モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 | Konzert für Klavier und Orchester Nr.23 A-Dur K.488 | 作曲年: 1786年 |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 第1楽章 Mov.1 Allegro | 10分30秒 | No Image |
2 | 第2楽章 Mov.2 Adagio | 6分30秒 | No Image |
3 | 第3楽章 Mov.3 Allegro assai | 8分00秒 | No Image |
作品解説
1786年春の予約演奏会のために作曲された作品(初演の正確な日付は不明)。当時まだ新しい楽器であったクラリネットは前作に引き続きこの作品でも取り入れられており、ときおりその丸みを帯びた音を控えめながらも主張している。木管を中心とした編成によって全体的に落ち着き引き締まった作品に仕上がっている。作曲家自身が「クラリネットがなければヴァイオリンやヴィオラに移してもよい」と言うように、楽器編成は絶対的なものではなかったのだが、いずれにしてもトランペットとティンパニを欠いたこの編成は室内楽的な親密さをもっている。
この作品の特筆すべき点は、構成と旋律の美しさということを除けば、カデンツァにあるだろう。モーツァルトのピアノ協奏曲では、第20番以降のほとんどの作品にカデンツァは残されていないのだが、この第23番(および第27番)だけは、第1楽章に作曲家自身によるカデンツァが書き入れられているのである。即興的な意味合いの強いカデンツァをも詳細に書き記すことによって、ひとつの完成された作品を意図したのだろうか。
第1楽章:アレグロ、イ長調、4/4拍子。協奏的ソナタ形式。明朗で澄んだ響きをもつ。モーツァルト自身によるカデンツァは短めに仕立てられ、技巧的であるけれども内面的な深みをも見せるものである。
第2楽章:アダージョ、嬰ヘ短調、6/8拍子。三部形式。メランコリックな楽章。ピアノによる旋律に管弦楽が彩りを添える。
第3楽章:アレグロ・アッサイ、イ長調、2/2拍子。ロンド形式。快活なフィナーレ楽章。全体的に華やかなパッセージの多い独奏ピアノは、エピソードの先導的役割や管弦楽を従えた旋律を受け持つなど、前面に押し出されて活躍する。
ピアノ協奏曲第23番 (モーツァルト)
(ピアノ協奏曲第23番 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/28 00:44 UTC 版)
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K. 488 は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1786年に作曲したピアノ協奏曲であり、古典派のピアノ協奏曲の最高峰に位置する作品の一つである。
概要

音楽・音声外部リンク | |
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モーツァルトは1784年に6曲、1785年に3曲、1786年にも3曲のピアノ協奏曲を作曲している。これらの協奏曲では、形式、楽器の使用法、旋律、和声の点においてハイドンの技法を継承し、高度の完成へ昇華させることに見事に成功している。本作は第24番(K. 491)とともに、1786年に3回開かれたモーツァルトの予約音楽会のために作曲された。
モーツァルトが1784年以来記している自作目録には、この作品の完成日は1786年3月2日と記されており、ウィーンで完成されたことになっている。第1楽章冒頭の自筆譜の数枚が1784年3月から1785年2月によく使用された五線紙であることや、自筆譜のオーボエのパートがクラリネットに書き換えられていることから、1783年から1785年頃の冬のシーズンに作曲に着手した可能性が高い。ウィーン以外の地でも曲の発表を試みていたようで、1786年9月30日付でこの作品の筆写譜をドナウエッシンゲンのフュルステンベルク公爵に提供している。
モーツァルトはこの作品において、ピアノパート全体を最初から完全な形で書き記している。ほかのほとんどの協奏曲においては、自筆による総譜にカデンツァを書き込んでいないが、この作品では第1楽章のカデンツァが完全に記されている。第2楽章にも第3楽章にもカデンツァは置かれておらず、どこにも入る機会が示されていない。絶え間なく華麗なパッセージが現れているために、いつもは非常に好んでいる即興演奏の技法を差し挟む余地を与えなかったことは、この作品が極度に力を集中して作曲されたことを示している。
自筆譜は現在パリ国立図書館に保存されており、侯爵に提供した筆写譜は総譜でベルリン国立図書館、パート譜はウィーン国立図書館に保存されている。
楽器編成
独奏ピアノ、フルート、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦五部。
モーツァルトの第20番(K. 466)から第26番『戴冠式』(K. 537)までのピアノ協奏曲の中では、唯一トランペットとティンパニを欠いている。
また、モーツァルトは「宮廷に2本のクラリネットがなければ、ヴァイオリンとヴィオラでもよい[1]」と注釈を入れている。
曲の構成
全3楽章、演奏時間は約25分。
- 第1楽章 アレグロ
- 第2楽章 アダージョ
- 第3楽章 アレグロ・アッサイ
関連作品
- 本作と『クラリネット五重奏曲 イ長調』(K. 581)、『クラリネット協奏曲 イ長調』(K. 622)はいずれも本作と同様にイ長調で書かれており、3曲とも第1楽章の冒頭が似ている。また、本作でもクラリネットが重視されている。
- オーボエをはずしてクラリネットを用いた曲には、『ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調』(K. 482)と本作のほかに、『交響曲第39番 変ホ長調』(K. 543)がある。
備考
- 薬師丸ひろ子の歌「花のささやき」は、本作の第2楽章の旋律に松本隆が詞を付けたものである。アルバム『花図鑑』、シングル「時代」、CD-BOX『風街図鑑』に収録されている。
- テレンス・マリックの映画『ニュー・ワールド』には、本作の第2楽章が印象的に使われている。
- ニキータ・ミハルコフの映画『シベリアの理髪師』でも他のモーツァルト作品と共に本作の第2楽章が登場する。
- アーマンド・イヌイッチの映画『スターリンの葬送狂騒曲』では本作が登場。冒頭でスターリンがラジオで聞き、その録音盤を欲した曲として登場する他、ラストでフルシチョフたちが鑑賞するコンサートの曲としても登場する。劇中では全楽章が使用されているが、特に第2楽章が印象的に使われている。なお、本作のピアノは劇中ではマリヤ・ユーディナが担当しているが、彼女は実際にこの曲の録音を残している。
脚注
- ^ バウアー&ドイッチュ編纂モーツァルトの書簡全集第三巻 p.589 1963年
外部リンク
- ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K. 488の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 - Mozart con grazia
「ピアノ協奏曲 第23番」の例文・使い方・用例・文例
- ピアノ協奏曲
- その曲はピアノ協奏曲に編集された。
- 6月21日の本選で,上原さんはチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」とラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏した。
- そのとき,彼女は偶然,ラヴェルのピアノ協奏曲を聞き,自分と千秋(玉(たま)木(き)宏(ひろし))が舞台でその曲を一緒に演奏している姿を想像する。
- 千秋は彼女がショパンのピアノ協奏曲を演奏するのを見るためにはるばるプラハまで行く。
- 内田さんはクリーブランド管弦楽団と共演したモーツァルトのピアノ協奏曲の演奏で最優秀器楽ソリスト演奏(オーケストラとの共演)賞を受賞した。
- 浅田選手は,ショートプログラムではショパンのノクターンのうちの1曲,フリーではラフマニノフのピアノ協奏曲第2番に合わせて演技すると述べた。
- フリーについて,浅田選手は「私はラフマニノフのピアノ協奏曲がとても好きです。」と述べた。
- 翌日のフリーでは浅田選手はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」に合わせて滑った。
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