デジタル圧縮の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 00:11 UTC 版)
デジタル符号化されたデータの圧縮の歴史は意外と古く、1830年代に発明されたモールス信号に用いられるモールス符号も圧縮符号の一種である。これは、文字通信の中で比較的出現頻度の高いアルファベットに短い符号を割り当て、出現頻度の低いものには長い符号を割り当てることで、通信に要する手間を省いている。(しかし日本語のモールス符号はそうなっていない。モールス信号の項目を参照) 1967年、音響心理学的マスキング効果が発表されている。 その後、コンピュータの発達とともに、デジタル通信やファイルの保存でデータ圧縮の重要性が高まったことで研究が進み、1970年代後半頃からはデータ圧縮の要素技術に関する重要な特許も出願されるようになった。特許については、近年でも、オーディオ圧縮で用いられるMP3のライセンスの問題や、ウェブサイトの画像で広く用いられている GIF画像のライセンス問題など多くの紛争を発生させており、それだけデジタル時代の重要な基幹技術であることを示している。 1980年代に入ると音声通信分野のデジタル化の動きが始まり、音声圧縮の分野ではADPCMなど初期の比較的単純な圧縮方式が実用化された。また、パーソナルコンピュータやパソコン通信(ただし、日本では通信自由化以降)が普及するようになり、オンラインソフトウェアの分野からもZIPやLHAといった現在も幅広く使用されているファイル圧縮方式も誕生した。1988年、ブエノスアイレス大学の Oscar Bonello が IBM PC を使ったラジオ放送局用自動音声圧縮システムを開発した。 1990年代前半に入ると、音声圧縮や画像圧縮の分野で2005年現在でも広く知られている多くのデータ圧縮方式が発表された。音声(オーディオ)の分野では、1992年に登場したミニディスク (MD) に搭載されているATRACなどがある。また、画像の分野ではJPEG圧縮方式が国際標準規格として勧告され、広く普及した。これらの背景には、集積回路 (IC) の生産技術や設計技術の発達で大規模で高度な処理が行えるICが比較的安価な製品でも搭載可能になった点や、パーソナルコンピュータの急速な性能向上でソフトウェア的な画像処理が容易に行えるようになった点も大きい。 また、動画圧縮の分野でも、この頃、TV会議システム用の動画圧縮方式 (H.261) やビデオCDの圧縮方式 (MPEG-1) も標準化されている。また、パーソナルコンピュータ向けに企業独自の圧縮方式を採用したコーデックも登場するようになった。しかし、動画圧縮の分野では音声圧縮や画像圧縮に比べてさらに高度な技術が要求されるため、まだしばらくの間、業務用や限定的な用途に限られていた。これとは別に、デジタル時代の重要な基幹技術である動画圧縮技術には特許の権益に絡む思惑もあり、この方面でも標準化までに長い時間を要した。 1990年代後半になると、動画圧縮の分野でも国際的な標準規格であるMPEG-2が標準化され、業務用分野から幅広く利用されるようになり、1996年に登場したDVDプレーヤーや、2000年に開始されたBSデジタル放送など、家電製品にも採用されるようになった。
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