ソリブジン薬害事件
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1979年(昭和54年)、ヤマサ醤油がソリブジンを新規に合成し、上述の如きヘルペスウイルス、特にHSV-1とVZVに対する選択性の高い強力な抗ウイルス作用を確認した。1985年(昭和60年)から日本商事と経口帯状疱疹薬として共同開発を進めた。1988年、ヤマサ醤油は、米国のスクイブ社(後に合併によりブリストールマイヤーズ スクイブ)に、海外の開発及び販売権をライセンスした(商品名・Bravavir)。 1993年(平成5年)9月3日、抗ウイルス剤(商品名・ユースビル錠)として、日本商事から発売される。しかし、発売後1ヶ月足らずでフルオロウラシル系抗癌剤との併用で重篤な副作用が発生する。9月20日にエーザイ側から市販後最初の1例目の副作用情報が日本商事に寄せられたと報告されている。 1994年9月に、厚生省(現・厚生労働省)から公表された「ソリブジンによる副作用に関する調査結果」によれば、1993年10月8日に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、その諮問を受け厚生省は「緊急安全性情報(ドクターレター)」の医療機関への配布を指示した。10月12日、厚生省はソリブジンと5-FU系薬剤との相互作用による死亡3例を含む7例の重篤な副作用発現を記者発表した。同日、日本商事も大阪証券記者クラブにて「重篤な副作用の発現」と 「製品の出荷停止の措置」を発表した。12日に「自主的安全性情報」、13日に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、11月19日より自主回収を実施した。 日本商事の調査の結果、23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。 1994年3月5日、同社株のインサイダー取引による疑惑が持ち上がる。ソリブジンの相互作用による副作用で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、日本商事の役職員・社員と、ユースビルに関わったエーザイ社員、さらには取引先の医師やその家族がそれぞれ自己保有している日本商事やエーザイの株式を売却し、株価下落の損失を回避したことが証券取引法違反(インサイダー取引禁止)に問われた。これにより、日本商事の服部孝一社長が辞任する。 日本商事はユースビル錠の復活を期して、アメリカにおけるソリブジン開発の進捗を注視していた。しかし、1996年7月、ソリブジンのNDAが審査の途中で取り下げられたため、アメリカでの開発は中止となった。これを受け、日本商事はユースビル錠の販売を断念した。 なお、「ユースビル」は薬害と言われながらも日本商事の自主回収であり、当時の厚生省から承認取り消しはされなかった。つまり、厚生省は併用禁忌の徹底や安全性情報の提供など方策を練れば再発売が可能な道筋をつけていたのである。しかし、日本商事側が自主的に承認を取り下げたことにより、ソリブジンは市場から姿を消し、2008年にファムシクロビルの承認が降りるまで長きにわたって日本での帯状疱疹治療薬はアシクロビル系統のみとなっていた。 伴って添付文書の相互作用の項の不備が指摘され、1995年頃には厚生省に 「医薬品適正使用推進方策検討委員会」が設置され、そのうちの1つの 「添付文書の改善に関する研究班」 が添付文書の見直しを行った。1996年には、様々な記載要項などが定められた。
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ソリブジン薬害事件
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1979年(昭和54年)、ヤマサ醤油が「ソリブジン」を合成し、1985年(昭和60年)から共同開発を進めた。 1993年(平成5年)9月3日、抗ウイルス剤商品名「ユースビル」を発売。しかし、発売後1ヶ月足らずでフルオロウラシル系抗癌剤との併用で重篤な副作用が発生する。10月8日に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、厚生省(現・厚生労働省)から医療機関に対する「緊急安全性情報(ドクターレター)」の配布指示がなされた。10月2日に「相互作用で7人が重い副作用、うち3人が死亡」と報道機関へ発表。10月3日、大阪証券記者クラブにて重篤な副作用の発現と製品の一時出荷停止を発表。代理店に対して一時出荷停止を指示。12日に「自主的安全性情報」、13日に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、11月1日より自主回収を実施。結果23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。 1994年(平成6年)3月5日、同社株のインサイダー取引疑惑が持ち上がる。ソリブジンの相互作用による副作用で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、社員や関係者が当社株式を売却し、株価下落の損失を回避したことが証券取引法違反(インサイダー取引禁止)に問われた。この為、社長の服部孝一が辞任する。 1999年(平成11年)2月16日、最高裁は、ソリブジンに係わる副作用症例の発生事実が、証券取引法一六六条二項一号「決定に関する事実」、二号「業務に起因する災害事実」、三号「決算情報」などこれら具体的個別的規定に該当する重要事実が認められたとしても、包括的条項(バスケット条項)である四号「前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」に該当する重要事実だと認めることができる以上、同項四号の適用を認めることができると判決した。
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