ムネアカハラビロカマキリとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ムネアカハラビロカマキリの意味・解説 

ムネアカハラビロカマキリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/31 15:30 UTC 版)

ムネアカハラビロカマキリ
オス
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: カマキリ目 Mantodea
: カマキリ科 Mantidae
: ハラビロカマキリ属 Hierodula
: ムネアカハラビロカマキリ
H. chinensis
学名
Hierodula chinensis
Werner, 1929[1]
和名
ムネアカハラビロカマキリ
英名
Chinese reddish mantis[2]

ムネアカハラビロカマキリHierodula chinensis)は、カマキリ目カマキリ科の昆虫。中国大陸を原産地とし、日本と韓国から記録された。日本では侵略的外来種とされ、在来種への影響が懸念されている。

分布

中華人民共和国[1][3]日本[2][4]大韓民国[5]。模式産地は北京[6]

形態

体長はオス58 - 66mm、メス59 - 80mm[7]。在来種に比べて前胸が長く、前胸の腹側に赤みがかかっている。また、前脚のカマの腿節(たいせつ)部分に黄色い小さなイボが8 - 9個あること、威嚇した際腹部に特徴的な模様が視認できることで在来種のハラビロカマキリと区別できる。

ちなみに、本種の幼虫は胸が赤くなく緑色であり、羽化後3〜5日で赤くなり始めて、一週間くらいで完全に赤くなる。本種のこのような性質から、幼虫時代は在来種のハラビロカマキリと間違えられることがしばしばあるが、カマのつけ根のイボが在来種は大きいものが3つあるのに対して、本種は小さなイボが8〜10個並んでいることから見分けられる。更にハラビロカマキリとの比較として、卵嚢の産み付けられ方にも違いがある。ハラビロカマキリは面に対してべったりと産み付けられるのだが、本種の場合、卵嚢の底面の上部4割ほどは面にべったりくっつき、残りの下部6割ほどはどこにも接着しないという特徴がある。いわば斜めに産み付けられている感じである。更に、本種の卵嚢の方が白黒のコントラストがはっきりしており、在来種の場合は茶色っぽさが目立つ感じになる。

分類

長らくインドおよびネパール産のHierodula membranaceaと混同されていたが、2020年に中国産の個体群がH. chinensisとして区別された[1]

ムネアカハラビロカマキリの和名は、通称としてあった呼称が2014年ごろから採用されたもので、学名は中国の文献に掲載されていたH. venosaと推測されていた[8]。一方でH. venosaの分布は東南アジアに限定されるとされ[9]、本種を掲載した図鑑でもHierodula sp.のままとしている[10]。2021年に広島県で採集された標本をもとに分子系統解析が行われH. formosanaに近縁であることが報告されたが、他標本の情報不足から種の同定は行われていない[11]。2022年には東京都および岐阜県で採集された標本が形態に基づきH. chinensisに同定されているが[2][4]、ほかの地域の個体群(Hierodula sp.)が同一種であるかは不明とされている[2]

移入

日本ではHierodula membranaceaの類似種として2010年に福井県から初めて報告された[12]多摩森林科学園では2000年から採集記録があり、それより以前に侵入したと考えられている[13]。分布拡大が指摘されており、2021年までに新潟県から宮崎県までの23都府県で報告されている[11]。同じフィールドで両種が競合した場合、1年で在来のハラビロカマキリの生息密度が希薄となり、みられる大半がムネアカハラビロカマキリになった例が報告されている[14]

移入個体群は中華人民共和国の浙江省が原産と考えられている[9]神奈川県立生命の星・地球博物館などの調査により、中華人民共和国から輸入された竹箒に付着した卵が孵化して、日本各地で定着した可能性が指摘されている[15]

