プロコフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」からの10の小品
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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プロコフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」からの10の小品 | 10 Pieces from 'Romeo and Juliet' Op.75 | 作曲年: 1937年 |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 民衆の踊り "Folk Dance" | 4分30秒 | No Image |
2 | 街の目覚め "The Street Awakens" | 1分30秒 | No Image |
3 | 客人たちの到着 "Arrival of the Guests" | 3分00秒 | No Image |
4 | 少女ジュリエット "The Young Juliet" | 3分30秒 | No Image |
5 | 仮面 "Masks" | 2分30秒 | No Image |
6 | モンタギュー家とキャピュレット家 "Montagues and Capulets" | 3分30秒 | No Image |
7 | 僧ロレンツォ "Friar Laurence" | 3分30秒 | No Image |
8 | マーキュシオ "Mercutio" | 2分30秒 | No Image |
9 | 百合の花を持った娘たちの踊り "Dance of the Girls with the Lillies" | 2分00秒 | No Image |
10 | 別れの前のロメオとジュリエット "Romeo bids farewell to Juliet" | 8分30秒 | No Image |
作品解説
バレエ《ロメオとジュリエット》(1936年)は、シェイクスピアの悲劇『ロメオとジュリエット』に基づく、プロコフィエフの最も広く愛されている傑作の一つである。このバレエをもとに、プロコフィエフは管弦楽用の3つの組曲と、ピアノ独奏用の《10の小品》を作った。《10の小品》(1937年)は、作曲年にプロコフィエフが初演している。これらの小品は、バレエの原曲から編曲に適した箇所を抜き出して再構成したもので、管弦楽用の組曲と同様、バレエの筋に沿った順序で配列されてはいない。
第1曲〈フォークダンス〉Allegro giocoso
バレエの第2幕の冒頭(No.22)、街の広場での賑やかなカーニバルの場面の音楽。8分の6拍子の躍動的なリズムで、活気に満ちた舞曲(タランテラ)の主題が歌われる。
第2曲〈情景〉Allegretto
バレエの第1幕、街が目覚める場面の音楽(No.3)。太陽が昇り、街が活気を帯びてゆく情景が、4分の2拍子の軽快で明るい旋律の変奏で描かれてゆく。
第3曲〈メヌエット〉Assai moderato
バレエの第1幕、第3場(No.11)、キャピュレット家の舞踏会に招かれた客たちが、続々と広間に登場する場面の音楽。変ロ長調の華やかなメヌエットの主題が繰り返されてゆき、その合間に様々な顔ぶれを思わせるトリオが挟まれてゆく形で進行する。
第4曲〈少女ジュリエット〉Vivace
バレエの第1幕、第2場(No.10)で、ジュリエットが登場する場面の音楽。冒頭の茶目っ気たっぷり旋律が中心となり、それと交互に、変イ長調の美しい旋律(バレエの冒頭の前奏曲で聴かれるジュリエットの主題)や、静かな憧れに満ちた旋律(Piu tranquillo)が現れ、少女の多面的な魅力が伝わってくる。
第5曲〈仮面〉Andante marciale
バレエの第1幕、第3場(No.12)、マーキュシオが友人のロメオとベンヴォーリオを誘い、仮面をつけて宿敵キャピュレット家の舞踏会に乗り込む場面の音楽。陽気でシニカルなマーキュシオ、大胆不敵な若者たちの様子が、行進曲風の旋律のウィットに富んだ変奏で生き生きと描かれる。
第6曲〈モンタギュー家とキャピュレット家〉Allegro pesante
バレエの第1幕、第4場、舞踏会の音楽(No.13)。この場面で支配的な、重厚で威圧的な旋律は、騎士と貴婦人たちの舞踏の音楽。中間部(Moderato tranquillo)では、ジュリエットが、両親が結婚を勧める青年パリスと踊る、極めて美しく感傷的な旋律が聴かれる。
第7曲〈ローレンス修道士〉Andante espressivo
バレエの第2幕、第2場(No.28)、ロメオがローレンス修道士を尋ね、ジュリエットへの愛を打ち明ける場面の音楽。ローレンスは二人の挙式を約束し、モンタギュー家とキャピュレット家の反目に終止符が打たれることを密かに願う。バレエではチェロとオーボエが奏でる温かな旋律は、ローレンスの慈愛に満ちた人柄を映し出す。
第8曲〈マーキュシオ〉Allegro giocoso
バレエの第1幕、第4場(No.15)。マーキュシオが舞踏会に飛び入り、愉快な躍りで重々しい雰囲気を吹き飛ばす場面での、陽気でウィットに富んだ音楽。
第9曲〈百合を手にした少女たちの踊り〉Andante con eleganza
バレエの第3幕、第3場(No.49)、ジュリエットとパリスの婚礼が予定されている日の朝、寝室でジュリエットが仮死しているのを知らずに、アンティーユの娘たちが百合を手にして踊る場面の、繊細でメランコリックな音楽。
第10曲〈別れの前のロメオとジュリエット〉Lento
バレエの第3幕の第1場、ジュリエットの寝室で、夜の静寂のなかでロメオとジュリエットが愛を確かめ合い、ロメオが旅立つ場面(No.38とNo.39)の音楽で始まる。アダージョ(50小節目から)では、パレスとの結婚を両親に迫られ、絶望に陥ったジュリエットが、ローレンスの助けを請いに赴く場面(No.43)の、ドラマティックな旋律が歌われる。全曲を締めくくる静かなアンダンテ(71小節目から)は、ジュリエットがローレンスの助言に従い、ロメオへの愛を貫こうと、周囲を欺くために仮死状態に陥る薬を飲む場面の音楽。ジュリエットの迷いや不安、そして死の香りが幻想的に描かれる。
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