ピカソとの出会い - モンマルトル「洗濯船」
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「マックス・ジャコブ」の記事における「ピカソとの出会い - モンマルトル「洗濯船」」の解説
1901年、画商アンブロワーズ・ヴォラールの画廊で行われたパブロ・ピカソの初めての個展を見て、このスペインの若い画家にすっかり魅せられた。マックス・ジャコブは後にピカソ宛の手紙に、ピカソは「私にとって芸術の世界そのものであった」と書いている。翌1902年からピカソはマックス・ジャコブが住んでいたパリ11区ヴォルテール大通り(フランス語版)のアパートに身を寄せた。マックス・ジャコブとピカソはイタリアの画家・小説家のアルデンゴ・ソッフィチ(フランス語版)を介して、文学・芸術雑誌『ラ・プリューム(フランス語版)』に寄稿し、やがて、ソッフィチらのイタリアの画家やスペインの画家、当時まだ貧しかった主に外国人の芸術家が住んでいたモンマルトルの木造家屋「洗濯船」に入居した。暖房などの設備はなく、飲料水も水飲み場が1か所あるだけのアトリエ10部屋ほどのこの家屋を「洗濯船」と名付けたのはマックス・ジャコブであった。初めてこの建物を見たときに、(通常は外に干さない)洗濯物が干されていたため、セーヌ川に浮かぶ洗濯専用の船を連想したからであった。後に彼は「洗濯船」を「絵画の中央実験室」と呼んだ(「中央実験室」は1922年発表の詩集の書名にもなっている)。これは「洗濯船」がピカソやモディリアーニらの前衛画家の活動拠点となり、何よりもピカソが1907年に『アビニヨンの娘たち』を描いた場所、すなわち、キュビスムが誕生した場所として知られることになったからである。 1904年に初めて著書を自費出版で発表した。児童文学の短編集『カブール王一世と見習いコックのゴーヴァンの物語』である。同年にはまた、子供向けの雑誌『今週の読書』に4回にわたって連載した短編を『太陽の巨人』として発表。これは、アシェット出版社の子会社「リブレリー・ジェネラル(総合書店)」から刊行された。 モンマルトルで美術評論家のアンドレ・サルモン(フランス語版)に出会い、ピカソを介してアポリネールと親しくなった。「洗濯船」は、1908年にピカソの提案で、マックス・ジャコブ、アポリネール、マリー・ローランサンらが当時まだ評価されていなかった素朴派の画家アンリ・ルソーを称える会を開催したことでも知られるが、翌1909年にルソーはアポリネールとローランサンをモデルに《詩人に霊感を与えるミューズ》(油彩)を描き、これに対してマックス・ジャコブもまた翌1910年に二人を描いた《ギヨーム・アポリネールと彼のミューズ》(淡彩)を発表した。また、フォーヴィスムやキュビスムの画家を支持し、「ピカソの画商」として知られることになるドイツ出身の画商・美術評論家ダニエル=ヘンリー・カーンワイラー(フランス語版)は、1907年、23歳のときに、パリ9区ヴィニヨン通り(フランス語版)28番地に画廊を開き、マックス・ジャコブの「マトレル三部作」を出版するなど彼を支援した。 1908年から1909年にかけて、「洗濯船」を拠点とする多くのモンマルトルのボヘミアン画家・作家と親交を深めた。ピカソ、アンドレ・サルモン、アポリネール、ローランサンのほか、画家のユトリロ、シュザンヌ・ヴァラドン、ピエール・マック・オルラン(フランス語版)、モディリアーニ、キース・ヴァン・ドンゲン、フアン・グリス、ルイ・マルクーシ、ジャック・ヴィヨン、オットー・フロイントリッヒ(フランス語版)、アンリ・エダン(フランス語版)、アンリ・ローランス(フランス語版)、モーリス・ド・ヴラマンク、アンドレ・ドラン、ジョルジュ・ブラック、ラウル・デュフィ、作家のジュール・ロマン、ジョルジュ・デュアメル、ポール・フォール(フランス語版)、フランシス・カルコ(フランス語版)、ロラン・ドルジュレス(フランス語版)、アンドレ・ヴァルノ(フランス語版)、さらに俳優・演出家のシャルル・デュラン、アリ・ボール(フランス語版)らと親しかったが、マックス・ジャコブは交友関係の広さでも知られ、亡くなるまで毎日のように手紙を書き、膨大な書簡集を残している。当時、彼らは主に「フレデ爺さん」ことフレデリック・ジェラールが経営するキャバレー「オ・ラパン・アジル」に集まった。前衛芸術・文学の拠点がモンマルトルからモンパルナスに移る前の全盛期であった。
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