脚注

  1. ^ a b c Liu, Qin-Peng & Liu, Zi-Jun & Chen, Zhi-Teng & Yuan, Zhong-Lin & Shi, Yan. (2020). “A new species and two new species records of Hierodulinae from China, with a revision of Hierodula chinensis (Mantodea: Mantidae)”. Oriental Insects. 55. 1-20. https://doi.org/10.1080/00305316.2020.1754954.
  2. ^ a b c d Yamasaki, Kazuhisa & Schütte, Kai & Nawa, Tetsuo. (2022). “New record of Chinese Reddish Mantis, Hierodula chinensis Werner, 1929 (Mantodea, Mantidae) from Japan”. Check List. 18. 147-150. https://doi.org/10.15560/18.1.147.
  3. ^ Qin-Peng Liu, Zi-Jun Liu, Guo-Li Wang & Zi-Xu Yin, “Taxonomic revision of the praying mantis subfamily Hierodulinae of China (Mantodea: Mantidae),” Zootaxa, Volume 4951, No. 3, Magnolia Press, 2021, Pages 401-433. https://doi.org/10.11646/zootaxa.4951.3.1.
  4. ^ a b Kazuma Matsumoto, “Changes in relative abundance of co-occurring native and alien mantids, Hierodula patellifera (Serville) and Hierodula chinensis Werner (Mantodea: Mantidae), in Hachioji City, Tokyo Metropolis,” Japanese Journal of Environmental Entomology and Zoology, Volume 33, Issue 2, Japanese Society of Environmental Entomology and Zoology, 2022, Pages 43-52. https://doi.org/10.11257/jjeez.33.43.
  5. ^ Shim, Jaeil & Park, Haechul & Ju, Ho-Jong & Song, Jeong-Hun. (2021). “The giant Asian mantis Hierodula chinensis Werner (Mantodea: Mantidae) new to Korea”. Journal of Asia-Pacific Biodiversity. 14. 121-126. https://doi.org/10.1016/j.japb.2020.11.001.
  6. ^ Werner, F. (1929). “Über einige Mantiden aus China (Expedition Stötzner) und andere neue nder seltene Mantiden des Museums für Tierkunde in Dresden. (Orth.)”. Entomologische Zeitung Stettin, 90 (1), 74–78.
  7. ^ 間野隆裕・宇野総一「豊田市におけるハラビロカマキリとムネアカハラビロカマキリの分布動態と形態について」『矢作川研究』第18号、豊田市矢作川研究所、2014、41-48頁。
  8. ^ 市川顕彦「愛知県・岐阜県・福井県で採集されたハラビロカマキリの一種について」『月刊むし』2014年10月号(524号)、むし社、2014年、17-22頁(p20)。
  9. ^ a b 櫻井博・苅部治紀・加賀玲子「ムネアカハラビロカマキリの非意図的導入事例―中国から輸入された竹箒に付着した卵鞘―」『神奈川県立博物館研究報告(自然科学)』第47号、神奈川県立生命の星・地球博物館、2018年、67-71頁。
  10. ^ 中峰空「カマキリ目」、町田龍一郎 監修・日本直翅類学会 編『日本産直翅類標準図鑑』学研プラス、2016年、44-67, 198-205頁。p204 - Hierodula venosaとした月刊むしの記事について否定する記述とともに掲載している。
  11. ^ a b 谷聖太郎・丸田理温・児玉敦也・斉藤英俊・河合幸一郎「広島県東広島市における不明種ムネアカハラビロカマキリの記録, 他地域個体との形態比較, 及び近縁他種を用いた分子系統解析」『環動昆』第32巻 2号、日本環境動物昆虫学会、2021年、61-68頁。
  12. ^ 藤野勇馬・岩崎 拓・市川顕彦「福井県敦賀市でハラビロカマキリ属不明種の成虫と卵嚢を採集」『昆虫と自然』第43巻 5号、ニューサイエンス社、2010年、32-34頁。
  13. ^ 松本和馬・佐藤理絵・井上大成「東京都八王子市の森林総合研究所多摩森林科学園におけるムネアカハラビロカマキリの侵入定着とハラビロカマキリの衰退」『環動昆』第27巻 2号、日本環境動物昆虫学会、2016年、53-56頁。
  14. ^ 間野隆裕・宇野総一「矢作川流域におけるムネアカハラビロカマキリの分布拡大」(pdf)『矢作川研究』第19号、豊田市矢作川研究所、2015年、107-112頁、2020年11月8日閲覧 
  15. ^ 外来カマキリ、中国産竹ぼうきから侵入?在来種駆逐か『朝日新聞』夕刊2018年3月31日(2018年4月12日閲覧)。

ムネアカハラビロカマキリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/22 14:13 UTC 版)

ハラビロカマキリ」の記事における「ムネアカハラビロカマキリ」の解説

2017年現在外来種可能性がある近縁種ムネアカハラビロカマキリ(Hierodula sp.)の分布拡大指摘されており、新潟県から宮崎県までの1都1府11県で報告されている。同じフィールドで両種が競合し場合1年在来ハラビロカマキリ生息密度希薄となり、みられる大半がムネアカハラビロカマキリになった例が報告されている。 神奈川県立生命の星・地球博物館などの調査により、中華人民共和国から輸入され竹箒付着した卵が孵化して日本各地定着した可能性指摘されている。 ムネアカハラビロカマキリの和名は、通称としてあった呼称2014年ごろから採用されたもので、学名中国文献掲載されていたHierodula venosa推測されたが、これはのちに否定されており、本種を掲載した図鑑でもsp.のままとしている。以降venosa使用している資料もあるが不適切思われる

※この「ムネアカハラビロカマキリ」の解説は、「ハラビロカマキリ」の解説の一部です。
「ムネアカハラビロカマキリ」を含む「ハラビロカマキリ」の記事については、「ハラビロカマキリ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ムネアカハラビロカマキリ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ムネアカハラビロカマキリ」の関連用語

ムネアカハラビロカマキリのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ムネアカハラビロカマキリのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのムネアカハラビロカマキリ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのハラビロカマキリ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS