ムネオハウス事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 05:04 UTC 版)
国後島の日本人とロシア人の友好の家(通称ムネオハウス)の工事に関わる入札を意図的に地元建設業者5人と鈴木宗男の秘書が共謀して随意契約にさせた事件。 1999年、発注者が入札を公告する少し前に釧路市内の鈴木事務所に鈴木宗男の秘書と業者が集まり入札情報が漏洩、7月7日の入札情報を利用し他の業者が入札に参加するのを断念させた上で、渡辺建設工業ら共同企業体を組み単独で応札。予定価格を上回る金額を三回提示して入札を不調に終わらせ、施工条件を緩和した随意契約で受注した。 日本共産党衆議院議員である佐々木憲昭が、2002年2月13日の衆議院予算委員会で追及し、その際に「ムネオハウス」と発言して国会内の議員が爆笑したりして話題となり、この問題が広く知れ渡るようになった。これらのことで、鈴木宗男の秘書1人と地元建設業者5人が偽計業務妨害罪として立件された。鈴木宗男は検察の本格的捜査が始まる前の証人喚問で「秘書から、『(地元建設業者らとの連絡で)日程をセットして事務所で会った』と聞いた」旨の証言をしたが、後の裁判では前述の証言について一切言及しないまま秘書は「釧路市の事務所で入札価格を漏洩したとされる日は療養中だった」とアリバイを主張し、鈴木宗男も書籍等で同様の主張をした。裁判では検察側の「事務所に集まった支援企業関係者らの供述から犯行当時は釧路市の事務所にいた」主張が裁判で認定され、5人全員の有罪が確定した。 なお、鈴木宗男自身はこの事件では立件されなかったが、野党からは「国後島緊急避難所兼宿泊施設建設工事受注について、公設、私設を問わず、秘書がかかわっていた可能性はない」とする鈴木宗男の証言について、鈴木宗男の第一秘書が逮捕されて起訴濃厚になったことで偽証罪告発をしようとしたが、与党の自民党と公明党が「国会議員とその秘書は政治的・道義的には一身一体であるが、法的には別人格」として告発に反対したため、実現しなかった。 また野党からは鈴木宗男が内閣官房副長官在任中の1999年5月27日に外務省欧亜局関係者と面談して、工事の入札参加資格を「根室管内」に本社があるBランクの企業に限定するよう強く要求し、該当する企業を渡辺建設工業一社のみにしたことが問題視された。国会で証人喚問された際に「国後島緊急避難所兼宿泊施設建設工事受注について自分の秘書は関わっていない」「友好の家の工事受注入札要件に該当する会社が渡辺建設工業だという認識はない」とする証言について、共産党などの野党によって偽証として議院証言法で起訴すべきとする議題が予算委員会に上ったことがある(最終的に、この証言による偽証罪による告発は与党の反対でされなかった)。鈴木は「支援事業は根室の業者を優先すべきだ」と言ったのは事実であるが、それは外務省が北方四島住民支援事業の趣旨から北方四島の元島民が多く、北方領土返還運動の原点である根室管内を優先するという根室市との取決を無視し、「約束したことは守らなければならん、二枚舌はいかん」と注文をつけただけであると主張している(鈴木宗男 2009)。 日本共産党参議院議員(当時)の筆坂秀世は2回目の国会追及をする際に「共産党に国会で質問してもらいたい事柄に関する外務省の秘密書類が、質問当日の朝、議員会館に届けられた」と証言している。事実、佐々木代議士は、「国後島緊急避難所兼宿泊施設(メモ)」という外務省の秘密内部文書を質問に使用した。さらにこの点については、鈴木本人や共に逮捕された佐藤優(元・外務省国際情報局分析第一課主任分析官 現在は作家として活動)も、共著の中で筆坂をゲストという形で招いて対談し、米国との同盟関係を強めていた小泉政権の下で、ロシアとの独自のパイプを持って外交にイニシアティブを発揮していた鈴木を失脚させたい外務省が、鈴木の利権問題をとらえて、日本共産党の質問に乗った疑惑があることに言及し、これを非難している。
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