ファンタジー作品におけるゴブリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:38 UTC 版)
「ゴブリン」の記事における「ファンタジー作品におけるゴブリン」の解説
19世紀に書かれた、クリスティーナ・ロセッティの詩『goblin Market』(英語版の記事)に登場するゴブリンは、人を誘惑する際に市場を使う、民間伝承では見られない行動をとる。また、ジョージ・マクドナルドの書く『お姫さまとゴブリンの物語』(英語版の記事)などに登場するゴブリンは伝承で語られる妖精の身体的欠陥として足指を持たない。 そのマクドナルド作品に一応の影響を受けたJ・R・R・トールキンは、マクドナルドの「足が柔らかく踊りが苦手」とするゴブリン像に違和感を覚え、1915年に発表した子供向けの詩『Goblin feet 英語版の記事』で、「勇猛な足音で聴衆を魅了する」ゴブリン像を出した。彼は後にこの自作に関し出版、発表などへ否定的な意見を出してはいたが、『ホビットの冒険』に登場するゴブリンは『goblin feet』で描かれる物とは全く異なるものの「足を踏み鳴らし歌をうたう」描写は辛うじて伺える。 性格が邪悪で狡賢く、坑道に住み、記号のような表記を使い、穴を掘る技術が、ドワーフに次いで長け、美しい物を作れない代わり、人を痛める道具や「いちどきにたくさんの人を皆殺しにする」(瀬田貞二訳)道具の研鑽に余念がなく、火薬など殺人の道具の発明の影にいる、と設定されるゴブリンは、『ホビットの冒険』初版の段階で「ゴブリン、ホブゴブリンより大きな」「オーク鬼(瀬田貞二訳)がいると設定されている。また「オークを裂くもの」の意である魔剣オークリスト(山本史郎訳)を、山本史郎は「ゴブリン」を裂くもの、と訳している。その設定を襲う『指輪物語』で、オークは「ウルク」、ホブゴブリンが「オーク」ゴブリンは「蛆」あるいは「スナガ(暗黒語で「奴隷」)」という名に変えられ、ゴブリンはそれを現代英語に訳した名であるとされた。これは、作品から童話のイメージを拭い去るためであった。 しかしオークであれゴブリンであれ、トールキンが確立した「ホブゴブリンより小さいゴブリン」「種により特徴のある個体が出る」等のイメージは後世の娯楽作品におけるゴブリン像に強い影響を与えた。なお子煩悩な作者はクリスマスになると実子へ『サンタ・クロースからの手紙(英語版の記事)』を送っていたが、その中で、直立した犬のような形で緑色と雪を嫌うゴブリンが、北極の地下まで生息域を広げ、ドラジルと呼ばれる短足の馬(エドワード4世の頃に絶滅させられてからはコウモリ)に乗ってサンタ・クロース邸を襲う、と描写される、『ホビットの冒険』から『終わらざりし物語』に至るゴブリンやオークの一種であるWolfrider(狼乗り)と呼ばれるものと同じらしい設定がでる。 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターシリーズ』でもゴブリン(松岡佑子の日本語訳では「小鬼」)が登場する。ゴブリンの経営による銀行・グリンゴッツがあり、その従業員もゴブリンが多い。銀行の業務で金属である貨幣を扱いトロッコにも乗車し、地下や坑道に生息するイメージが残されている。 ゴブリンは『指輪物語』の発表後、テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』においてオークとは別の種族として設定され、オークやコボルトとともに邪悪で人間に対立する人型生物で、独自の言語などを持ち、粗野な部族社会を形成する種族として確立された。あわせてホブゴブリンも大型の近縁種として設定される。これ以降、ゴブリンは雑魚モンスターの代表格として、多くのロールプレイングゲームにおいて登場する存在になっていく。
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