デフォルト (金融)
金融におけるデフォルト(英: default)や債務不履行(さいむふりこう)[1]とは、債券の元利払いや償還など債務の契約上の義務が果たされないこと。具体的には、債券発行者が破綻等による「元本や利息の支払う」債務履行行為の遅延(履行遅延)、不完全な債務履行(不完全履行)、債務履行が不可能(履行不能)、といった3種の行為の総称[2]。
債務者がデフォルトが起こすと、債権者は得られるはずだった利益を失うため、債権の保全措置を講じたりしようとする。それでも、金融機関や投資家など債務者ら貸金を取り戻せなかった際には多額の損失を被る[3][4]。
国債の債務不履行の実例
- 1671年 - イギリス政府は200万ポンド以上に上る公債が償還できなくなり、借金の棒引きを行っている[5]。
- 1790年8月4日 - アメリカ合衆国にてアメリカ合衆国財務省設立の翌年に Funding Act of 1790 が成立し、州債を国債に振り替えたが、その際、利息の支払いを1801年まで延期したため、債務不履行にあたる。[6]
- 1871年8月29日 - 日本の廃藩置県の際に、藩の持っていた債務を地方債とするのではなく国債に振り替えた。その際、利息の支払い条件なども変えたので、債務不履行となった。詳細は廃藩置県を参照。
- 1876年4月3日 - オスマン帝国が破産。5年後にオスマン債務管理局が設置された。
- 1933年6月5日 - アメリカ合衆国は市民の金保有を禁じる政策(金本位制を参照)の一環で米国債の償還時や利息を金で請求しても良いという金条項を過去にさかのぼって廃止したが、これは債務不履行にあたる。ただし米ドルでの支払いは通常通り行われた。[6]
- 1982年8月12日 - メキシコで外債の債務不履行が発生した[7]。
- 1987年2月20日 - ブラジルは対外債務(1110億ドル)のデフォルトに至った[8][9]。
- 1998年8月17日 - ロシアは90日間の対外債務の支払停止(ロシア財政危機)。
- 2001年12月23日 - アルゼンチンは外国債に関して7度目のデフォルトを宣言した(アルゼンチン#2001年の債務不履行)。
- 2008年12月12日 - エクアドルは同国政府が発行した外貨建て債務についてデフォルトを宣言した。
- 2014年7月31日 - アルゼンチンは、13年ぶりに8度目の債務不履行に陥った[10](アルゼンチン#2014年の債務不履行)。
- 2015年6月30日 - ギリシャは返済期限である2015年6月30日[11]を過ぎても、国際通貨基金(IMF)への負債総額15億ユーロを返済しなかった。これによりギリシャは、IMFに対して債務不履行に陥った先進国としては最初の事例となった[12]。その3日後、ギリシャのIMFに対してのデフォルトが欧州金融安定ファシリティ(EFSF)によって正式に認定された[13][14]。IMFのプロトコルでは、IMFへの債務不履行になった場合は30日間のつなぎ期間が与えられ、可能な限り素早く返済するよう求められる[11]。
- 2020年3月7日 - レバノン政府が3月9日に償還期限となる外貨建て国債12億ドル(約1260億円)について支払いの延期を発表。また同年中に返済期限を迎える債務が46億ドルになることも併せて発表された[15][16]。
- 2020年5月22日 - アルゼンチンが22日、同日が支払期限だった5億ドル(約540億円)規模の国債の利払いをせず、6年ぶり9度目のデフォルト(債務不履行)が確定した[17]。
- 2020年11月13日 - ザンビアは同日がドル建て国債の4250万ドルの利払い猶予期間の最終日だったが、利払いせず、債務不履行に陥った[18]。
- 2022年5月19日 - スリランカが同日、1948年の独立以来、初の債務不履行に陥った[19]。
- 2022年12月19日 - ガーナのユーロ債などが債務不履行となった。[20]
地方債の債務不履行の実例
- 2013年7月18日 - アメリカのミシガン州デトロイト市は連邦倒産法第9章を裁判所に申請し財政破綻した[21]。詳細は Detroit bankruptcy を参照。
- 2014年3月- 中国の9省で初の地方債務のデフォルトが起きていたと中国審計署は発表した[22]。
- 2015年8月3日 - アメリカ自治領プエルトリコが債務不履行に陥った。債務総額は約730億ドル[23]。
金融機関による債務不履行の実例
- 1997年11月4日 - 三洋証券が経営破綻により無担保コール資金約10億円をデフォルト(貸付元は群馬中央信用金庫)。
- 1999年10月1日 - 新潟中央銀行が銀行間内国為替業務における為替決済取引上の債務不履行[24]。翌日に経営破綻。
- 2008年9月15日 - リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻。リーマン・ショックと命名され、世界に大打撃を与えた。負債総額は約64兆円。2001年以降にアメリカ合州国政府が低所得者を対象とした高金利住宅ローン「サブプライムローン」の融資基準を緩和し、コレを組み入れた証券化商のが多数発行で証券バブルが発生していた。そして、2007年以降に借り手側(低所得者層)の返済率が滞り始めると金融機関などに損失発生したサブプライムローン問題が背景にある[25]。
脚注
出典
- ^ デフォルト | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
- ^ 大和証券株式会社. “デフォルト | 金融・証券用語解説集”. 大和証券. 2025年3月21日閲覧。
- ^ 金融用語大全-デフォルト
- ^ 金融用語集-デフォルト
- ^ 岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、58頁。
- ^ a b Has the United States Ever Defaulted on Its Debt? - CNBC
- ^ 大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、192頁。
- ^ BRAZIL HALTS PAYMENTS ON DEBT - The Washington Post
- ^ 神樹兵輔 『面白いほどよくわかる世界経済-日本を取り巻く世界経済の現状とその問題点(学校で教えない教科書)』 日本文芸社、2010年、148頁。
- ^ アルゼンチンが債務不履行、約12年ぶり2回目Reuters 2014年7月31日
- ^ a b What happens if Greece defaults on its International Monetary Fund loans?M. Khan, The Daily Telegraph, Economics, 30 June 2015
- ^ Greek debt crisis: Is Grexit inevitable?P. Kirby, BBC News, 1 July 2015
- ^ Greek crisis: European lenders scrample for response to referedum no voteI. Taylor, The Guardian, World, 6 July 2015
- ^ Deal in the offing: VaroufakisAFP, Business Spectator, Politics, 4 July 2015
- ^ “Lebanon to default on $1.2bn debt”. フィナンシャル・タイムズ. (2020年3月7日) 2020年3月8日閲覧。
- ^ “レバノンがデフォルトへ 首相「国債返済を延期」”. 日本経済新聞. (2020年3月8日) 2020年3月8日閲覧。
- ^ “アルゼンチン、9度目のデフォルト 債務交渉は継続”. 日本経済新聞. (2020年5月23日) 2020年5月23日閲覧。
- ^ “ザンビアが債務不履行、コロナ下でアフリカ初”. 日本経済新聞. (2020年11月14日) 2021年8月16日閲覧。
- ^ “中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト、見えた一帯一路の本性”. JBpress (2022年5月23日). 2022年6月2日閲覧。
- ^ ガーナが事実上のデフォルト、大半の対外債務支払いを停止 | ロイター
- ^ デトロイト市破綻 負債1.8兆円、米自治体で最大日本経済新聞 2013年7月19日
- ^ 中国の地方債務、初のデフォルト 8億2100万元、償還できずSankeiBiz(サンケイビズ) 2014年6月26日
- ^ プエルトリコが債務不履行 米ムーディーズが認定、満期債券の償還できず - 2015年8月4日付産経ニュース
- ^ 新潟中央銀行による為替決済取引上の債務不履行の発生および為替決済の結了について : 日本銀行 Bank of Japan
- ^ “リーマン・ショック”. 野村證券. 2025年3月21日閲覧。
不完全履行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 14:30 UTC 版)
履行遅滞や履行不能のように、債務者による履行行為が無いという消極的容態によってではなく、債務者により積極的に履行行為がなされたが、それが不完全なものであったために債権者に損害が生じた場合を、不完全履行(独:Schlechterfüllung)、不完全給付ないしは積極的債権(契約)侵害(独:Positive Vertragsverletzung, Positive Forderungsverletzung)と称し、履行遅滞・履行不能とは別の、第三の債務不履行形態として位置づけられている。 比較法史的には、かつて立法及び学説において債務の不履行は債務者の遅滞及び履行不能をもって尽きるものとしていたために、ドイツの学説の問題提起を受けて立てられた概念である。 日本民法は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき」は、債権者は損害賠償を請求することができるものとしており(415条)、このような場合も債務不履行に含まれることは疑いがない。このために、あえて条文に無い概念を導入する必要はないとの批判もある。しかし、履行遅滞や履行不能と異なり、外見上は債務の履行があるため、債権が時効によって消滅しない限りは強制履行や解除を認めるべきかは問題であり、例えば落丁のある本を数年使用収益した後、新品の本の給付を請求するような場合など、一定の場合にはこれを制限すべき場合が生じる。その根拠として信義則の規定などが挙げられている。 従来、債務不履行には、この三つの態様のものがあるとされていたが、判例・学説は415条前段の債務の本旨に従った履行をしないというのには、契約の本来の給付義務に付随する説明義務・情報提供義務などの付随義務違反、更に雇用契約における使用者の労働者に対する安全配慮義務のように相手方の利益を保護すべきだという保護義務違反のような態様のものを含むと解するようになっている。
※この「不完全履行」の解説は、「債務不履行」の解説の一部です。
「不完全履行」を含む「債務不履行」の記事については、「債務不履行」の概要を参照ください。
不完全履行と同じ種類の言葉
- 不完全履行のページへのリンク