交換手を介さない自動交換がはじまる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 19:03 UTC 版)
「119番」の記事における「交換手を介さない自動交換がはじまる」の解説
1923年(大正12年)9月1日昼、関東地方を大地震が襲った。関東地震である。この関東大震災により東京や横浜の電話局舎および電話回線網は壊滅し、その全面復旧には1927年(昭和2年)7月までの歳月を要した。逓信省はこれを契機とし、日本で初めてとなる自動式電話交換機の導入を進めることにした。 1926年(大正15年)1月20日、午前0時を期して京橋局が、また同年1月25日の午前0時より本所局が交換手を介さない自動交換に切り換わった。そのため両局に収容されている加入者(およそ3,000名)の電話機は電話番号に対応した電気パルス信号を生成する回転盤(ダイヤル)が付いたものに交換された。 ダイヤル付き電話機 自動交換用のダイヤル式電話機は、数字に対応した回数分、電気パルスを発生させて自動交換機に接続先の電話番号を通知する。例を挙げればダイヤル式電話機で「112」を廻すと、電話機はカタ(1)、カタ(1)、カタ・カタ(2)とダイヤルパルスを発生させる。ところがダイヤルを廻さなくとも、電話機のフックスイッチ(電話を使わない時に、耳に当てる受話器をぶら下げておく「留め金具」が電気的なスイッチになっている)をガチャ(1回)、ガチャ(1回)、ガチャ・ガチャ(素早く2回)と上下させても同様のパルス「112」が発生するため、この行為は電話番号をダイヤルしているのと同じだった。 電話番号の6桁化 東京中央電話局の加入区域内における全ての電話番号を局番(2桁)と加入者番号(4桁)を組み合わせた計6桁に改めた。これまで加入者番号は1桁、2桁、3桁、4桁の4種類あったが、5番は0005番に、77番は0077番というように0を付加して4桁に統一した。1桁や2桁の電話番号は「1声」「2声」と呼ばれ、高値で市場取引されていたため、それら「若番」を所有する加入者からは猛烈な反発があったという。 局番の新設 手動交換時代では局名を前置して『神田(局)80番』等と呼称していたが、「1」以外の数字を用いて局番を定めることになった。東京中央電話局(本局)の加入区域を方面によって7つの区に分けて、まず10の位の数字 に「2」から「8」の数字を割り付け、次に1の位の数字 を、その区内にある交換局(分局)へ分配した。こうして20番台から80番台の2桁数字を局番としたが、1から始まる番号は以下の理由で意図的に避けられた。当時、受話器をフックから上げたとき、跳ね上がったフックでスイッチの接点が振動し、瞬間的に1回分の「ガチャ」(入り・切り)が発生することがあると考えられていた。1を廻していないのに、これが1をダイヤルしたことになるため、1から始まる電話番号への誤接続が予想された。そこで加入者には1から始まる局番を作らないことにした。 1926年1月、東京中央電話局は自動交換機の導入に合わせて、関係者向けの『ストロージャー式自働式電話交換の概要:私設電話交換取扱者用』を出版した。そこには「今後も1からはじまる数字は局番には使わない。」(5ページ)、「加入者が受話器を外す時にうまく外れないで、フックが一度上下して、そのために"1"のパルスが送られてしまうことがある。これを擬似インパルスと言う。そのため一般加入者の電話番号には最初(局名)に"1"という数字を付けていない。」(21ページ)と記されている。 横浜中央電話局区内では分局が1つしかないため局番を1桁としたが、やはり誤接続が想定される「1」という数字を避けた(横浜本局:2番、長者局:3番)。 自動局加入者サービス用の3桁特殊番号 疑似インパルスによる誤接続が想定された「1から始まる電話番号」は電話局みずからがそのリスクを覚悟の上で引き受ける形をとり、東京・横浜の自動化局では「10X」(100~109)および「11X」(110~119)を電話局専用の電話番号とした。この番号は自動交換局において電話サービスが円滑に行われるように、加入者よりの問合せや手続きの受付を目的とする加入者サービス用で、局番は必要なく、ダイヤルを3回廻すだけである。これまでの手動交換時代においても加入者サービス用の3桁電話番号として、500番(電話番号案内)、本局150番(電話呼出し の受付)、本局300番(接続交換上の用向き窓口)などがあったが、一部、60番(電話機や通話不良の窓口)や本局1000番(市外通話申込の取消)のように2桁や4桁も使われていた。そこで自動交換局の加入者サービス用番号を決めるにあたり、これらを再編成して、桁数を統一することになった。中でも頻繁に利用されていたのが500番であり、電話利用者には「3桁の電話番号」が加入者サービス用として最も馴染みが深かった。 また当時の通話料は度数制(通話回数制)によるが、無料である加入者サービスの通話については度数計を不登算(ノーカウント)にしなければならない。それには加入者サービス用番号を、通常の電話番号(東京は2+4の6桁番号、横浜は1+4の5桁番号)とは「異なる構成(3桁)」にするのが交換システム上で都合が良かった。 なぜ1から始まるすべての番号「1XY」(100~199)ではなく、「10X」(100~109)と「11X」(110~119)だけに限定したかというと、今回、20番台から80番台を局番に使うことから、「12X」「13X」「14X」・・・「18X」には誤着呼が想定されたためである。たとえば(神田局28の3456番)「28-3456」をダイヤルする際、受話器を上げた直後に擬似インパルス1が発生したとすると「1-28-3456」を廻したことになり、先に3桁特殊番号の「128」へ接続されてしまう。同様に(浅草局84の4321番)「84-4321」を廻す際には、3桁特殊番号「184」への接続が懸念されたからだ。
※この「交換手を介さない自動交換がはじまる」の解説は、「119番」の解説の一部です。
「交換手を介さない自動交換がはじまる」を含む「119番」の記事については、「119番」の概要を参照ください。
- 交換手を介さない自動交換がはじまるのページへのリンク