射線が確率的に遺伝子を損傷することは否定しがたい事実であり、その事実をマクロにみて評価する手法が集団線量である。 補足 - この報告書には、他にも「日本原燃と日本政府によるトリチウム、炭素14、クリプトン85、ヨウ素129の放出管理目標値の計算値は、フランスのラ・アーグ工場およびスイスのPWRの数値と比較した場合、矛盾する部分があるので、推定値の計算プロセスを具体的に公開すべきである。」「時間範囲を切り縮めない地球全体の集団線量による損失は、六ヵ所再処理工場の操業による利益を優に超える可能性がある。ただし実際の集団線量はヨウ素129の除去プロセスが設計値通りの動作をするかどうかに決定的に依存する。」「六ヶ所再処理工場からの推定放出量から見込まれる年集団線量は、セラフィールド再処理工場のおよそ4倍、ラアーグ再処理工場のおよそ1.3倍である。」「六ヶ所再処理工場からの放出核種量が大きいのは、1999年に他の二工場が再処理したそれより高い燃焼度の核燃料を再処理することになるためである。」などの指摘を行っている。現在のところ、日本原燃など再処理事業を推進する立場からの反論は発表されていない。
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