人類生態学
人口現象と経済社会的現象との関連の研究は別の人口学の部門を構成し、経済人口学 1、社会人口学 2の名称が用いられることがある。同時に人口学は人口の質 3を扱うことがあり、この用語は時として人口のすべての社会的・個人的属性を意味するものとして用いられることがある。それとは少し異なる用法として、人口の質とは集団遺伝学 4の研究対象である遺伝形質(910-3)の分布と伝達を主に指すことがある。人類生態学 5とは、人間間の競争的かつ協同的過程に着目して行う地域社会の分布と組織に関する研究分野をいい、それはすべての生物学的研究に統計的手法を応用する生物測定 6あるいは生物測定学 6と同じように、人口学と研究対象を部分的に共有する。
- 4. 集団遺伝学は、人間の遺伝可能な形質の移転に関する研究を行う人類遺伝学human geneticsとは異なる。集団遺伝学は植物、動物そして人間の人口における遺伝的特性の分布、伝達に関する研究を含む。
- 5. 生態学ecology(名);生態学的ecological(形);生態学者ecologist(名):生態学の専門家。
- 6. 生物測定 biometry(名);生物測定学 biometrics(名);生物測定の biometric(形);生物測定学者 biometrician(名):生物測定の専門家。英語の生物統計学biostatistics、生物統計学的 biostatistical、生物統計学者 biostatisticianという術語はbiometrics, biometric,biometricianという一連の用語としばしば同義語的に用いられる。
人類生態学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 08:59 UTC 版)
人類生態学はシカゴにおける植生遷移変化の研究を通して1920年代に始まり、1970年代にひとつの研究分野として確立した。人類生態学では「地球上に広く生息する人間も主要な生態学的な要因(ecological factor)である」という認識に注目した。生息地の開発(特に都市計画)、集約的な漁業、あるいは農業・工業活動を通じて人類は大きく環境に手を加えるからである。 人類生態学は、人類学者、建築家、生物学者、人口統計学者、生態学者、人間工学研究者、民族学者、都市計画研究者、医師といった研究者が参画する分野として始まった。 人類生態学は生態学の支流であり、人間、その組織的な活動、人間をとりまく環境についての研究を行う。これを human ecology や ecological anthropology 等と言う。 学問的研究と環境保護運動の過程における相互関係や、新宗教的なエゾテリック派によって思想/宗教/世界観に環境保全的な価値観が存在し、自然と人間との関係が深く影響されていると仮定する環境保全主義的イデオロギー(environmentalism)が近年の一般的な議論で目立ち始めている。この派閥は特に欧米の文化人類学者によって批判されてきたが、その理由として、仏教徒が元々自然保護派であり、キリスト教は単に世界征服を目指したモノテイズムである等と言った単純な理論立てが「環境」から「価値」へ議論テーマをそらしてしまう様であり、民族主義的な対立を引き起こす可能性が含まれているからである。仮に environmentalism の提言する宗教基盤の価値観が人間と自然の関係を左右するとしたら、日本特有である自然界を対象とする「神道」は環境保全に効果があるはずであるが、現実は違う。環境保全主義的イデオロギーの「パラダイム」(environmentalist paradigm)と呼ばれている派閥には多数の流れがあり、中には環境保全的アジアニズムといったナショナリストや欧米人であり、欧米社会環境で社会化した人が「反欧米的価値観」を主張するといった複雑な面もあり、environmentalism 研究と言う新たな分野が注目されている(Berkes 2001, Ingold 1993, Kalland 2003, 2005, Pedersen 1995)。生態学における知見は上記の「内心面的」なものに限らず、個人や集団の諸外部への関係へも発展した。その中で、例えば政策や都市経営に適用しようとする政治生態学(political ecology)が1920年代から研究されたが、この場合の「政治」は社会と経済も含まれている意味合いがある。なお、Roy Rappaport(1984)をはじめとする人間と生態系の関わりに見られる細かな関数的な相互影響のシステム論(サイバネティックス)と解釈する学派も存在する。後者は自然科学と文化研究の結合として発展していったが、メカニックな生態系解釈は批判の対象にもなっている。
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